15.がん治療でお悩みの方へ綴る《化学療法5》
化学療法が功を奏して癌も画像診断で消えていることがあります。それはもちろん、悪いことではありません。大切なことは、小さくなったり、見えなくなったとき、自分でどうするのか、です。寛解状態に入った場合も同じです。
三大療法では治癒を望めない。
でも小さくなったり消えたりした。
しかし、このままでは再発の機会は常にある。
死ぬまで再発の恐怖を抱え続けて生きなければならない。
堂々と受け入れられれば楽になりますが、それなりの覚悟は必要です。
生ききって、逝ききる覚悟。
それはまたの機会に。
以前、普通の抗がん剤は細胞分裂を阻止する=新陳代謝を阻止する=生存することを阻止する、と書きました。がんではない皆さん、どうしてがんにならないのかはご存じですか?
対がん免疫という、白血球の中に特殊部隊がいるからです。数えると分かりますが、とんでもない数が血液中を流れています。世界の首脳が集まるサミットでは周囲が厳しく警戒されます。出会う人は軒並み警官やSPに出会うし、パトカーや
覆面パトカーも凄い数。そこでひったくりができますか? それくらいのセキュリティレベルと思っていいでしょう。
更に、元々がんになりかけていると気づいた細胞は、自ら死するアポトーシスというシステムを遺伝子に組み込んでおり、それを自ら発動して自死を選ぶのです。ミスった細胞が自死することで人体は生かされているのです。受精卵が人体になる過程でも増殖と自死が繰り返されているのです。凄いですよね。神秘ですよね。神業ですよね。人体の存在と営みは神業なのです。解剖学をそのような視点で見ると1つの細胞に神が宿ることに気づくでしょう。
ド根性で変異しながらも生きようと自死できなかったがん化細胞は白血球の特殊部隊により殲滅される。そんな感じです。この特殊部隊をNK細胞(ナチュラルキラー細胞)、Killer-T細胞(キラーT細胞)と一般的には呼ばれています。
ですから、論理的には通常のシステムでがんになることは極めて困難なのです。なのに、生涯で2人に1人はがんになる計算になっている。何ががんになることをを許しているのか? 遺伝子の問題であったり、環境因子であったりしますが、根本はご自身の自然治癒力に他なりません。不摂生やら働き過ぎなどで治癒力を損なってはいませんか? ということで、発がんするということは、それだけセキュリティレベルが落ちている、ということになります。
ですから、先ずは発がんを許した自身の生き様の結果であると認識するところへ視点を移動する必要があります。違うかもしれないけれど、そう認識するところから始まるのです。
さて、抗がん剤で腫瘍が小さくなったり、消えたとします。その時に再発を防止できるだけの対がん免疫の能力を発揮できる状態ですか? 治癒力を発揮できる状態ですか? そこが重要なのです。
抗がん剤で治癒は望めないのであれば、残りを殲滅できるのはあなたの力しかない。そこを忘れてはいけないのです。主治医はそこまで考えてものを言いません。いや、言えません。考えたことがないから。考えるきっかけすら持っていないから。もし患者側からそんなことを言えば馬鹿にされ、一笑されて終わります。だからこそ、引き際が重要になります。医者はそう簡単に引きません。しつこく「抗がん剤の引き際」と言う理由は、抗がん剤で体力の殆どを消費した状態で対がん免疫をどこまで発揮できるのかが問題だからです。
しつこく書いてますよね。引き際が大事ですよと。しつこいですねえ。何度書いても、どれだけ伝えても、引き際を主治医に任せてしまう。その引き際はプロローグで書いた若き三児の母のように死の寸前まで主治医に引っ張られると手遅れになりますよ、と。でも、その引き際の目安は医学知識がないと見極められません。だから私のような医師がいると思っています。
すべき事が分かれば人生をかけて主治医と対峙できるようになると信じています。実際にそうされた方は数多くおられます。まな板の鯉で自分の人生は開かないからです。
あと、よく主治医から「このような治療法がありますが、ご家族で検討して行うかどうか決めてきてください」と言われることがあります。この意味、正確に理解されてますか? そもそも、素人に判断できる案件ですか?
医者は知っているのです。
どちらを選ぼうと結果が変わらないことを。
であれば、家族が納得できる方法を決めてもらって、それを実行してあげようという情けです。悪い言い方をすると主治医の治療放棄ですね。もし上記のことを言われたら、意味を理解して下さい。でも、選択肢を与えられたら堂々と断ることができるチャンスと捉えることもできます。
…つづく