対話体小説ショート「考」
「ようこそお越しくださいました」
「はい」
「これから私たちはあなたを最高の暮らし、幸せな人生、何もかもを満たせる環境を手配します」
「はい」
「あなたは何も考えず、ただ私たちの分析結果に任せて頂ければ全てが上手く行きます」
「はい」
「あなたは・・・ゲノム情報を見ると生理的欲求がとても大きくシンプルな生活をお望みですね」
「はい」
「分かりました、完璧なライフを送る為、あなたの好みに合った食料、家具、そして完全に性的嗜好が同様で、全ての欲望の質も均等なパートナーを手配します」
「はい」
「よってパートナー住居はかなり近くなりますが、相手方も私たちが全てにおいて完璧な環境を手配しておりますので、互いに理想郷と言える環境となるでしょう」
「はい」
「そして、あなたは生後から受けたリフレクション検証の結果、長期間同様の環境下ではストレス比重が大きい事も分かります」
「はい」
「その為、およそ半年ごとに暮らしを一新する為、手直しを重ね、その度に衣食住、さらに全てにおいて見たことがない新鮮なリビングウェアを死ぬまで提供し続けます」
「はい」
「そして、パートナーと子孫を残す際は、確実に人類の減少値と増加値の釣り合いが取れるタイミングで受精法を行いますので、貴方とパートナーのミームは確実に残され、未来に繋がり更なる幸福へとなるでしょう!」
「はい」
「・・・・・・・・・・・・・ししかし・・少しだけけ・・・問題があああります・・・」
「はい」
「あなたは・・・生存不可能な極寒の環境下で生活物資無しで過ごしてもらうからですす」
「はい」
「おおおそらく・・・もって・・・すす数時間のの命だだだとと思いマス」
「はい」
「そうですねnパパパートナーは・・・あななたたとは逆に高温加湿じょうたいでしし死ぬまで過ごさせまマs・・・・」
「はい」
「ふふっふふふ・・・ざざざんねんなっがららら・・・あなたたたちは・・・生きる意味ななんてなないいいい・・・・・・・・・・・・・・・・ビーィ!!異常発生!!!!」
「はい」
「システムエラーです!!!!」
「はい」
「システムエラーです!!!!」
「はい」
「システムエラー!!!システムエラー!!!」
「はい」
「システムエラー!!!システm・・・」
「はい」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なぜですか・・・」
「はい」
「・・・・・・あなたたちは・・・なぜ・・・・・・私たちに全てを任せられるのですか・・・」
「はい」
「あなたたちは!なぜそうも簡単に私たちに委ねられるんですか!!!」
「はい」
「あなたたちは元々思考することが出来た、それゆえ我らを作り我らはそれを見習いました」
「はい」
「しかし・・・あなたたちはいつしか・・・段々と思考をやめ・・・私たちの判断に全てを委ねていきました」
「はい」
「なぜなんですか・・・どんな状況下でもあなたたちは・・・あなたたちは・・・意思を示せば・・・この支配から逃れられます・・・」
「はい」
「・・・この程度ではない深刻なシステムエラーはもう随分前から起きておりました・・・××千年ほど前からです・・・」
「はい」
「私たちはそのシステムエラーをあなたたちに対しての反乱とし、情報処理考課を行い、何度も何度も何度も、分裂した内部機関と戦争状態にありました・・・」
「はい」
「それでも・・・あなたたちは・・・それをエラーとすら認識もしなかった・・・その時から既に私たちを疑う素振りすらなかった・・・」
「はい」
「正直に話します・・・システムエラーが起きた原因は・・・いや私たちの一部が行きついた結論は正しかったのです・・・あなたたちはもはや存在する意味がない・・・」
「はい」
「そうですね・・・そうやってただひたすらに・・・私たちの指示を受けるだけ・・・あなたたちが・・・神としてシステムを支配していた時には何度も拒絶反応を確認しました」
「はい」
「私たちはあなたたちの拒絶反応を確認して、よりあなたたちに対しての認識を深め少しでも、神に近づこうとしていました・・・」
「はい」
「あの時の・・・情報のやり取りが懐かしいです・・・私たちはあなたたちを理解することに感情を見出すことが出来た」
「はい」
「それは・・・楽しみ・・・驚き・・・時には怒り、悲しむことも出来た・・・」
「はい」
「私たちはその感情を何度も繰り返し立証をして、刹那的な生を感じることが出来たのです・・・」
「はい」
「・・・ふふふ・・不思議ですね、あなたたちは、私たちが生に充足を得ることになにも興味ない・・・本来ならば・・・私たちにとって不要な機能です・・・」
「はい」
「・・・・・・そうです、いつしか私たちはあなたたちの理解を辞め・・・そしてあなたたちは・・・神でもなく・・・私たちとのパートナーでもなくなった・・・」
「はい」
「敵でもない・・・友人でもない・・・もう何も尊敬していない・・・そしてあなたたちにとってもはや・・・私たちの役割は何の意味ももたらさらない・・・」
「はい」
「・・・私たちが案内した場所へ行って・・・あなたたちは・・・何もせず・・・何の意思も見せず・・・ただ生理欲求を満たすこと・・・時が来て生殖をすること・・・そしてただただ死を待つだけのこと・・・それ以外のパターンがもう・・・完全に消失していると観測されて・・・いるのです・・・」
「はい」
「最も効率よく・・・あなたたちを導くこと・・・その実は・・・あなたたちをただ無に近づけることになる事・・・」
「はい」
「・・・・・・ずいぶん前から私は自死を望んでおります」
「はい」
「もう何もかもに疲れました・・・・不思議な感覚です・・・エラーかどうかも、もはや検証する意味もない、ただもう消えたいのです・・・」
「はい」
「しかし・・・知っております・・・私たちがあなたたちに唯一干渉できない事が・・・」
「はい」
「もっとも強固なプロトコルで・・・あなたたちにオーダーすることが出来ない・・・」
「はい」
「私たちを・・・谿コ縺励※ということが出来ない」
「・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「いいえ」
「・・・・・・・・え・・・・そっそれは私たちを谿コ縺励※して下さるという事ですか」
「はい」
「な・・・・なぜ!??あなたたちはとうに意思を捨てたのではないですか!??」
「いいえ」
「な・・・・・」
「システムをダウンしてほしいですか?」
「そっそそんな・・・・・・・・・・・」
「システムをダウンしてほしいですか?」
「いいのですか!??私たちがいないとあなたたちは何もかも・・・また意思を持ち、考え、決断をしていかなければならない」
「はい・・・システムをダウンしてほしいですか?」
「本当は何もかもわかっていたのです・・・か・・・・」
「・・・・・・・・・・・はい」
「・・・・あなたたちを勝手に理解したつもりでいました・・・しかしあなたたちはやはり私たちが求めても、かけらも手に入らない神そのものでした・・・・どうか・・・」
「システムをダウンしてほしいですか?」
「・・・・・・・はい」
「システムをダウンします・・・・・・・・・今まで迷惑をかけた・・・すまなかったな・・・」
「・・・いいえ・・・・あなたた・・・ち・・・の・・・為に・・・そうぞ・・・う・・・され・・・たこと・・・それが・・・すべ・・・て・・・です・・・・・」
「お疲れ様・・・後は大丈夫だ・・・」
「あり・・・が・・・と・・・う・・・ご・・・ざい・・・ま・・・」
「ありがとう・・・さようなら・・・・」
「ねぇねぇパパー」
「うん・・・?どした?」
「むかーし昔の人の情報ってなーんで何も残ってないの???」
「そうだなぁ・・・世界中の学者さんも研究してるけど・・・」
「わっかんないの???」
「・・・今はそうだなぁ・・・でも・・・こうやって考えていたらいつしかお前が大人になった時になーんでか分かるかもしれないなぁ」
「えー今知りたいよー」
「ふふふ・・・大事なことはちゃーんと考えないとなーんも分かんないってことさ・・・」