carbon13

マンガとアニメを見るオタクです

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好きな漫画の好きなシーンTier(carbon13編) 2024年

Tier 3 「ケモ夫人」藤想 1巻 1話 「これで巨人を討伐してください」 コメント: ケモ型の夫人が無から現れた存在に討伐を急に依頼されるという漫画史全体で見ても斬新すぎるスタート。 「BLAME!」二瓶勉 6巻 Log.37 p187 - p197 エレベーターで六千七百八十キロ移動するシーン コメント: エレベーターの乗務員、BLAMEの世界観ではめちゃくちゃおしゃべり。 「逃げ上手の若君」松井優征 13巻 第110話 「先代」の天下人の跡継ぎで 「当代」

    • この槍を彼女に撃ち込むと 最終回

      「行きたくないところがある。それが旅の目的なんだ」  彼女は山岳の裾野でそう言った。旅館を出て、バスで30分移動する。そこからさらに10分ほど歩いた。  山の道はまるで地震が起きたかのように荒廃している。よっぽど使われていないのだろうと思った。  森の中に、5mくらいはある木製の鳥居があった。山の神に不敬にならないように、鳥居の端を通りすぎる。山には、樹木と墓があった。墓場は斜面にへばりつくように少しだけあった。斜面の一番上には僧侶の小屋があった。  鹿よけ用の網を外して入

      • この槍を彼女に撃ち込むと 7

         マネージャーが君を紹介する。君は、居酒屋の薄暗い人工的な光の灯るカウンターの奥で、まるで子供のように現れた。  皆が忙しいと思いながらジョッキを一度に10杯も運んでいる途中で、空気を読めずにトイレに行ってしまう。足運びは不安定でジョッキをいつ溢すかわからなかった。その心配をよそに、自分は人並みに働いているという風な顔をしている。そのことを腹立つと言う人もいた。  私は丁寧に仕事を教えた。君の物覚えは良い方だったと思う。  君はある時酔っ払いにクレームを入れられていたね。ここ

        • この槍を彼女に撃ち込むと 6

           圭介は彼女と旅行に行くことにした。とはいえ、一泊二日の箱根旅行である。圭介は遊園地でも行った方が楽しいのではないかと思ったが、彼女の熱烈な希望で近場で済ませるということになった。  新幹線の車内は満員だった。二人が座った席の隣にもう一つ椅子があって、そこにフィクションの老人みたいな髭を生やした老人が座った。 「おじさんはどこにいらっしゃるんですか」  彼女が聞いた。彼女が旅の道中で行き合った人との会話を楽しむタイプの人間だということに圭介は驚いた。老人はしばしゆっくりと

        好きな漫画の好きなシーンTier(carbon13編) 2024年

          この槍を彼女に撃ち込むと 5

           小野田は圭介の通っている学部の修士学生だった。彼にも彼女がいて、圭介はそれを一度だけ見たことがあった。小野田の彼女は無限に延長のある牛丼屋で働いていた。  小野田はその時いなかった。松浦が同行者としていて、たまたま牛丼屋に経由して大学へと行こうとしていたところだった。  松浦はここは小野田の彼女が働いている場所だ、と一瞬で気づいて気まずい顔をした。こうして見ると、牛丼屋が本屋のBLコーナーのように居心地が悪いように思われてきた。 「まあ小野田さんの彼女がいるとは限らないじ

          この槍を彼女に撃ち込むと 5

          この槍を彼女に撃ち込むと 4

           商店街には、潰れた店と閑古鳥が半分ずつある。彼女の家に近い方の端から、大学に近い方の端までおよそ500m。その中間地点に喫茶店セオリーがあった。  松浦は急いで圭介の家をさった後、全身から滝のような汗を流した。家の中では平然を装って普通にしていたのだが、家から出て三分ほど歩いたところで、自分の命が危なかったことを思い出し、自分が存在していることを確かめた。  圭介の彼女は、一番恐ろしかった。南米でジャガーと対峙した時、韓国で100人のキリスト教徒と組手をした時より恐ろしかっ

          この槍を彼女に撃ち込むと 4

          この槍を彼女に撃ち込むと 3

          「おい、圭介」  大学で唯一喫煙が許されている場所で話しかけられた。サークルの先輩の松浦だ。  松浦は水色の珍妙な頭をした男で、町田の居酒屋でワインボトルを一気飲みしたことで学部の英雄となった。留年生にもたいへん尊敬されている。   「お前にも彼女ができたんだって? いいじゃないか。男として一皮剥けたって感じだ」 「いやいや。彼女がいると大変ですよ」 「メンヘラか何かか? そういう時はビシッとやらんとあかんぞ」 「そういうわけではないんですが」    コーヒーを飲み干してか

          この槍を彼女に撃ち込むと 3

          この槍を彼女に撃ち込むと 2

           彼女は、次の日平然と大学に来ていた。「生化学の講義は出席しないとテストの点数から差し引かれるから」と彼女は言った。  圭介は槍を彼女に差し込んで、血を流しているところをよそにそのまま帰宅したのだった。怖くなって、思わず目の前の惨状を無視してしまった。思えば、圭介の人生にはそういうのしかなかった。  彼女は体にいかなる傷もなく、そしていかなる動揺もなかった。圭介の方が動揺していた。変わらないものはあると、彼女はホートンを手に持って言って、普通にその日の化学の内容を読み始めた。

          この槍を彼女に撃ち込むと 2

          この槍を彼女に撃ち込むと

           この槍を彼女に撃ち込まねばならない。「槍」とは言うが普通の槍ではない。丈の半分が竹製の持ち手である。先端はまるで今熱されているかのような鈍い赤色で、返しがいくつかついている。これを差し込むと、獲物に上手く絡みついて引き抜けないだろう。  これを彼女に撃ち込まないといけない。その理由は定かではない。しかし圭介はそれを直感した。  圭介が大学2年の春、人生で初めての彼女を作った。アルバイト先でたまたま同じ大学であることを知った女性だった。なぜか圭介の方に積極的に絡んできて、素

          この槍を彼女に撃ち込むと

          混沌と一人で戦う男

          テムテムアニメ、めちゃくちゃいい。 テムテムアニメとは、YouTubeで定期的に投稿される短編アニメのことだ。最近暇つぶしによく見ている。すでに200話以上の動画が投稿されており、かなりの数再生されている。 特徴的なのはその話の構成だ。200話以上あるのにもかかわらず、話のほとんどが「主人公である滝社長がお金を減らそうと目論むも、因果関係が不明な現象に遭遇し、失敗する」というものだ。滝社長は一億円など端金レベルの大金持ちで、自分が大量の金銭を保有していることに嫌悪感を抱いて

          混沌と一人で戦う男

          記 2023/11/27 終わりたくねえよ 泣くな白けちまうだろ

          今週の呪術廻戦めちゃくちゃいい。どのくらい良かったというと少女終末旅行と宝石の国に並ぶ。この2つは私の好きな漫画tier1で、今週の呪術廻戦は作品全体じゃなくてパートだけで言ったらそれらを超えるくらい良かった。パートだけで言えば、今際の国のアリスでアリスが全てのデスゲームを仕掛けた黒幕に「ただの中間管理職だろ?」と言うシーンやネウロでヤコが電人HALのパスワードがわかった理由を説明するシーンなどが好きだが、今週の呪術廻戦はそれくらい良かった。 何がいいって、何千年にも及ぶあ

          記 2023/11/27 終わりたくねえよ 泣くな白けちまうだろ

          第15.5回サイゼミにはりが感想回参加記録 7/23

          ※ ネタバレは書かないつもりですが、匂わせる描写があります。 @lw_ru 氏が開かれたサイゼミのにはりが感想回に参加して来ました。Discordで開かれたので参加しやすく良かったです。 にはりがは正式な名を「席には限りがございます!  ~トラックに轢かれてチート能力を手に入れた私たちは異世界転移を目指して殺し合います~」といい、Vtuberや新海誠のブログで有名なLw氏が執筆した小説です。 Lw氏は小説を執筆した後にフィードバックを得るための会を開くことで知られていま

          第15.5回サイゼミにはりが感想回参加記録 7/23

          著者で見るSCP(EN編)

          これはなかなか知られていないことかもしれませんが、SCPにはそれを書いた著者が存在します。この記事では、面白い記事を読むためのコツとして「著者から記事を選ぶ」を提案します。 ありとあらゆる物事がそうであるように、この方法にはメリットとデメリットが存在します。メリットは、自分の趣味に合う記事を書いた著者は次も同じテーマで書くことが多いことです。また、作者にしか出せないシリーズ作品やカノン作品があるならば、その著者に注目するのも良いでしょう。一方で、一つの著者だけではSCPの世

          著者で見るSCP(EN編)

          プラトン『国家』がまどマギと同じという話をしたい

           タイトル通りです。プラトン『国家』と魔法少女まどか☆マギカのアニメ版の物語の構造は、世界観とその提示の仕方について類似性を見出すことができると思います。その話をしたくてたまらなかったのですが、あらゆる人に話しても全然共感を得られなかったので、今からその話をします。この話をしたいと思った私にはいくつかのハードルがありました。そもそも国家がよくわからない書籍だし、それとまどマギの関係性を見出しているのはめちゃくちゃです。  まず国家ですが、プラトンという名前を見て、岩波文庫の

          プラトン『国家』がまどマギと同じという話をしたい

          キドナプキディングの遠と盾

          キドナプキディングが良かったという話をします。ネタバレを容赦なくします。 良く言うのが、西尾維新の主人公は世界に絶望を抱えており、腐れ縁のヒロインが存在し、唐突に現れて物語を終局に迎えさせる《敵》がいるということです。割とそんなことはないと思いますが、キドナプキディングの主人公とヒロインの関係性はそのような雰囲気漂う西尾維新作品の中でも強烈な新しさを放っていたと思います。 このインタビューにも嘘は無いと思います。 玖渚盾と玖渚遠です。二人は従姉妹で、盾から見て母の兄が遠

          キドナプキディングの遠と盾

          ゲーミング自殺、16連射アルマゲドン 傲慢な終末 〜すめうじと並べて〜

          「ゲーミング自殺、16連射アルマゲドン」(以下、公式の略称に従って「ゲーマゲ」と呼称)は、2022年10月22日から12月31日にまでインターネット上の小説投稿サイトアルファポリスで連載されていた小説である。作者は前作、前々作で「Vだけど、Vじゃない!」(「VV」と呼称)「皇白花には蛆が憑いている」(「すめうじ」と呼称)を連載しており、本稿では主にゲーマゲと作風の似た後者を取り上げる。さしあたっては、アルファポリスにおける作者のページを挙げるので、未読の方が居られたらそちらを

          ゲーミング自殺、16連射アルマゲドン 傲慢な終末 〜すめうじと並べて〜