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新卒採用は量なのか?質なのか?3つのポイントから考えてみよう

日本企業の新卒採用基準は何でしょう?

先日とあるセミナーで同席をしていた大学のキャリアセンターの方と話をした時に、疑問が湧いてきたことがあった。
最近はいろいろな企業から、学内セミナーをやりたいということを言ってくる人事が多いんです。
人手不足になっているから、新卒採用がうまくいかないから、キャリアセンターを頼られても…と話が続く。

最近では採用活動が遅くなることによって、学生との接点が短くなる。
そうするとミスマッチが起きてしまったりするのではないかと心配する人もいる。

インターンシップで学生の青田買いだけが注目をされることが多いが、学生も企業を利用していること忘れてはいけない。
企業も有名企業でインターンシップをしているかという理由だけで、採用の時にアドバンテージを与えてしまう。
この時点では採用の均衡性が保たれていないのが、お解りだと思います。

昔から、いい学校に進学させて、いい会社に就職をさせたいというのが、親の心というがあたっている。
古くて今の時代に合わない考え方かと思っていた自分が恥ずかしい。
人事になってからそこによく気づくことが多い。

採用基準は企業ごとに違う。明確な採用基準もそこにはない。
それは公開されていないため、ここからは私の仮説になるので、信じるも信じないもあなた次第です。

新ネタの採用方法で会社を宣伝したいから?!

最近では、色々な企業が頭を使って採用方法をコンテンツ化している。
最終面接のノーカットで映像として流している企業や、一芸採用、他社の内定者を横取りする採用、体育会系採用など色々な採用方法をやっている。

差別化をするためにやっているのはよくわかりますが、いいねとバッシングがつきものです。

入社試験に受験料を取ることで、企業人事からすると本気で受けたいという学生が集中するのでいいという視点があり、学生から受験料を徴収すること自体がおかしいという批判があったりしました。

また、他社で内定をとっている人や最終面接まで残った学生を横取りして採用する方法など、人材紹介会社やイベント会社が主催となって何でもありな状況になる。
これも人事の先入観を逆手に取った発想で生まれたものだろう。

有名企業から内定をもらっているとか、最終面接まで進んでいるということだから、優秀な学生に違いないという思い込みをうまく利用していると思う。
マーケティングに基づいた根拠もないのが現状です。

優秀な学生の定義ってなんでしょう。
頭がいい=有名大学から採用するのでしょうか。
プレゼンテーション能力がある。=面接対策のセミナーや就職塾で身につけているかもしれない。
そもそも採用基準や採用の定義がしっかりしていないのではないのではないかという疑問もある。

御社の採用基準って何ですか?

これは、究極の質問です。
この質問をした瞬間に、担当者の顔がおもいっきり曇る。
なぜなら、明文化されておらず、感覚でやっていることが多いからである。

日本企業のほとんどが採用担当者には決定権をもっていないからである。
経営者層、マネージャー層、担当者層で見ている風景が違うから、採用基準が曖昧になる。

経営者層が見ている風景は、中長期的な計画目標から、短期的な計画目標を組み立てるが、マネージャー層は、猫の手も借りたいぐらい忙しいから採用してほしいという現場の視点、

担当者は色々周りから言われているから、採用しなきゃいけないんだなっていうことで動いている。

新卒採用と中途採用では採用基準が全く違うが、共通点もある。
大きな違いは、即戦力となるスキルを持っているかどうかである。
学生の場合は、社会人経験がないため、スキルをはかる方法はない。
一部のIT企業の採用では、クラウドワークスやランサーズなどといったプラットホームの実績を認めるところもあります。

しかしほとんどの場合が実績がないのだから、面接でポテンシャル採用をするしかない。
育成をする視点から採用をするケースがほとんどになる。
最低3年仕事をしたら、一人前といわれる所以にもつながってくる。
採用費用、育成費用などを考えると、3年は丁稚奉公みたいなものかも知れない。

その点、中途採用は即戦力ということをいわれている。
はっきりいうと、面接で見ぬくことはできない。
会社も違えば、上司も違う、仕事もやり方も違うのに画一的に判断をしようとする。
ここにも採用基準がないということをいえる。

合理的に実力をみようとするのであれば、契約社員としての採用をするしかないだろう。
1年契約として、評価のポイントをしっかりと伝えた上それを満たせば正社員、そうでなければ契約満了というやり方もあるだろう。

日本企業の場合は、雇い止めをすることは補助金がもらえなくなるのと、
法律で労働者が守られるシステムになっているので、正社員で雇うリスクが有るのであれば、そうする方法も一つではないだろうか。

日本企業の採用について、3つの問題点がある

1つ目は曖昧な期待値が存在していること。
2つ目は曖昧な評価が存在をしていること。
3つ目は人手不足になっているからこそ、採用が異常に過熱をして、疲弊していく現実がある。

1つ目の問題、曖昧な期待値が存在しているのはなぜでしょう。

日本の採用は採用の段階で何を個人が会社に期待していて、会社が個人に期待しているのかは不明確である。
ここで1つの仮説が出てくる。
採用の時に会社説明会をしている会社で疑問に思うことはないだろうか。
ポジティブなことしかいわないという現実。ネガティブなことは触れないことが常識になっています。

採用担当者の多くがやっていること。
大きな母集団を形成することで優秀な人材を確保できるという都市伝説的なことを今でも信用している。
応募ボタンを押してもらうためには、ポジティブな言葉が並んでいく。

そして、会社説明会でも本音と建前をきっちりと分けて話をしているため、
参加者は期待値がドンドン上がっていく。
面接、内定者フォローでもその期待値を裏切らないようにいろいろと仕掛けをしていく。
期待値がMAXに達したところで入社をすることになり、現実を知ることになるので、理想と現実のギャップに驚いてしまう。

その後、転職をする人が続出する理由にもつながっていく。
ブラック企業といわれる企業の説明を見ているとこの仮説がきちんとハマる。

ワークライフバランスという言葉があるように、残業時間が40時間以内と聞いていても、実態は60時間近くあったり、100時間近くなったりすることもある。

休日出勤は代休が取れるということになっているが、実情は取れなかったりする。
有給消化率などについても、実態にそぐわない数値が出ているかもしれない。

こういう言葉に期待をして、騙されてしまうケースがほとんどです。

これが曖昧な期待値が存在しているという点につながる。
求人票を疑うことと人事がいっていることを疑う習慣をつけてもらうと、
物事の本質が見えてきて、問題の核心をつくことができるだろう。

2つ目の問題、曖昧な評価が存在しているのはなぜでしょう。

日本経団連が発表している採用基準のランキングを見てみると、実に面白いんです。
第一位…コミュニケーション能力(6年連続1位)
第二位…協調性
第三位…主体性
第四位…チャレンジ精神
第五位…誠実さ

この5つのキーワードを見て気づくことがありませんか?
抽象的な表現であると同時に、採用基準が曖昧になっているということが露呈しています。
コミュニケーション能力に自信がありますという学生もいるが、
企業の採用基準でコミュニケーション能力って何なんでしょう。

報告、連絡、相談がすぐに出来ることなんでしょうか。
会議に出たら意見を持っていたり、質問をすることでしょうか。
チームワークとして最低限必要なコミュニケーション能力何でしょうか。

コミュニケーション能力を1つ取り上げてもこれだけの疑問が湧いてくる。
学生が思っているコミュニケーション能力と企業が考えているコミュニケション能力はイコールになるのでしょうか。

企業にとって協調性や主体性が重要であることもよく分かるんですけど、具体的にどういうことをやってきたから協調性があるとか、主体性があるというのは判断ができるのでしょうか。
グループワークで見抜けるという採用担当者もいると思いますが、
初対面で信頼関係のないグループからそれを見抜くことは難しい。

さらに困ったことに上位3つのキーワードが大事なものであると考えられている点です。
企業が画一的な基準を設けてしまうため、それを満たしている学生が多く見えてしまう。
そこに有名大学出身となると鬼に金棒。
社会とは本当に不公平なルールと思い込みから成り立っていると感じる。

企業が勝手に作ったルールでもある評価基準の「コミュニケション能力」という抽象的な言葉をとって考えてみても、
同じ求職者を多くの企業がしのぎを削って採用をすることになる。
それに伴い、採用の格差が広まっていくことにもつながっていきます。

3つ目問題、人手不足になっているからこそ、採用が異常に過熱をして、疲弊していく現実がある。

こうした曖昧さと画一化は日本企業の採用を過熱させることになります。
多くの企業が大きな母集団の形成に重きをおいて採用活動をしていることから、
曖昧な期待につながっていることは最初に触れています。

能力評価についても曖昧なまま、より一層日本企業を巻き込んでいく。
曖昧な能力評価をある企業が画一化することによって、右へならえという業界がほとんどである。
それにともない、氷山の一角をめぐる人材の争奪戦が繰り広げられるんです。

広告では一番上に表記されるようにする、バナー広告を出すなど優秀な人材を募集する段階で膨大なコストを掛けることになる。
その後は集まった母集団からふるいにかけていくため、採用活動の段階でも膨大なコストがかかっていることに気づいていない。
これは目に見えるコスト(予算)なので、削減する方法もあるし、追加する方法もある。

コストについては人事部、採用部署など一見するとコストがかかっていないように見えるが、その時間の生産性や業務の対価などを考えると、年間数千万円から数億円単位がかかっていることに気づかない。

こういう消耗戦を戦っていて、満足した採用ができている企業はいいでしょう。
膨大なコストをかけている割には、満足した採用活動ができていないというのは不思議である。

日本企業がこの3つの問題をクリアするにはどうするか?

日本企業の採用活動の問題点として、曖昧な期待、曖昧な評価、疲弊していくということについて書いてきました。
この3つ以外にも日本企業の採用について問題点は多くある。
採用活動が3年生10月広報活動開始、順次選考活動開始して経団連の企業は外資やベンチャー企業などから遅れてスタートをする。

10月内定式、3月〜4月入社という流れによって、選考期間が短くなること、学生にも企業にとっても採用活動が難しくなっている。
その後のことをいうとグローバル人材の創出、育成、研修などの連携とも問題が生まれてくるだろう。

極論を言えば、曖昧な期待、曖昧な評価を問題視することで、差別化できるのではないだろうか。


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