傷ついた翼(4)
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傷ついた翼(4)

ながさごだいすけ

母は最近、近所の奥さんに誘われて、隣の駅前にあるフィットネスに通い始めた、といっても、まず見学に行き、その後2回通っただけで、3回目はパスしていたから、はたして次があるのかどうかは、わたしにはわからない。

行くのが楽しみなような言い方はしているが、それは3回目の時もそうだった。前日にかかってきた近所の奥さんからの確認の電話にも、暑くて体力がもたないから、とかなんとか言い訳していたが、それでもハッキリことわることはしなかった。

ところが、当日の朝まだ早い時間に、ちょっと姿が見えなくなったと思ったら、汗だくになって帰ってきて、「お寺に行ってきた」と言うのだった。

(今日お寺に行かなくてもよかったのじゃないか)とわたしは思ったが、黙っていた。明らかに、別の用を作って、フィットネスに行かれない口実にしたいのだと思ったからである。

「じゃあ、これからフィットネス?」とわたしは、わざと聞いてみたが、聞く前から答えはわかっていた。

「冗談じゃないわ、これでまた出掛けたら倒れちゃうわよ」

予想通りの答えだった。

あるいは、母のことだから、お寺の法事のことが気になり始めて、フィットネスどころではなくなったのかもしれない、とも考えた。わたしも、なにかひとつのことが気になり始めると、他のことがすべておろそかになってしまうたちなのである。小心者ということかもしれない。そういう変なところばかりよく似ている気がする。

というのも、実際のところ、母はフィットネスそのものは、けっこう気に入っているように見えたからである。2回目のときは、フィットネスクラブのロゴ入りのトレーナーを着て、仕事中のわたしの部屋にわざわざ来て、「これから行くから」というので、「お願いだから、そんな恥ずかしい格好でうろつくのは止めてくれ」と思わず言ってしまったくらいだったのである(それでしぶしぶ着替えて出掛けたが、結局、帰ってきたときはトレーナーのままだった。たぶん、一緒の奥さんがそうだったのだろう)。

そこまでやる気になっていたくらいだったから、逆に3回目をドタキャンしてしまったことのほうが不思議だったのだが、法事のことだったのか、それとも別のなにかがあったのか。もっとも、母の気質から言えば、ご近所付き合いのフィットネスなど絶対に続くはずはないと、わたしは最初から思っているのだが。

とりあえず次回の予定が入っている来週の水曜日までは、どうなるかわからない。

いずれまた結果をご報告するかもしれません。

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ながさごだいすけ
母が住む実家で週末ごとに過ごす日々。 母との大切な時間を綴る。