初めての中国旅②:空気環境を巡る考察
こんばんは。いかがお過ごしでしょうか?前回に続き初めての中国旅②として、空気環境を巡る考察について書いてみます。
以前にもいくつかの記事で触れていますが、私は海外に行った際にその都市の大気汚染指数(AQI)を確認するのがクセになっています。
US AQIレベル (大気汚染指数)
今回の中国での仕事では、広州、北京、上海などといった大都市をはじめ、いくつかの街を巡り、都市ごとに異なる空気環境を体感しました。特に天津と北京では空気の悪さが印象に残り、環境問題の一端を強く感じる機会となりました。
中国での空気環境の実態
天津では大気汚染指数(AQI)が188と、「健康に有害」とされるレベルでした。PM2.5やPM10の値が高く、空気の質が非常に悪いと感じたため、私はマスクを着用して過ごしました。しかし、意外なことに天津の人々はほとんどマスクをしておらず、現地での慣れや健康意識の違いを感じました。北京でも空気の状態はあまり良くなく、朝などは視界が霞んでいましたが、日中は晴れて視界もよく政府の対策により過去に比べて改善が進んでいるのだろうとも感じられました。
一方で、以前訪れたハノイでは多くの人がマスクをしているのが一般的でした。バイク利用が多く、排気ガスや埃が日常的な問題となっているため、個人レベルでの対策意識が高いようです。この違いは、各都市の環境や文化が健康への意識に与える影響を物語っています。ちなみに中国では電動バイクが非常に普及していました(EVも)
インドとの比較
中国で感じた空気の悪さを、以前冬に訪れたインド・ニューデリーと比べると、天津や北京の方がまだマシだと感じました。ニューデリーでは農地の焼き畑や交通量、工業排出の影響で、AQIが「非常に危険」なレベルに達することもあり、空気の重さや視界の悪さが際立っていました(早朝の霞が強い時には、前のテールランプを見るのがやっとレベル)。それに比べると、中国の空気は「中程度の汚染」であるものの、まだ耐えられる範囲に思えました。(マスク必須で、屋外には出来るだけ出ないようにはしますが)
中国が未だ空気環境が改善途上にある事情の考察(5つ)
1. 石炭の依存
中国のエネルギー事情: 中国全体で依然としてエネルギーの約60%が石炭に依存している。特に寒冷地域では、冬季になると暖房の需要が増え、多くの地域で石炭を燃料とする集中暖房が使用されます。これがPM2.5やその他の大気汚染物質を発生させます。エネルギーの石炭依存という状況は、日本の化石燃料依存(石油+石炭による火力発電)と同様ですね。
産業の影響: 鉄鋼や化学工業といった重化学工業が発展している都市では、大量の石炭を使用し汚染物質を排出します。
2. 自動車の排気ガス
自動車の数が年々増加しています。車両が排出する窒素酸化物(NOx)や揮発性有機化合物(VOCs)は、大気中で光化学反応を引き起こし、PM2.5やオゾン汚染を悪化させます。自動車やバイクの電動化で都市圏での排気ガスは減っていると想像します。
3. 冬季の天候条件
冬季には、北部の地域で寒さのために暖房需要が高まり、石炭の使用が急増します。
また、冬季の大気の流れは停滞しやすく、**逆温層(気温が高度とともに上がる現象)**が発生しやすいです。これにより、汚染物質が地表付近に留まりやすくなります。
⇒冬にニューデリーやハノイに滞在した経験からも、実感があります。
4. 建設活動や粉塵
都市開発やインフラ整備のために建設活動が活発です。これに伴い、工事現場からの粉塵(PM10)が発生し、大気汚染に寄与しています。
5. 政策の進捗状況
中国政府は大気汚染対策として、「大気十条」などの政策を進めており、一部の都市では改善が見られます。しかし、産業都市では、経済活動とのバランスを取る必要があるため、完全な改善には至っていません。
さらに、規制が強化されても、一部の企業では基準を満たさない運用が行われるケースもあります。
今後の展望
中国政府は「2030年までに二酸化炭素排出量をピークにする」という目標を掲げているそうです。
日本に帰国して感じた空気の良さ
日本に戻り、今日東京のオフィスに出勤した際、日本の空気の清潔さに改めて気づきました。中国やインド、ベトナムでの経験を経たことで、日常的に吸う空気の質が、生活の快適さや健康にどれほど影響を与えるかを再認識しました。日本の都市部は緑地や清掃活動がしっかりしており、空気環境が比較的良好であることがありがたく感じられます。
まとめ
今回の中国旅を通じて、空気環境が生活や健康に与える影響を実感すると同時に、各都市ごとの文化や意識の違いを学ぶことができました。中国の広大さや発展の速さに感銘を受ける一方で、環境問題が依然として解決すべき大きな課題であることも明らかです。また、その他アジアの国や日本との比較を通じて、空気の質が人々の生活の中でどれほど重要な役割を果たしているのかを改めて認識することができました。これからもこうした経験を生かして、環境について考え続けていきたいと思います。