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【🇬🇧日記#51】ロンドン:石の裏側と角煮礼賛の旅

冬休みの日記。ロンドン3泊4日の旅。

2024年1月14日(日)

パリからロンドンまでユーロスター(2等)で移動する。大学生は2等列車で十分快適だ。

パリのParis gare du Nord駅

イギリスはシェンゲン協定加盟国ではない。フランスからの移動に際しては、ビザの確認や手荷物検査をせねばならない。飛行機の国際便と全く同じだ。

私は10分ほどで入国検査を終えられた。

私はフランス(正確に言えばボルドー)が気に入っていた。出来ることならもう少し観光したい。

私はエレクトリック・ライト・オーケストラの「ロンドン行き最終列車」を思い出していた。

ロンドン行き最終列車 今、出発するところだ。
ロンドン行き最終列車 今、街を出るところだ。
でも、今夜が永遠に続いてくれたらいいなって本当に思うんだ。
ぼくは本当に君と一緒に居たいんだ。

「ロンドン行き最終列車」拙訳

無情にもホームは遠ざかって行く。1時間18分で到着する予定だ。あまりの短さに驚く。

ドーバー海峡を渡ってイギリスに行く。私は海峡を見ることが密かな楽しみだった。

しかし海が全く見えぬうちに海峡トンネルに入ってしまい、出た時には完全な陸地だった。残念無念。


ロンドンのSt Pancras 駅。ホテルは大英博物館近くにとった。

最初の目的地は大英博物館。博物館の近くでランチを食べよう。

私の密かな楽しみは、まことしやかに語られる「イギリスは飯がまずい」という話の真偽を確かめることだった。

記念すべき第一食目を頂こう。

マスタード風味のソースとビーフフィレ~ふかし芋を添えて~。もしかしたらこれは、イギリスの伝統料理ではないのかもしれない。

19ポンド(4,000円近い)近い価格が衝撃的だ。円安と物価高のダブルパンチが容赦なく私の財布を苛む。

ふかし芋は柔らかくて甘くて美味しかった。美味しいけれど、一般的な「ふかし芋」の域を出ることは決してない。

肉はそこまでの量もなく、またそこまで良い肉でもない。
食後も、少し空腹感が残る。


お腹がすいたので、シャワルマを食べた。店主がアルジェリア人だったらしく、アラビア語で話しをたら大層喜んでくれた。

人生で初めて「キルギスタン出身ですか?」と聞かれた。

アルジェリア人の店でシャワルマ購入。正直あまり美味しく無かったが、お腹は満ち足りた。

博物館の探索に出よう。

気怠そうな表情がたまらない。立浪監督から「戦う顔をしていない」と言われてしまいそうだ。聖ジョージの像。


大英博物館で一番楽しみにしていたのは、ロゼッタ・ストーンである。

これは博物館の目玉であり、多くの人が写真を撮ったり眺めたりしていた。

私も正面からひとしきり観察した後、殆ど人がいない裏側に回ってみた。
ごつごつとした無骨な見た目をしている。

私はそれを見て、ひどく驚いたのを覚えている。

ロゼッタストーンの「裏側」

裏側を見ても、意味を感じることは出来ない。
私はただ、裏側の存在自体を想像したことがなかったのだ。
表を見た時よりも深い衝撃だ。

私はしばらく裏を眺めていた。

想像すらしないような「石の裏側」を覗くことができることに、旅の醍醐味はあるのかもしれない。


閉館時間まで博物館を見て回った。
外に出ると、すっかり暗くなっていた。

お腹を空かせて街を歩いていると、パブから楽しそうな音が聞こえてくる。
気が付いた時には、私はパブに吸い込まれていた。

なかなか賑わっている。味にも期待できそうだ。

風情ある店構えではないか。

ビールとフィッシュアンドチップスを頼む。

年齢確認をされた。イギリスでは18歳から飲酒ができるはずだし、当然私は日本でも飲酒できる年齢だ。私は堂々と真実を語ったが、信じてくれない。

「まぁ、私にもそういう時期があったわ。これ飲んだら帰りなさいよ。」

彼女はくすりと笑ってからビールを注いだ。

「トリビュート」というビール。苦味がほとんどない、まろやかな口当たり。とてもおいしい!

冬の風に冷え切った頬を程よくビールが温めてくれた頃、大皿の揚げ物が運ばれてきた。

これがフィッシュアンドチップスである。

「フィッシュアンドチップス、めっちゃ旨いで。」

2年前にN先輩から頂戴した(恐らく唯一の)価値ある教えを突如想い起こす。私はたまらず噛り付いた。

約4,000円

まずい。

味のしないパサパサの白身、しなびたフレンチ・フライ、味蕾が「油分」のみを検知するソース、きょうび修行僧でも食わなさそうなグリンピース。

「チクショウ。」

思わず口から言葉が零れ落ちる。

「小梅太夫より声でとるやん。」

友人の吉田の指摘で、私は自分の声量を知った。

小野塚知二教授の「産業革命がイギリス料理をまずくした」(短いので是非リンクから読んでみて頂きたい)を突如思い出した。

「料理人の責任放棄ともいうべき現象」を目の当たりにしてしまった。


それにしても物価が高い。

コンビニのような小売店の水が、大英博物館のお土産コーナーの水より高いという現象も目の当たりにした。

大学生が旅行するには過酷な国である。


1月15日(月)

ホテルのモーニング・ビュッフェを食べに行く。牛乳とパンはそこそこ美味い。

しかしそれ以外は駄目だ。私は直接的な侮蔑語を書かないように心がけている。
だからこそ、文面からイメージして頂きたい。
味のないソーセージ、香りの無いりんご、酸味も甘みもないオレンジの並ぶ朝食を。


今日は地下鉄で移動する。

まずはバッキンガム宮殿に行く。
他国からの賓客がいるらしく、閲兵はできなかった。

しかし幸運なことに、騎兵の行進は見ることができた。


ハロッズという百貨店を少し見る。

ハロッズで見た木馬。軽自動車より高い。

ランチを食べに、フリージュ・スウェーレ(Freej Swaeleh)に行く。

このレストランはクウェート料理の店で、クウェートであり、いくつかの店舗を構えている。ムバラキーヤ店が私の行きつけだ。

ロンドンにも店舗があると友人のユースフさんに教えてもらった以上、行かざるを得ない。

定番のマチュブース(majbous)とアボカドジュースを頼む。

これまた定番のエビスープはメニューになく、代わりに見慣れぬ「コーンスープ」が提供されている。

マチュブース

クウェートのフリージュに比べ、少し薄味な気がする。

礼拝前に足を洗う人を想定しているのだろう。

驚いたのは、クウェートの店に比べてサービスが少ないことだ。

ライスやフブズ・イラーニー(ナン)の無料お替りサービスはもちろん、ガフワ(コーヒー)のパフォーマンもない。ルゲイマート(丸いドーナツのようなお菓子)のサービスもない。

読者諸賢には、是非ともクウェートのフリージュに来ていただきたい。

その後はウィンザー城を見に行き、イートン校もついでに見た。

紙のストロージュース。紙がしなしなで、途中で飲めなくなってしまい捨てた。ストロー抜きで飲もうとしたら、顔にかかった。紙のストローこそ、真の環境破壊ではないか?

イートン校近くのレストランでご飯を食べる。

お酒込みで28ユーロ。悪くない値段だ(悪くない、とは金銭感覚の麻痺である)。水も無料。ロンドン中心部よりだいぶ安い。

それなりに美味しかった。
地下鉄で帰ってきた。

街を歩いていると、中華料理店を見つけた。

私の住むクウェートにも中華料理はあるが、豚と酒は絶対にない。私はレストランにに吸い込まれていった。

正宗川菜

輝ける角煮が現れた。

本当に美味しいものは美しいのだ。角煮、万歳。


1月16日(火)

今日はバスで観光する。

まずは騎兵博物館に行く。

ウエストミンスター寺院では、貴族院議員の集団とすれ違った。


お昼過ぎ、ナショナルギャラリーに行った。

基本入館料は無料。あまりに太っぱらだ。
ほんの少しドネーションをしよう。

世界史で勉強した名画が目白押しだ。

ファン・アイク『アルノルフィーニ夫妻の肖像』
モネ『睡蓮の池』
ホルバイン『エラスムスの肖像』

その後はロンドンをほっつき歩いた。

デヴィッド・ボウイ『ジギー・スターダスト』のジャケット撮影地に行った。

建物は取り壊されてしまっているが、K.WESTの看板(レプリカ)などは残されている。

街を歩いていると、"GOOD MAN"というレストランを見つけた。
昼から盛況である。

席は6.7割がた満席

多くの人が、平日2時から酒飲んでいるやつ。

ワイン飲みながらパソコンに何かを打ち込む紳士が印象的だった。私もそういう働き方をしたい。
Lemon Mint Burrata、ミント、レモン、チーズの爽やかな味わい
Beetroot crème。ビーツを使ったすこし甘い、まろやかなクリーム。
シードル

全ての料理に味ついていて、彩りもある。
お値は張るが、満足感のある料理だ。


バスに乗り、アビー・ロード・スタジオに行く。

ピンク・フロイド『狂気』のレコードが行われた場所であり、何よりもビートルズ『アビイ・ロード』のジャケットで有名な場所である。

観光地であるが、同時に交通量も多い。交通事故防止のライトや交通標識などが沢山設置されている。
"LOOK RIGHT→"

晩御飯は昨日とは違うレストランで回鍋肉を食べた。

ロンドン旅行は今日で終わりだ。


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