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短編小説:依存

私、彼がいないと生きていけないの。

それが私の口ぐせだった。

その話をするたび、友達は皆、そんなに依存するのやめなよ、と止めた。

だれも分かってくれない。
彼がどれほど私にとって大切かを。
彼だけが私の心も身体も暖めてくれる。

私は彼がそばにいないと、眠ることもできない。
彼を抱きしめて寝る時だけ、生きている、と実感できる。

友達と旅行に誘われても、彼を置いていくのがツラくて断った。

もし、私がいない間に誰かに彼を奪われたら・・
そう考えただけで私は不安に襲われる。

彼のことが大好きで、とても大事にしていた。
大事にしているつもりだった。

でも。

彼には私の愛は重荷だったのかもしれない。

ある日朝起きると彼は冷たくなっていた。
ベッドはしっとりと湿り、彼が危ないことを伝えていた。

私は慌てて飛び上がり彼を抱えて洗面台に向かった。
ポタポタ、と彼から汗がしたたった。

彼の服はすでにぐっしょりだった。

私は彼が吐きやすいように流しに顔を近づけた
彼の口からは冷たい水が出た。

それから彼の濡れてしまった服を脱がせた。
原因はすぐに分かった。
彼のお腹にはひびが入っていた。
私が毎日、彼に熱湯を注いだから。

本当は70℃って書いてあったのに・・
彼は私の依存のせいで死んだ。

新しい彼はもうじき来る。
私はまた懲りずに新しい彼にも依存するんだろう。
毎日彼に100℃の熱湯を入れ、彼を抱きしめて眠る。

愛してるわ、ゆたぽん。

【お知らせ】耳で聴く物語はじめました。聴いていただけたらうれしいです。


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