My読書③「苦しかったときの話をしようか」
「苦しかったときの話をしようか」 森岡毅
敏腕マーケターが書いたキャリア本です。
筆者は、経営危機にあったUSJを経営再建した人として有名ですね。
筆者の本との出会いは、USJの再建物語「USJを劇的に変えた、たった一つの考え方」。当時は読みやすくも、詰まったマーケティングコンテンツにビビりました。
ゴリゴリとロジカルにマーケティングを語られるイメージがありましたので、このキャリア本は意外でした。そして、おもしろい。
そんなマーケター視点のキャリア本、気になったところをまとめてみました。
1.残酷なキャリアの世界
筆者のとらえるキャリアの世界は
「神様の正体は確率であり、極めて平等にランダムに行われるが、結果には偏りがあるもの」。
つまり、神様のサイコロで決まった「もって生まれたもの」をよく知り、どうやって最大限に活かして、目的を達成するか、ということ。
生まれつき目に見えない差がついていても「自分のキャリア戦略は、自分の意思で選択していこう」という強いメッセージを感じます。
このなかで、自分でコントロールできる変数は、次の3つ。
①己の特徴の理解
②それを磨く努力
③環境の選択
これらの変数をいかに自分でコントロールし、自らキャリアを積極的に選択していけるか、が問われています。
2.成功は人の強みから生み出される
人間は、どうしても自分ができないことに目がいきやすい。あの人と比べて、自分はなんでできないんだろうか、と思ってしまったり。
筆者は「キャリアの成功は人の強みによって生み出され、弱みからは生まれない」と主張する。
キャリア戦略とは、その人の目的達成のために、その人が持っている特徴を認識して、その特徴が強みに変わる文脈を探して泳いでいく、その勝ち筋を考えるということ。
まずは、自分の特徴や、その特徴を強みとして発揮できる文脈を見つけることが第一歩になります。
弱みの改善ではなく「強みをどう伸ばすか」という価値観を持って、ひたすら自分の特徴と強みをみつけて、磨くプロセスが大切になりそうです。
3.自分の強みをどう知るか
「自分の強みが、自分でもわからない」ということはよく聞く話。
本当に強みのない人もいるかもしれないが、ほとんどの人は、自分で強みとして認識していないことも多いものです。
筆者は「強みは必ず好きなことの中にある」という。
ビジネスパーソンの基礎能力をベースに3つのタイプに分けて、自分の強みを探すヒントを提示しています。
T(Thinking)の人:考える力 ⇒ 戦略性が強みになる
C(Communication)の人:伝える力 ⇒ 人とつながる力が強みになる
L(Leadership)の人:変化を起こす力 ⇒ 人を動かす力が強みになる
自分は、どちらかといえば「Tの人」かもしれませんが「戦略性が強み」と言われると、少しこそばゆい気もしますが・・。
そして、できるだけ早いうちに自分の強みを知り、スキルを高める挑戦を意図的に選ぶ旅を始めるべき、という。「強みを磨くプロセス」を早く始めることで、自分の強みをさらに尖らせることができますね。
4.自分をマーケティングする
周りからどういうふうに見られたいか、という質問への回答と同じかもしれませんが「自分のブランディング」が大切。
「キャリアとは、自分をマーケティングする旅である」というフレーズがマーケティングの専門家らしい。
キャリアの設計図は「自分のブランド設計図をどうつくるか」ということに近いのかもしれませんね。
自分の軸をしっかり持ってキャリアを歩むことで、その設計図を完成させていきたいものです。
最後に。
読了して思うのは、筆者はキャリアに対しても「本質的であろうとするアプローチ」や「ロジカルさ」を求めていること。
一気通貫した信念を感じて、しっくりくる部分もあれば、キャリアという曖昧なものに、そこまでロジカルを求められると、ちょっと息苦しさを感じるかも・・。
キャリアを生き方を含めた「ライフキャリア」と考えると、実際にはロジカルに思いどおりにならないことも多いかな、と。
まあ、自分がそこまでロジカルな人間ではないから、そう思うのかもしれませんが。