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「やりたいことがわからない」だけじゃない、就活に動き出せない理由

キャリアコンサルタントの松岡澄江です。

コロナ禍の就活、なかなか動き出せず悩んでいる若者も多いようです。志望する業界が現在コロナの影響を受け停滞していて採用がない、あるいは採用があったとしても少ない、業界の未来が見通せないといった、今年ならではの状況もあると思いますし、働き方も急に変化し多様化しているので自分の未来を描く基準も変わってしまい、何をよりどころに活動したらいいのか悩んでいる学生もいるのでは、と考えています。

ここ数ヶ月、「就活に動き出せない」就活生のご相談を複数お受けしました。相談の始まりは「やりたいことがわからない」「何をめざしていいかわからない」との言葉でスタートします。でもお話を聴いていくと、表にはなかなか現れない理由が見えてきます。

「やりたいことがわからない」だけじゃない。就活に動き出せない理由はいろいろあることについて考えます。

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自分には成功体験がない

過去の進路選択で志望校への入学が叶わなかった、プロをめざしてスポーツに取り組んできたけどケガであきらめなければならなかった等、これまでの人生に挫折した経験があると、就職という大きな人生の転機に対して怖くなって動けなくなる場合があります。自分なりにがんばったけどうまくいかなかったことがトラウマになっていて、就活に動き出せないんです。

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自分が選択したことで成功したことがない
だから、きっとまたうまくいかない・・・

就職だって、きっと希望のところには受からない
また中途半端に妥協して我慢して生きていくのか
どうせ悪い結果が待っているはず


過去のネガティブな体験から、「きっとうまくいかない」という信念(イラショナル・ビリーフ:非合理的信念)ができあがってしまっています。これ以上傷つきたくない、がっかりしたくないという自己防衛が出てきてしまい、就活のことを考えようとするものの、どうしていいかわからなくなってしまう。

過去の体験をまだ消化できていない、気持ちが癒されていないことが要因として考えられます。そんな状態の時に、就活の手法や企業選びを話題にして励ましたとしても、また思考と行動が停止してしまいます。動き出せない原因が過去の挫折経験にある場合は、就活はいったん置いておいて、まずは過去の出来事を言葉にして吐き出してもらいます。

過去は戻りませんが、過去の出来事を自分がどう受け止めてどんな行動をしてきたのか振り返りながら、自分にもできたことがあった、がんばってきたこともあったと認めてあげる。その経験にどんな意味があったのかを言語化するお手伝いをします。

「自分には成功体験がないから、就活もうまくいかない」という思い込みの塊が少しでも溶けてくれば、「必ずしもそうなるとは限らない」という言葉も受け入れやすくなっていきます。時間はかかりますが、過去の経験にとらわれて前に進めない人には、キャリアコンサルタントがカウンセリングを通して伴走することで、さび付いた歯車のさびを取り、油をさして動けるようにメンテナンスしてあげられたらと思います。

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自分にはアピールするものがない

「自分には強みやアピールすることがない。だから、どの企業にも受からない」そういう思い込みから動けなくなっている就活生もとても多いです。その企業の業務に紐づいた経験や行動をアピールしなければいけないと思っているようです。

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例えば、イベント制作の仕事に興味がある学生のケースです。経験がないことをとても思い悩んでいました。

イベントなんてやったことがない。
コロナ禍でイベントをつくることもできなかった。
WEB上の小さなイベントはやってみたけど、こんなんじゃ大した経験とはいえない。
だから受かりっこない・・・・


私は以前WEB制作会社に勤めていて、新卒採用の面接に入ってもいましたが、人事から経験者を見出すように指示されたことはありませんでした。それに、学生の経験がそのまま仕事に役立つわけでもありません。むしろ、多少経験があることがあだになってしまい、入社後に本来覚えなければならない仕事の基礎を軽く見てしまう新人もいましたので、経験よりは人柄や意欲で見ている企業が多いと思います(技術者等の採用では、技術の習得状況や研究の内容が重要視されることもあります)。仕事経験が必要なのであれば、企業側は即戦力の中途採用を行います。新卒採用はポテンシャル採用が中心。めざす業界や企業の仕事経験がなくても、興味関心や仕事への意欲をアピールすることが大事です。

またある学生は、自分は学生生活でがんばったこともないし、伝えられることは何もないと悩んでいます。4年間も学生生活を送ってきたのですから、何もないことはないと思います。実際に話を紐解いていくと、いろんなことができていたり、力を入れたことがあるものです。

何かすごいことをアピールしないといけない

そう思っているから、「ない」になるようです。学生の生活パターンはみんな似たり寄ったりです。たまに少し違った経験を持っている人に出会いますが、それはかなり少数です。すばらしく評価されたことや称賛されるような行動でなくてもいいんです。

ゼミで力を入れたこと、部活やサークルで意識したこと、アルバイトで感じたちょっとしたやりがい、学びの中で夢中になったこと・・・
一つひとつは小さくても、大切な経験です。自信を持って伝えて欲しいと思います。

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本当は、やりたいことがわからないから動けないのではなく、「どうせまたうまくいかない」、「人に認められるようなことがない」といった思い込みが心の中を支配していると、勇気が出ないし前を向けないのだと思います。

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就活に向かう前に、自分の気持ちを整理するのも自己分析の目的の一つです。一人では難しいことなので、キャリアセンター等を利用してキャリアコンサルタントに話すこと、伴走してもらって欲しいと思います。


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