見出し画像

方程式18 言葉を紡ぎ出すバックボーンは、まるで連想ゲームの積み重ね

経験したくて異動した編集の仕事だったが、
頭の片隅では、「クリエイティブな仕事は右脳が発達している人に向いている仕事。おもしろいけど、最終的には、体育会系の僕には合わないかもしれない」と不安もよぎっていた。

そんな時に出会ったのが、サカグチケンファクトリーというデザイン会社を経営するサカグチケンさんと林田辰也さんの2人。

キャンパスマガジン『Kiッカケ』のリニュアルで、アートディレクターをサカグチケンさんに、副編集長を林田さんにお願いしたのだ。

編集会議を重ねる中で、
企画を構築するロジックや言葉を紡ぎ出すバックボーンには、
マインドマップのような膨大な骨組みがあることを知る。まるで連想ゲームの積み重ねだ。

最終的な仕上がり、つまり読者が見ている表現だけを見ると、構図や骨組みが後ろに隠れているので、発想がジャンプアップしたように見える。

この緻密で、めんどくさい作業をひとつひとつ機を織るように繰り返していくと、僕のような編集初心者でも80点くらいの出来栄えに仕上がってくる。

企画や編集は、ロジックがしっかりしていれば及第点が獲れることを林田辰也さんとの仕事を通じて学ばせてもらった。

しかし、どうしても90点以上は取れない。
論理を積み重ねて80点まで到達しても、サカグチケンさんが創るデザインのように、林田辰也さんが発するコピーのように、最後の表現で90点までジャンプアップできないのだ。

僕のようなビジネス系人材が、草木の根を張り、幹を太くし、枝を伸ばす。
しかし、その先にどんな花が咲くかはクリエイターの領域。
その花が多くの人の心を動かす力となる。

おそらく、作家と編集者、ミュージシャンと音楽プロデューサー、映画監督とプロデューサーの関係もそうだろう。

丸投げでは当然ダメ、かといって口出ししすぎてクリエイターの才能を閉じ込めても良くない。

マーケットと向き合い、ユーザー価値を整理し、
ビジネス的な落とし所を論理的に構築し、
制約条件をまとめ、八合目まで一緒に登ったら、
最後の表現はクリエイターにお任せする。

ビジネスとクリエイティブをつなぐプロデューサーの仕事の領域やバランス。
その両生類としての価値や役割をあらためて認識する。

これなら、僕にもできるかもしれない。

この時、樫野孝人28歳。
これがプロデューサーの道に進む起点だったと思う。

楽しんでもらえる、ちょっとした生きるヒントになる、新しいスタイルを試してみる、そんな記事をこれからも書いていきたいと思っています。景色を楽しみながら歩くサポーターだい募集です!よろしくお願いします!