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コーチングと落語の共通点に気付いた!〜想像力をかきたてる落語の世界

最近嬉しいことがありました。それは長年応援してきた落語家さんが、笑点レギュラーになったことです!

20年以上前、社会人になったばっかりの丸の内O Lだった頃、会社の先輩が「今日さ、八重洲に落語聴きに行かない?」と誘ってくれたことがきっかけで、落語の世界に触れるようになりました。

そして、その八重洲で独演会をしていたのが、現在の立川晴の輔師匠こと、当時の立川志の吉二ツ目でした。

夜の部はたしか19時開演だったと思います。東京駅周辺が勤務地だったこともあり、仕事終わりや、仕事の合間に、数ヶ月に1回、晴の輔さんの八重洲の独演会に通っていました。

落語の何にハマったかといえば、自分の身体一つで勝負している落語家さんの生き様というか、プロフェッショナルとしての鍛錬、潔さです。

仕事道具は、自分の表情、語り、だけ。なんと潔い。まさに『自分』が商品。『自分』が仕事道具。そしてその『自分』という商品は、歳を重ねることで、人間力という漆が幾層にも重ねられ、より輝く

人間力がものを言う、嘘をつけない世界。

そんな、「自分で勝負する」という、その職業選択をした生き様がかっこいいなと憧れの対象です。世襲でもないですしね。

そして、落語もまさに一期一会、その日その時間に居合わせた人たちだけで味わう贅沢な刹那です。

同じ演目でも、語る落語家さんによって、印象が全く違うのです。そして聴く側の自分のコンディションや状況によっても違いが生まれる気がします。

なぜ印象が変わるのでしょうか。これは、落語家さんが聴衆である私たち観客の想像力を掻き立て、煽り、刺激するからだと思います。落語家さんの力も勿論ですが、聴き手側にも理由があると思っています。

本を読んだ時にはすごく面白かったのに、それが映像化された瞬間、興醒めした経験ありませんか?私の想像と違う、、と。

それと似た感覚なんです。刺激が少なければ少ないほど、私たちは自分で足りない情報を埋めなければならず、自分の中で、風景、登場人物の雰囲気、街の情景を勝手に想像します。なので、一人一人の中に、違う与太郎(落語の代表的な登場人物)の顔が浮かんでいるはずなんです。

なので、本を活字で読むよりも、朗読で聴く方が、想像力は掻き立てられますし、漫画で絵があるよりも、活字だけの世界の方が自分で補う点は多いはずです。アニメ化されて動く姿が映し出されること、映像化されて誰かがそのキャラクターになることも同様です。与えられる情報量や刺激が少なければ少ないほど、受け手は、自分で勝手に補うのです。これが無限の可能性を生み出します。

私が、落語とコーチングが似ているなと感じたのはそれなのです。

先日、コーチ同士の勉強会で、ある講師役のコーチの方が「自分はセッション中、クライアントさんの発言をその場でタイプしてまとめています。それをクライアントさんと画面共有しながらセッションを進めています。」と言っていまして、私は強烈な違和感を持ちました。

私は、コーチの役目は、クライアント様の無意識を刺激することだと思っています。そのために、我々コーチは、クライアント様の想像力に働きかけて、その人の中にしかない答えを導き出してもらうために、色々な角度からの質問を投げかけるという技術で勝負しているわけです。

私はそういうスタンスでいるので、セッション中に画面共有をして、クライアント様に文字情報を見せてしまうことは、セッション中にクライアント様が享受すべき、無限の想像力に、何かしらの制限をかけてしまうもののような気がしました。

文字情報と自身の感情を結びつける作業は、コーチがいなくてもできると思っています。

それよりも、コーチとのセッション時間で注力すべきことは、クライアント様にどれだけ、多角的な刺激を与えて、そこから現れる反応、思いついた情景・言葉、「なんで今このこと思い出したんだろう?」というような想定外の無意識との会話を表層に浮き上がらせて、それを言語化させ認識してもらい、昇華まで持っていくことだと私は思うのです。

そんなことを思った時に、「あー、コーチングって落語と似てるなー」と思ったのでした。

伝統芸能の世界に飛び込み、身体一つで勝負している落語家さんと同じだとは畏れ多くてとても言えませんが、それでも、私たちコーチの商売道具は「質問・投げかけ」であることを思うと、なかなかかっこいい職業かもですね。

最後に。冒頭に触れさせて頂いた晴の輔師匠の、今回の笑点レギュラーメンバー昇格のご活躍。一ファンとして、とても勇気を頂きました。八重洲をはじめ各地での独演会をコツコツ積み上げられて、真打昇進の際の時も「真打になったので、この独演会の料金を少し値上げさせて頂いてもよろしいでしょうか?」と客席に聞かれたことも覚えているくらい、応援させて頂くようになってから20年近く、ずーーーっと、とにかくコツコツ、コツコツ、コツコツ積み上げられてきました。そこへきて、笑点レギュラーメンバーですから。コツコツの努力は裏切らないんだな、今まで通ってきた道の先にこれがあったんだな、とそんなエールを頂いた気分です。
(晴の輔師匠、ありがとうございます!そして、おめでとうございます!)

落語とコーチングの共通点。

それは、自分の言葉と姿勢だけで人様に良い刺激を与えること、ではないでしょうか。


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