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短編小説:冷蔵庫

私が初めて買った冷蔵庫は紺色だった。

それまで白い冷蔵庫しか使ったことがなかったので、紺色の彼はとてもスタイリッシュに見えた。
私は彼のことをレイちゃんと呼んで可愛がった。
私は彼に絵を描いた。紺色の彼に描いたコミカルな白いロケットは、彼をいっそう愛らしくみせた。

その頃の私は転勤が多く、半年に一度は引っ越しているような状態だった。社宅から社宅へ。
社宅という名の刈り上げマンションを短いスパンで移動。
最後には開けない段ボールが常に5個はあるという状況だった。

食事はコンビニばかり。
レイちゃんはいつもビールとアイスクリームだけを冷やしてくれていた。

そんなある日、深夜うちに帰ると、彼は死んでいた。
たび重なる異動に耐えられなかったのだろう。

ブーンという音のしないうちは、ドアを開けた時、異常に静かな気がした。

死んだ彼の足元は水浸しで、彼の中に大切にしまっていた大量のアイスは皆色水と化していた。

その日は暑い日だった。

私は泣きそうになりながら、彼の足元にひざまづいた。
彼の中からすっかりぬるくなったビールを取り出した。

彼にもたれて、ビールで彼にさよならを言った。
バイバイ、レイちゃん


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