青いケツと黒い腹
「北新地」
此処は西日本最大級の歓楽街と言われ、
煌びやかな女性と裕福な男性諸君が、
狐と狸の騙し合いを繰り広げるのであった。
本日のターゲットは、
年齢21歳にして億ションを保有し、
親の財産を仮想通貨等で更に膨らませ、
悠々自適に過ごす。
一度も定職に就いた事などなく、
自信過剰で勘違い甚だしい彼は、
無意識に人をイラつかせる事にかけては、
誰よりも卓越していた。
そんな彼が付き合っている彼女・・・
だと自慢するのが某クラブのママ(36)であった。
年の差15歳、
まぁ、この世界ではおじさんが若い彼女と付き合うのはよくある光景だが、このパターンは少し珍しい。
そもそも20歳そこらのケツの青いガキが出入りする街ではない。
しかし、お金さえあれば年齢など関係無くチヤホヤされる街。
彼も当然、例外ではなかった。
足繁く通い10万以上のお金を
毎晩、彼女の店に落とす。
イベントや彼女の誕生日ともなると100万以上使うのだろう・・・
北新地のクラブでママを務める彼女に、
変な恋愛の噂が広まっては大変だ。
彼女の口から決して付き合ってる事は口外するな!
と言われ頑なにそれを守る青年。
健気だが、そこがまだ若い。
お金を使う覚悟があり、
周知の事実を作ってしまえば、
他のおじさんが寄り付かなくなり一人勝ち出来るものを・・・
青年は彼女の為を思い背伸びして大人になり、
言い付けを守った。
そして、もうひとつ。
この世界ではよく聞く話だが・・・
お金のある人は、他所の店にも飲みに行く。
当然、お金を使うものだからモテる。
なので、そのママは彼氏が他の店に行って
悪い虫が付くのを嫌い、
他店への利用を制限する事が多い。
と言うのは建て前で
、
本音は他所でお金使われるのが腹が立つだけ。
もちろん上客を取られるリスクもあるが、
だいたいお金が絡んだ欲深いヤキモチを妬いて激怒する。
彼も当然、例外ではなかった。
友達の付き合いだろうが何だろうが、
他の店に行ったと聞くと彼女は激しく嫉妬して怒った。
唯一許されるのはそのママの親友のお店だけ。
「アナタが行って良い店は2軒だけ!」
激しく怒る彼女を見て青年は言った。
「僕は今まで親にも怒られた事がない・・・
こんなに真剣に叱ってくれる女性は初めてだ」
・・・ダメだ。
終わってる・・・
世も末だ。(笑)
考えうる限り一番アホな回答だ。
叱ってるのではない。
お前のお金が他所に流れて、
自分の売上が減るから怒っているのだ。
親の愛情を受けずに、
甘やかされて育った末路がコレなのか・・・
お金があるから周りは言う事を聞く、
愛を知らず勘違いして育った、
世間知らずの彼はとうとう暴挙に出た。
「彼女と結婚しようと思って1000万円の指輪を買って来ました」
・・・ダメだ。
その1000万円ドブに捨てた方がマシだ。
そこにいる人全てがそう思った・・・
が、親友の彼女が笑顔で青年を煽る。
「へぇ……きっと喜ぶと思うなぁ〜」
青年の良くも悪くもピュアなハートに羽根が生え天高く舞い上がり更に調子に乗る。
バカと煙は高い所に登りたがるとは言い得て妙。
「いやぁ〜
1000万よりもっと頑張りたかったんだけどね」
すると親友の彼女はこう言う。
「それは婚約指輪、結婚指輪とはまた別だから〜〜 そっちはもっと高いの買ってあげたら」
・・・ダメだ。
妖怪に見えてきた。
もはや狐と狸の騙し合いですらない。
計画的に、狐が子ネズミを弄んでるだけだ・・・
これからプロポーズするらしいが・・・
果たしてどのような結末が待っているのだろうか?
きっと勘違い青年は
延命に継ぐ延命でカスカスに搾り取られた後、
今まで経験した事のない挫折感を味わう事になるのだろうが、
不思議と同情が沸いて来ないのは彼の人徳の為せる業だろう。
ケツノアオイ男もだが、
腹の黒い女も、良い人生は待っていないぜ?
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