ジョブ型雇用で変化することは?④ 転職マーケット
※④と関連する内容である③はこちら
ジョブ型雇用とは「職務記述書(Job Discription。以後JD)に記載のある仕事を行うように従業員に指示・実行させること」と定義した。
となったときに、転職市場では何がどう変わるのか。
筆者は転職エージェントなので、最も身近に存在するテーマである。
考えるにあたり、現在の転職マーケットを見てみよう。
そもそも、中途採用においては、求人票をベースとして仕事の募集をされていることが多い。
第一回「ジョブ型雇用で変化することは?①」で「求人票」の英訳は何かを記載したが、覚えておられるだろうか。
答えは"Job Discription"、つまり「職務記述書」の英訳と同じである。
お気づきの通り、転職マーケットはとっくの昔からジョブ型雇用の考え方を導入しているのである。これは、日系でも外資系でも同様である。
つまり、ジョブ型雇用が多くの日系企業に導入されたとしても、転職マーケットの概観は何も変わらない。
…という結論で本稿を終えるには読者の皆様の耳目を無駄に集めているという理解はある。
そこで、筆者なりに少し考察を進めてみよう。
ジョブ型雇用が浸透していったら、「外資→日系」への転職が心理的にしやすくなる。
どういうことか。
日系企業から外資系企業にキャリアを転換された方の多くは、日系企業に戻りたい、とは言わない。
勿論、一部の例外は当然ある。ただそれは外資系にフィットしなかった場合。ただ、外資系を選んだ方は外資の考え方でフィットをすると、外資系企業の中でどうキャリアを築くかを考え続ける。
戻りたくない理由はいくつかあろうが、最たるものは「外資系のほうがはっきりしている」ことによる。
つまり、JDをベースとした仕事は自らの業務とそうじゃない業務が切り分けられているので、
自らのJDを満たす=期待成果を出せれば、
働き方の裁量権が大きかったり、昇級昇格のペースも早かったりする。
そして、結果を残すも残さないも自らの責任である。
言い方を変えれば、その外資系の働き方は、出来る人にとっては「楽」なので
メンバーシップ型雇用のような曖昧さを残さずに仕事が出来る。
その働き方に病み付きになるのである。
日系企業がメンバーシップ型の弊害と、ジョブ型のメリットを両方理解し
イケてる外資系の運用と同様に出来れば、
「弊社は日系だが、外資系と同じような形で働ける」ことを謳い文句にし、
外資系から優秀な人材を採用出来る。
日系企業が本気でジョブ型雇用を進めたとして、最もメリットがあるとしたら、
評価制度の明確化、それによる自走する社員の育成ということ以上に
外部からの優秀な人材の獲得がよりしやすくなる
ということにあるのではないかと考える。