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やる気とモチベーションをアップさせる3つのポイント

やる気っていっているけど…

「やる気があるのか、ないのかわかんねーなぁ。…」と昔はよく上席に詰められる時に言われた。

「やる気がある」「やる気がない」などと普段よく耳にする言葉ではあるが、実は心理学ではとっても奥が深いテーマなのだ。

専門用語でやる気のことを「動機づけ」といい、大きく分けると「外発的動機づけ」と「内発的動機づけ」という2つのタイプに分類される。

今回はやる気についてお話をしていきましょう。

1:「外発的動機づけ」=賞罰(アメとムチ)による動機づけ

人間だけではなくイヌやネズミでさえも、報酬を与えられる行動を増やし、罰を与えられる行動を回避するようになる。

例えば勉強嫌いの子供に何とか勉強させたいと願っている親の場合、勉強しなさいと叱ったり、このままじゃ大学に入れないぞと煽ったり、何番以内に入ったらゲームを買ってあげるとご褒美で何とかしようとするかもしれない。

このように、アメとムチを使い分けることで人を動機づけることを「外発的動機づけ」という。

外発的に動機づけられている人にとっては報酬を得ることや罰を回避することが目的であり、勉強や仕事などの行動はその手段となっている。

確かに短期的に考えれば、外発的動機づけは強力で有効だ。ところが長期的に考えた場合、外発的動機づけの持つマイナスの効果が次第に明らかになってきた。

勉強にせよ仕事にせよ、外発的に動機づけられている状態(つまり外的報酬を得るためにやる、それをやらないと怒られたりクビになるからやる云々…)では、手っ取り早い最短の方法を選ぶようになる、チャレンジしなくなる、親や上司の見ていない所で巧妙にサボタージュするようになる、といった弊害が出てくるのだ。

何より、絶えず誰かが見張っていてアメやムチを与え続けなければ、行動は発生しない。

ここで外発的動機づけではないもう一つの動機づけとは何か、考えてみよう。

皆さんは、外的報酬(主に金銭的見返り)や罰が与えられるわけでもないのに、何かに一生懸命になって取り組んだ経験はないだろうか? 例えば芸術活動やボランティア活動などが挙げられるだろう。

外発的動機づけ理論では、人間がそのような活動に没頭するメカニズムを説明することができないのだ。

2:「内発的動機づけ」=行動することで得られる楽しさや満足感による動機づけ

内発的動機づけとは、賞罰という外的な強制力がない状態で動機づけられることである。皆さんが趣味や仕事以外の活動に没頭している時を思い出して欲しい。

内発的に動機づけられた人にとっては、行動それ自体が目的であり、そこから得られる楽しさや達成感、充足感が報酬なのだ。

楽しいから積極的に参加するし、自発的に学習し、最大限に努力する。

内発的動機づけとは、まさに個人の内から湧き出る意欲なのである。

これまでに学校や組織において数々の動機づけ研究がなされており、外発的に動機づけられているグループよりも内発的に動機づけられているグループの方が、量的にも質的にも高い成果を上げることが一貫して実証されてきた。

長期的な視点で考えた場合の「本当の」やる気とは、内発的な動機づけのことであるといえよう。

ここで付け加えておくが、「でも金銭的な報酬だって重要だよなあ」と考えた方がいらっしゃることだろう。

確かに金銭的報酬は人を動機づける上で重要な役割を果たす。どんなにやりがいがあって楽しい仕事でも、極端に収入が低ければかえって意欲を失ってしまうだろう。

内発的動機づけにおいては報酬とは、自分が成し遂げたことや何かに貢献したことを実感するための手段として働く。

そこから、更なる達成感や満足感を得ることでより内発的動機づけが高まるのだ。

但し、外発的動機づけとは異なり単純に金銭的報酬が上がったから内発的動機づけが高まるというわけではない。

内発的動機づけでは活動それ自体が大きな「報酬」であるからだ。

皆さんがもし親や上司といった立場にある人ならば、自分の子供や部下を「アメとムチ」によって動機づけていないか考えてみて欲しい。

高い成果を上げて欲しいとあなたが一生懸命になればなるほど、「試験が終わったとたんすぐに忘れ、勉強しなくなる子供」や「無難な方法を求め、言われたことしかしない社員」を育ててしまう危険性があるからだ。

内発的動機づけの発現プロセスとそれを高める方法

外的な報酬のために活動している時よりも、達成感や成長感などに支えられて活動している時の方が多くの努力や創意工夫を生み出し、質・量ともにハイレベルの成果を継続的に上げることが一貫して実証されている。

長期的な視点からみると、部下のやる気を引き出すには内発的な動機づけの方が はるかに有効である。
それでは、内発的な動機づけはどのようにして生じるのであろうか?

内発的動機のみなもとは!?

まず、内発的な動機づけを支えているものがある。それは、「自己決定感」「有能感」「他者受容感」という3つの要素だ。

自己決定感とは「自分のことは自分で決めている」という気持ちであり、有能感とは「自分なら頑張ればできる」という本人の気持ちである。

他者受容感とは「自分は周りの大切な人から受容されている」という気持ちである。

この3つの要素が自ら学ぶ意欲をもたらし、楽しさや満足感が生まれる。

この3つの要素を仕事場面に置き換えて考え、部下の「自己決定感」「有能感」「他者受容感」を高める方法について考えてみよう。

1:自己肯定感

人間は本来、自分が外的な力によって操られる「コマ」のような存在ではなく、自分自身の行為の「源泉」でありたいという欲求を持っている。

言われたことだけ、決められたようにやる仕事ほどつまらなく、やりがいも感じられないだろう。

「言われたことをやっている」と思っている人と「任されてやっている」と思っている人とでは、仕事に対する興味や意欲の差は歴然である。

組織の一員である以上、何から何まで決めさせることは不可能であるが、できる限り裁量権や選択の機会を提供することで部下の自己決定感を高めることができる。

目標設定や意思決定に部下を参加させる、重要な会議に出席してもらうといったことも考えられるだろう。

そうすることで、「自分の仕事である」という意識が部下に生まれ、納得して活動に取り組むことができる。

ただここで注意したいのは、「任せる」と「ほったらかす」のは違うということだ。

達成すべき目標を明確にし、部下が立てた計画を検討し、計画の実現を支援するのが上司の重要な任務である。部下が主体性を持って意欲的に取り組むには、上司のサポートが不可欠なのである。

2:有能感

高い困難な目標は、低い容易な目標よりも動機づけを高め、創造性やよい成果を生み出すことがこれまでにいろいろな実験で確かめられている。

但し、部下がその目標は「がんばれば達成できる」という感覚を持っていることが必須条件である。

とうていできそうもないと思っていることに努力を注ぐ人はいないだろう。

その分の労力は、できないことへの言い訳に費やされることとなる。

そのような場合には、中間目標をいくつか設定し、段階的に目標達成することが有効だ。

最終目標だけを与えた場合よりも、中間目標も同時に与えた場合の方が成果が上がることが、多くの研究で示されている。

有能感は、頑張ればできそうな最適なチャレンジレベルの目標を自分の努力によって達成した時に、もっとも感じることができる。

逆に失敗した時でも、その原因と改善策を部下がきちんと理解できれば、「次はできる」という気持ちになり有能感が低まることはないだろう。

ここで重要なのは、上司の適切なフィードバックである。部下のどこが良くてどこが悪かったのか、あるいは何ができていて何ができていないか、客観的なフィードバックをまめに与えることで、部下が自信過剰や無力感に陥るのを防ぐことができるのである。

3:他者受容感

内発的動機づけの研究では世界で第一人者のデシ博士は、自律的でありながらも、同時に自らを信頼し支援してくれる人物の重要性を指摘している。

特に経験やキャリアの浅い部下が自己決定感や有能感を得るためには、上司の働きかけが不可欠である。

デシ博士がゼロックス社で行った研究では、部下に選択権を与え決定への参加を支援する管理職の元で働く従業員は、会社をより信頼し、給与や福利厚生のことにとらわれずに、より高いレベルの動機づけと満足を示していた。さらに、部下に選択権を与え決定への参加を支援する方法を管理職に訓練すると、その部下たちがより優れた成果をあげることを確かめたのである。

部下との信頼感を醸成するにはまず、部下を受容し、十分に話し合い、勇気づけや励ましを与えることである。

また、上司は自分の成長を気遣い、いざという時には助けになる存在であるという認識を部下が持つことが必要だ。

こうすることで部下の内発的な動機づけが高まり、目標への積極的な取り組みが生まれるのである。

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