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プログラミング教育の必要性と家庭での取り組み方

こんにちは松田です。学校現場で感じるリアルな声をお届けします。高校で「情報Ⅰ」が必修化されました。今回は教育課程で必修化されているプログラミング教育について解説をしていきたいと思います。(この文章は、水無瀬あずささんに記載をしていただいたものを監修しています。)

教育課程でプログラミングが必修化されている

ITやデジタル技術が進化を続けるなか、日常生活においてコンピュータを活用する機会が増加してきました。今ではよほどの事情がない限り、1日の中でコンピューターに触れない日はないと言ってもいいでしょう。変化の激しい情報化社会に適応するためには、コンピュータの仕組みや動作を正しく理解し、上手に活用していくスキルの習得が不可欠です。その手段として着目されたのがプログラミング教育です。

文部科学省は2017年の新学習指導要領において、「コンピュータをより適切、効果的に活用していく」ことを目的として、プログラミング教育の導入を決定しました。これを受け小学校で2020年度から、中学校では2021年度からプログラミング教育が必修化されています。さらに2022年度からは高校の共通必履修科目として「情報Ⅰ」が新設され、2024年度(2025年1月)からは大学入学共通テストの新科目として「情報」が加わることも決定しています。

小・中学校のプログラミング教育

「プログラミング教育」と聞くと、「プログラミング言語を学んでプログラムを作る」という授業を想像する人も多いかもしれません。しかし小・中学校におけるプログラミング教育の目的は、プログラミング言語の習得ではなく、「プログラミング的思考」を学ぶことにあります。

プログラミング的思考とは、「自分が意図する一連の活動を実現するために、どのような動きの組合せが必要であり、一つ一つの動きに対応した記号を、どのように組み合わせたらいいのか、記号の組合せをどのように改善していけば、より意図した活動に近づくのか、といったことを論理的に考えていく力」を言います(引用:文部科学省「小学校プログラミング教育の手引(第三版)」)。物事に対して、順を追って段階的に組み立てられる能力で、論理的思考とも言い換えられます。

私たちは日常において、無意識のうちにプログラミング的思考を使って行動しています。たとえば「引き出しを開けて、中にあるクリップを取り出す」場合、「①引き出しを開ける」→「②引き出しの中のクリップを探す」→「③クリップを発見したら取り出す」→「④引き出しを閉める」という動作を順番に実行していることになります。無意識のうちに行動しているこれらの動作を、言葉に出して順序立て、「記号化」できる能力を身につけることがプログラミング教育なのです。

このようなプログラミング的思考はテストなどでの評価が難しいことから、小・中学校では「プログラミング」のような科目がありません。それぞれの授業でプログラミング的思考が取り入れられ、担当する教員に委ねられる形で進められています。

高校では共通必履修科目「情報Ⅰ」が新設

高校のプログラミング教育では、プログラミング的思考を用いて課題や問題を発見・解決するために、情報および情報技術を適切に活用する具体的な方法を学びます。小・中学校に比べて専門的な内容になるため、「情報Ⅰ」という共通必履修科目が2022年4月から新設されました。2023年度からは、「情報Ⅰ」よりもより専門的な選択科目として、情報システムやビッグデータ、人工知能やネットワークについて学ぶ「情報Ⅱ」も開設されています。

個人的には、今後のビジネスではビックデータやAIの利用は避けて通ることはできないと思っています。ただ、実際にはプログラムを学ぶというよりは仕組みを学ぶことが重要です。これからはプログラミングそのものはAIが作成する時代になっていく可能性が高いです。どちらかというと情報を使いこなすスキルが重要になってくると考えています。

「情報Ⅰ」「情報Ⅱ」新設の背景には、2022年度から成年年齢が18歳へ引き下げられたことがあります。高校生にとって政治や社会がこれまでより身近なものになってきたことから、高校教育においてさまざまな情報を見極め、情報技術を使いこなし、新たな価値につなげていく能力を育成する必要性が生まれました。このため「情報Ⅰ」では、情報に関する法律や制度、情報モラルやセキュリティ、情報デザインなどのほか、実際にプログラムを制作して動かすプログラミング言語の学習も含まれています。

「情報Ⅰ」で学ぶプログラミング言語には、「Python」「JavaScript」「VBA」「Scratch」などがあります。特に「Python」は、AIの機械学習やデータ収集などができるプログラミング言語として注目されていることから、採択する高校が多いようです。

「情報Ⅰ」の新設を受け、2025年度の大学入学共通テストからは新科目として「情報」が新設されます。試験時間は60分で、「情報Ⅰ」からの出題となっています。

家庭でもできる!おすすめのプログラミング教育

一見難しそうに見えるプログラミングですが、実はパソコンさえあれば家庭でも手軽に始めることができます。「少し興味がある」という方は、まず家庭でプログラミング教育を始めてみましょう。ここでは、現役エンジニアがおすすめするプログラミング言語をレベル順に3つご紹介します。

初級編|Scratch

Scratch(スクラッチ)は、8歳から16歳向けに開発された無料教育プログラミング言語と開発環境です。Webブラウザ(ChromeやSafariなどのアプリ)上で、ブロックをつなげることでキャラクターやアイテムなどの動作を制御します。ゲーム感覚で操作できるので、文字のタイピングができない子どもでも楽しみながらプログラミングができます。

作った作品はScratch内のオンライン・コミュニティで公開でき、世界中の人に自分の作品を見てもらうことで、フィードバックを得られます。コミュニティを通じて修正を繰り返すことで作品の完成度が高まり、さらに自己表現力や発信力、創造力を磨くことにもつながります。

なお、オンライン・コミュニティを利用する際には、トラブルが起こらないよう保護者がしっかり見守るようにしましょう。

中級編|HTML/CSS/JavaScript

Webサイトに表示されているコンテンツはほぼすべて、HTML(エイチティーエムエル)と呼ばれるプログラミング言語で書かれています。HTMLは「Hyper Text Markup Language」の略で、「タグ」と呼ばれる要素を利用して、文字や画像、動画などをWebブラウザ上に表示するプログラミング言語です。

Webサイト上で文字を太くしたり大きくしたり色を付けたい場合には、HTMLと一緒にCSS(シーエスエス=Cascading Style Sheets)を使います。

また、メニューが自動で開いたり閉じたりするなど、Webサイト上で動的な表現を追加したい場合には、JavaScript(ジャバスクリプト)と呼ばれるプログラミング言語も利用します。

いずれも学習の難易度はそれほど高くないので、タイピングができるようになった子どもにおすすめです。

ITエンジニアのなかでもWebエンジニアと呼ばれる職種ではHTML/CSS/JavaScriptのスキルを必ず使うことになるため、習得しておくと将来何らかの形で役立つかもしれません。

上級編|Python

本格的なプログラミング言語を学びたいという人には、Python(パイソン)がおすすめです。

Pythonは、AIの機械学習やビッグデータ収集などに利用されるほか、WebサービスやWebアプリ開発に使われているプログラミング言語です。Pythonで作られている代表的なサービスとして、AmazonやYoutube、Instagram、Spotifyなどがあげられます。

世界的に需要が高いことから、高校の「情報Ⅰ」におけるプログラミング学習用の言語としても採用されています。

Pythonの学習は、参考書とWeb上の動画学習サービスを利用して進めるのがおすすめです。HTMLやJavaScriptに比べると学習の難易度がやや高いので、必要に応じて有料サービスを利用し、SNSなどでプログラミングの仲間を見つけるなどして、継続して学習を進めましょう。

まとめ|プログラミング教育で未来を生き抜く力を育もう

高校の教育課程に「情報Ⅰ」が追加された背景と、これからの情報化社会を生きる子どもたちにはプログラミング教育やプログラミング的思考が必要であることをご紹介しました。プログラミング教育は、子どもたちが未来を生き抜く力を育む大切な学習です。保護者世代には馴染みがないプログラミングというカリキュラムですが、家庭でも始められることがあるので、子どもと相談しながら積極的に進めていきましょう。

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著者プロフィール 松田剛典

一般社団法人キャリアラボ 代表理事 https://kokoswitch.com
株式会社みらぴか 代表取締役 https://mirapika.jp 
ツイッター:https://twitter.com/goten_m

株式会社ベネッセコーポレーションで高校生の進路選択の部署に配属。全国の高校の進路相談会の運営や入試判定業務などに携わる。人材紹介会社の大阪責任者をを経て独立。キャリア支援の仕事を始めて約20年目。複数の大学でキャリアデザイン講座の講師をしながら、北海度から九州まで全国の高校大学を訪問する実践型キャリア支援家。年間3000件前後の面談と、5000件前後のキャリア講座を運営。
2023年保護者向けオンライン相談サービス「みらぴか」をリリース
著書:「はじめての課題解決型プロジェクト」ミネルヴァ書房

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