不満足の反対は満足か?ハーズバーグの二要因理論から考える
こんにちは。me:Riseキャリアコーチの志賀です。(>>コーチ紹介インタビュー)
「仕事における不満の要因を解消したら、私たちは満足するのか?」
こんな、ひとつの疑問があります。
皆さんはどう考えますか?
例えば、あなたが「上司の指示や考えに納得できない」という不満を抱えていたとします。
何らかのきっかけで、その上司の指示や考えが、あなたにとって納得のいくものに変わったり、または社内異動によって、上司が別の人に変わったりすることで、その不満が解消されたとしたら・・・
そのとき、あなたは仕事に対して、「満足」を得られるようになりますか?
今回は、仕事における不満要因を解消し、より満足度を高めたいと思っているビジネスパーソンの皆さまに向けて、より良い選択をするための考え方の切り口をお届けできればと思います。
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ハーズバーグの二要因理論(動機付け・衛生理論)
冒頭で挙げた疑問について、調査分析を通じて職務満足の構造に迫り、ひとつの指針を示した理論があります。アメリカの臨床心理学者、フレデリック・ハーズバーグ(Frederick Herzberg 1923-2000)が提唱した、「二要因理論」です。
ハーズバーグの「二要因理論」では、
・仕事において満足を生む要因と、不満足を生む要因は、独立した別の要因である
・満足につながる要因を「動機付け要因(Motivator Factors)」、不満につながる要因を「衛生要因(Hygiene Factors)」とし、両者が満たされることで高いモチベーションが維持できる
ということが主張されています。
また、ここで登場している「動機付け要因」と、「衛生要因」の中身の例については、以下のように整理されます。
この理論の重要なポイントは、「動機付け要因」は、満たされるほど満足度が高まりますが、少なかったとしても、不満に大きくは作用しないということ。
また、「衛生要因」は満たされないと不満が大きくなりますが、一定満たされた際には、それ以上充実したとしても、仕事の満足度には作用しないという点です。
あくまでもひとつの理論ですので、さまざまな捉え方があるかと思いますが、皆さんはご自身の経験から、どのように感じますでしょうか。
キャリアコーチングでの実例
実際に、キャリアコーチングでこのようなケースがありました。
(クライアントさんのプライバシー保護のため、設定を変更して書いています)
転職活動をスタートしたものの、仕事選びの軸が整理されていないことに課題を感じ始めていたクライアントAさん。
Aさんと相談の上、その日は「望ましい最高の未来」を描く中から、転職軸の要素を見つけようと進めていたセッションでのこと。
どんなことが実現できていたら最高の未来と言えそうなのか、浮かんだことを言葉にしてもらいました。
「せかせかと何かに追われるのではなく、日常の中にゆとりや余白があったら最高です・・・それがあったら、大切な家族との時間が確保できる。それから、好奇心旺盛なので、興味を持った学びや読書に時間も使いたい。あとはやっぱり、心身健やかに仕事ができると思います。仕事の生産性も上がって、残業時間も少なくなるでしょうし、良い循環が生まれます。」
お話しされたことのメモを画面共有で映しながら、ここまで話してみてどうですか?と問いかけました。
「自分の理想の一番に、ゆとりとか余白というのが出てきたんですが、こうして振り返ってみると、これらは今の仕事環境で不満に思っていることの裏返しですね・・・残業も多いですし、土日も仕事の調べものをしたりする時間があって、休んだ気になれないんです。一番求めていることかもしれません。」
では、今言葉にしてくださった、ゆとりや余白が手に入ったときの未来を、もう一度想像してみてください。そのときの満足度を10点満点で表すと、何点ぐらいでしょうか?と聞いてみました。
クライアントさんは、少しの間考えてから、こうおっしゃいました。
「4点くらい・・・でしょうか。決して、ゆとりだけがほしいわけではないなと思いました。仕事への熱中とか、達成感があるからこそ、心置きなくゆとりを楽しめるのだろうな。かと言って、やはり、ゆとりや余白がなければ、自分にとっての良いバランスは保てない気がします。」
そこからは、何があると残りの6点分が満たされそうか、どんなことが起きていたら仕事に熱中していると言えそうか、今不満に感じていることがすべて解消されたとしたらその先でどうしたいかを、一緒に紐解いていきました。
ハーズバーグの二要因理論を、キャリアにどう生かす?
前述の事例をお読みいただいて、お気づきの方もいらっしゃると思います。
はじめにクライアントさんの口から語られたことは「衛生要因」、つまり、満たされなければ不満になり得る要因にまつわることが主でした。そして、その「衛生要因」が満たされたとしても、仕事の満足度やモチベーションが高まるということには、不十分。つまり、それらの要因は、必要条件ではあるけれど、十分条件ではないということです。
また、ここでは詳細を割愛していますが、10点満点に近づく残り6点分で語られたことは、仕事のやりがいや達成感など、「動機付け要因」にまつわるものがほとんどでした。
私たちがこのクライアントさんと、ハーズバーグの二要因理論から改めて学べることは、仕事の満足度を高めるには、「衛生要因」も、「動機付け要因」も、どちらも満たされていることが大切ということではないでしょうか。
では、この二要因理論をキャリアにどう生かせば良いのでしょうか。仕事における満足度を高めたいと考えるとき、私は2つのことを意識しています。
①自分にとって望ましい未来は、2段階で描くこと
私たちは、理想の未来を語ろうとしている状況においても、つい現状の課題を反映させてしまうことがあります。ですがこのことは、これまで述べてきたように、決してネガティブなことではありません。不満につながる要因を減らしていくためには、必要かつ重要です。
その土台があるからこそ、「その先で自分はどうしたいのか?」と、もう一段階考えてみることで、満足につながる要因を見つけていくことができるのです。
②「動機付け要因」と「衛生要因」を網羅的に考えること
コーチングセッションでは、仕事を取り巻く複数の要素(仕事内容、環境、お金、人間関係、時間、やりがい、社会貢献など)を網羅的に見ていくためのワークシートを活用することがあります。まさに、この複数の要素は、「動機付け要因」、「衛生要因」にもとづいています。
事例のように、そのとき抱えている課題によって、見落としがちな要素があることも多いため、俯瞰して、仕事を取り巻く要素の切り口を確認しながら網羅的に考えていくことは有意義であると考えています。
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いかがでしたでしょうか?
美味しいと評判のレストランに足を運んで、心躍る盛り付けのお皿がサーブされ、酔いしれてしまうようなお料理に舌鼓を打ち、真心のこもった心地よいサービスを受けたなら、あなたの満足度はきっと上がるでしょう。一方、そのお店のお手洗いがピカピカで、ふわりと良い香りがしたとしても、それは満足要因というより、不満にならないための要因。そう考えると分かりやすいかもしれませんね(笑)
仕事の満足度をより高めたいと考えている方のお役に立てる部分があれば嬉しく思います。お読みいただき、ありがとうございました!
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