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ヒトのゲノム編集の可能性と危険性

遺伝子の情報を書き換えたい」とか、「ゲノムを編集すれば万事解決!」とか、ヒトのゲノム編集が生み出す未来が楽しみな皆さん、こんばんわ🐼

2018年に中国の研究者が世界初のゲノム編集された双子の誕生を発表しました。遺伝子の情報を意図的に編集することで、思い通りの遺伝子特性を持ったヒトを産み出すことが可能になっています。

現在でもヒトのゲノム編集技術は倫理的な議論を呼び起こしつつ、医療分野での応用に向けて着実に進展を遂げています。

HIV治療やがん、血友病などの遺伝性疾患に対する新たな治療法の開発が進む一方で、技術の適切な利用に関する国際的なルール作りが求められています。

ゲノム編集の倫理的課題

ゲノム編集技術の発展に伴い、倫理的課題についても話題になります。

特に遺伝子情報の中でも生殖細胞系列での使用は、次世代以降の人類に大きな影響を及ぼす可能性がありますので、慎重に進める必要があります。

主な倫理的懸念としては、

  • 人の尊厳

  • 優生思想や社会的差別

  • 次世代への影響

が挙げられます。

また、ゲノム編集技術の利用が、医療分野に留まらず、容姿や運動能力、知的能力の向上といった「エンハンスメント」に用いられる可能性も議論されています。

さらに、遺伝子技術へのアクセスの公平性や、ゲノム編集による遺伝的多様性の喪失といった社会的影響も懸念されています。

これらの課題に対して、遺伝子分野の研究者だけでなく、科学者、倫理学者、法律家、そして一般市民を含めた幅広い議論と論争、適切な規制の枠組みの構築が求められています。

ゲノム編集医療の事例①:HIV感染症の治療

CCR5遺伝子という3番染色体にある遺伝子は、HIV感染症の治療で重要な役割を果たしています。正式名称は「C-Cケモカイン受容体5型」です。

参考:ヒトゲノムマップ

HIVがT細胞やマクロファージに感染するには、細胞表面のCCR5タンパク質が必要となります。そして、CCR5-デルタ-32と呼ばれる遺伝子変異を持つ人はHIVに感染しにくいことが知られています。

このため、HIV患者のT細胞からCCR5遺伝子を破壊し、患者に戻す治療法が試みられ、一部の患者では症状が改善し抗HIV薬の服用が不要になりました事例があります。

さらに、CCR5変異を持たないドナーからの幹細胞移植でもHIV感染症の治療が実現した症例も報告されていて、HIV治療の新たな可能性が示されています。これらの研究成果は、ゲノム編集技術を用いたHIV治療の発展に大きな期待を寄せています。

ゲノム編集医療の事例②:アルツハイマー病の治療や予防

アルツハイマー病に対するゲノム編集技術の応用は、治療や予防の新たな可能性を開きつつあります。

理化学研究所の研究チームは、ゲノム編集技術を用いてマウスの特定の遺伝子領域を欠失させることで、アルツハイマー病の主要な原因物質の蓄積を抑制できることを明らかにしました。

原因物質の蓄積の抑制は、わずか34塩基の配列を欠失させるだけで良いことが判明しています。

また、ゲノム医療の発展により、アルツハイマー病の早期発見や個別化治療への道が開かれつつあります。

遺伝子検査によって遺伝性のアルツハイマー病を早期に特定し、適切な投薬を開始できるケースも報告されています。

さらに、アルツハイマー病の発症リスクを減少させる「APOE2」遺伝子の導入など、遺伝子治療の可能性も研究されています。

ゲノム編集の新手法:プライム編集

プライム編集は、DNAを正確に書き換えることができる革新的なゲノム編集技術です。

現在の主流であるCRISPR-Cas9システムでは、DNAの二本鎖を切断して編集が行われますが、プライム編集では二本鎖の切断が不要です。

この技術では、特殊な「プライムエディターガイドRNA」(pegRNA)と呼ばれる分子が使用されます。pegRNAは、編集したい遺伝子の位置を特定し、新しいDNA配列の情報を運びます。

編集の過程では、DNAの一本鎖のみに小さな切れ目が入れられ、その後、逆転写酵素という酵素がpegRNAの情報を基に新しいDNA配列を書き込みます。

プライム編集の利点は、DNAの二本鎖切断を避けることで望まれない変異のリスクを低減し、より正確な遺伝子編集を可能にすることです。

この技術は、遺伝性疾患の治療や農作物の品種改良など、様々な分野での応用が期待されています。

で、何が言いたいのかというと・・・

遺伝子はヒトなど生物の身体や性格などを形作る設計図ですので、ゲノム編集によって人間は、思い通りのヒトを作り出すことが可能になろうとしています。

しかし、ゲノム編集をしたヒトの子供や孫、その後の人類にとって、どのような影響を及ぼすのかについては未知数です。また、現代社会に適合した遺伝子情報を持ったヒトばかりが増えることで、将来の環境の変化に耐えられない可能性もあります。

医療分野での慎重な活用が進められる一方、美容や身体能力の向上などでも活用される可能性があり、私たちの日常が大きく変わっていくのかもしれません。

最後まで読んでいただいた皆さんは、忘れずに「いいね」と、コメント欄には「ゲノム編集をしてみたいですか?」について書き込みをしていただけたら嬉しいです。


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