21/1/5 「ハーゼンヒュットルの策」サウサンプトン対リヴァプール PL第17節マッチレビュー~元野球人のサッカー観戦記第4試合目~

こんにちは。連続投稿が終わりました元野球人です。

本日は、勝ち点26で9位のセインツと勝ち点33で首位のリヴァプールの試合です。

「アルペンのクロップ」という異名を持つセインツ監督のハーゼンヒュットル。本人はそのニックネームを好まないらしいのですが、クロップに憧れていること、クロップのサッカーが今の自身のサッカーに大きな影響を与えていることを、2018年にセインツの監督に就任した際の会見で話したそうです。

その言葉の通り、今季のセインツはクロップの武器であるトランジションや組織的なプレッシングを武器にプレミアリーグで躍進しています。

そんな両者の試合を個人的には楽しみにしていました。実際に、とてもエキサイティングでインタレスティングな試合になったと思います。

今回は、試合の中でより頻繁にみられた「リヴァプールのボール保持に対するセインツの守備」に着目していこうと思います。

会場はセインツのホーム、セント・メリーズ・スタジアム

〇スタメンと試合概要

・スタメン

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セインツは、スコアレスで引き分けた前節のウェスト・ハム戦から3人のスタメン変更。ヴぇスターゴーアとレドモンドは引き続き欠場。加えて、GKのマッカーシーがコロナ陽性、ロメウとアダムスは怪我で欠場。

OUT:マッカーシー、ロメウ、アダムス

IN:フォスター、ディアロ、アームストロング


対するリヴァプールは、3人の変更。相変わらずCBの台所事情が厳しい状態である。チェンバレンやティアゴのスタメン起用が可能になったからか、相手がセインツで素早い判断が求められるからか、フィリップスではなくヘンダーソンがCBでスタメン起用となった。

OUT:フィリップス、ミルナー、ジョーンズ

IN:ティアゴ、ワイナルドゥム、チェンバレン

・試合概要

 先制点はセットプレーから。抜け出したイングスがループシュートを放ち、2分にセインツが先制する。その1点を守り切ったセインツが首位リヴァプールに1-0で勝利。

 リヴァプールは立て続けに攻めるも精彩を欠き、セインツの守備や、審判の判定にも苦しめられた。特にセインツの守備は、よく走り、サボらず、コンパクトで、中央に侵入してくるボールを跳ね返し続けており、非常に強固なものであった。

〇ハーゼンヒュットルのリヴァプール対策

 個人的な印象だが、リヴァプールは質の高いロングボールをけれる選手はいるが、その用途は、DFラインの裏を取りGKとの1対1を演出するためというより、サイドチェンジのために使われることが多い。素早いサイドチェンジから、強力なウインガーの個人技やフィルミーノとのコンビネーション、駆け上がってくる攻撃性能の高いSBを使うことが、彼らの大きな武器になっている。ハーゼンヒュットルがそれに対してどのようにプレスを仕掛けたかをみていく。

・サイド圧縮プレス~前半20分45分からのシーン~

 ウォードプラウズとディアロの左右が入れ替わっているが、このシーンが非常にわかりやすいシーンなので、是非観ていただきたい。

 リヴァプールのボール保持時の配置は、主にCBとアーノルドで3バックを形成する。大外にはRIHのチェンバレンが流れ、サラーが内側に絞っていたことが多かった。その時の左サイドは、ロバートソンが大外で高い位置を取り、マネが内側に絞っていた。LIHのワイナルドゥムは、DMFのティアゴと2ボランチのようなポジション取りをしていた。

 それに対しセインツは、CBが中央でボールを持っている際、2トップで相手のボランチへのパスコースを消し、SHはSBをみつつも内側を通されないように内よりのポジショニング。ボールサイドよりのCHがボランチをみにいくようにしていた。

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 CBからアーノルドもしくはロバートソンにボールが入ると、セインツのプレスが開始する。今回は20分45分からのシーンと同様にアーノルドにボールが入った時の説明をする。

 アーノルドに入ると、SHのジェネポがアーノルドにプレスをかける。もう一方のSHは、さらに内に絞り、ワイナルドゥムをマーク。ボールサイドのトップの選手がアーノルドからティアゴへのパスコースを消し、もう一方のトップが2人のCBをみる。こういった形で同サイドの大外以外にパスコースを消し、その選手にボールが入ると、SBがすかさず出ていき、SHとボランチの3人で囲い込み、ボールを奪取する。こうしてSBにサイドチェンジをさせることを許さなかった。この形が左右どちらでも起こっていた。先制点のきっかけとなったファールも、このプレスでボールを奪った直後だった。

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 このプレスは画像の通り、3トップとDF陣がそれぞれ1対1になってしまうので、能力の高いバックスを必須とするが、その要求に応え、タスクを完遂したこの試合の彼らは見事であった。

 最後に特筆する点は、このプレス時における非ボールサイドのCHの位置である。セインツは、先日のシティ戦でロングボールのこぼれ球を、ハイプレスで広がったバイタルエリアで拾われ、失点するというシーンがあった。

 リヴァプール戦では非ボールサイドのボランチをアンカーのような立ち位置にすることによってバイタルエリアをケアできていた。また、このポジショニングによって、最終ラインのヘルプにもすぐ行くことができ、降りてくるフィルミーノへの対応も可能にした。

 以上がハーゼンヒュットルが講じた策であった。

〇終わりの一言

 リヴァプールはこれで3試合未勝利となってしまった。その間1得点と得点力不足に悩まされている。セットプレーでオフサイドが取れないなどらしくないプレーがみられた。後半からはヘンダーソンがサイドチェンジをするなどサイドを大きく使い相手を押し込んでいたが、この日のセインツの守備を貫く精彩さはなかった。同じやり方でも、昨シーズンの序盤のようなノリノリの状態だったら結果は変わっていたがもしれないが、相手をおびき出して前線のポストプレーを使って選手を追い越させるなど、ほかにやり方はあったように思える。クロップがどういう策を講じるのかに注目だ。

 5試合ぶりの勝利となったセインツ。試合終了直後のハーゼンヒュットルの涙は印象的であった。憧れのクロップ相手に自分たちのサッカーで挑み、勝利したことがどれほど嬉しかったかが伺える。こういった勝利がいい流れのきっかけとなることは多い。次のリーグ戦も強敵であるレスター。ここでも勝利し、波に乗りたいところ。

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