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朝ドラと傾聴

「◯◯さんが来るの待ってたのよー!」と
満面の笑みで、患者さんのお母さんが、
玄関を開けてくれる。
娘さんが生まれつきの難病で、今は、20歳を越えている。つまり介護は20年以上だ。

「◯◯さん、坂口健太郎のファンて聞いたんだけど、朝ドラ観てます?」

「観てますよー。あっ、でも、私が一番好きなのは、岡田健史君ですよ、念のため。」

「私、もう菅波先生にハマってて、家で、ひとりで騒いでるから、家族が呆れて、話しを聞いてくれないんですよ。」

「菅波先生は、好きです、とっても。」

「私なんて、菅波先生をうちの1番上の娘の婿にしたいくらい。あっ、でも、あくまでも『菅波先生』であって、坂口健太郎ではないのよ。」

「なるほど、坂口健太郎じゃなくて、『菅波先生』なんですね。」

この会話に出てくる朝ドラ、昨年の『おかえりモネ』の事である。「菅波先生」は、坂口健太郎演じる呼吸器内科医。都内の大学病院で勤務医をしながら、登米の診療所でも訪問診療をはじめる。独特の感性の持ち主の事。奥手な感じ、モネちゃんの鈍感さとの相乗効果で、母性本能をくすぐる役である。

「海辺で再開した時、(コロナで)2年も会っていなかったのに、ハグだけ??  普通なら、チューするわよね。そこが『菅波&モネ』なんだけどさ。」

「NHKの朝ドラだから、あれ以上の表現はしなかったんですかね。あの年代のカップルにしては、さっぱりした関係ですものね。昼ドラだったらどうなんでしょうね。」

「番組は終わったけど、ネットで、『菅波とモネのその後』とか、妄想ストーリーが出ていて、それを読むのにハマってる。」

「凄くわかります。私の好きな岡田健史君のデビュー作、『中学聖日記』も、ドラマ終了後、『その後』を妄想して、色々な人がお話しをTwitterとかインスタに投稿してて、探して読むの楽しみでしたもん。」

「ですよねー。NHK、スピンオフドラマ作ってくれないかしら〜。」

…と、このお母さん、私がバイタルサイン測定していても、吸引していても、入浴介助をしていても、ずっと話している。

『傾聴』。訪問看護では、訪問時間の7割、介護者の相談や話を聞くということもある。介護者が会話をすることで、人や日常を感じ、社会との繋がりを実感することができる数少ない場となっている。
『普通の会話』をすることも、訪問看護の重要な仕事のひとつなのである。

しかし、朝ドラ、面白い。
今期の「カムカム〜」の脚本もたまらない。
今日の午後の訪問予定。
このお母さんとまた、
今期の朝ドラ談話を楽しみにしている。

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