バレエ感想⑪速水渉悟さんプリンシパル昇格おめでとう!柴山紗帆さんもおめでとう!
6/17 新国立劇場「白鳥の湖」感想
キャスト発表がされた際に真っ先に速水渉悟さんがジークフリートの日をブロックしました。くるみ割り人形、ニューイヤーバレエやフランツで美しいラインと若々しい快活さを見せてくれた速水さんがとても素敵で、ジークフリートデビューを楽しみにしていました。
客席は超満員。近くに座っていたお姉様方が話していたのですが、「速水さんが出るチケットはすぐ売れちゃう。彼が出る回は人気なの」だそうです。ダンサーの本業って踊ることですが、仕事として成立させるためには、チケットを売ることも重要。あの美しいラインやダンスに心惹かれるファンが多いのは納得ですし、それだけチケットを捌ける速水さん凄いなあ。
さて、舞台の感想ですが、新国立劇場のピーター・ライト版の白鳥の湖は王子の父である国王の葬式から始まります。泣き崩れた王妃、沈んだ顔の王子が棺の後を歩くのですが、黒っぽい衣装で照明も暗く、薄い黒幕が張ってあるのに、速水王子の格好良さが最初の瞬間から伝わってきます。スタイル良すぎ。ハンサム!ひゃー!かっこいい!!!
ライト版の白鳥の1幕では王子はあまり踊らず、ベンノが踊る場面が多いです。ベンノは前回の小野絢子さん奥村康祐さん回に続き、木下嘉人さん。こちらも明るくて快活で素敵でした。
面白かったのが、奥村王子の回では、お父さん的で長年王宮勤めをしているおじさん部下にしか見えなかった木下ベンノが、なんとこの速水さんの回では王子と同世代の友達のような親しい間柄に見えたこと。前回は長年の経験から全てを仕切る雰囲気でしたが、今回は本当に王子と同世代の元気一杯の若者にしか見えなかったです。
速水さんは父王の葬式後で沈んだ雰囲気を出しつつも、品の良さ、ノーブル感が滲み出ており、目を惹きます。動きはソフトで控えめなのに、ベンノに誘われて踊りの輪に加わると、一気にその場の主役が速水さんになります。パッと目が行く魅力がありました。髪を黒くしており、全く雰囲気が違う!よく似合う!
高級娼婦役の池田理沙子さんは娼婦というよりも、お兄さんの気を引きたい妹って感じでしたが、飯野萌子さんは色々な男性に目配せし、王子にも媚び売りまくって、商売女の雰囲気が出てました。
1幕のコーダは珍しく男性コールドのみ踊ります。推しの中島駿野さん発見。相変わらず長身で格好良い!この人ロットバルトもやってるのに、コールドもやってる!切り替え大変そう。そして中島さんだけでなく、俳優さんみたいにかっこいいイケメンがおる!誰だアレは!?
中島さんもかなり背が高いと思うのですが、他のメンバーも背が高い!日本で男性バレエダンサーは希少ですが、そこに長身というオプションが付くと、超希少種となります。それだけ貴重なダンサーダンサーがこれだけいて、しかもコールドにこれだけいるって新国立の層の厚さを思い知りましたし、きっと待遇もきちんと整備してるんだろうなと思います。吉田都さんさすがや…。
2幕は中家正博さん扮するロットバルトがまず登場。凄い存在感だし、立ってるだけで迫力が凄い。中家さん、前回のパンダメイクからラスプーチンメイク一本に絞ったんですかね。私はこちらの方が怖くて好き。パンダメイクはアダムスファミリーにしか見えないので。
オデットの米沢唯さん綺麗。細いのに力強く、足が強い!か弱い白鳥の姫を美しく演じてます。速水王子と、米沢姫の2人は背が高くて細いので、見映えがします。
コールドはやはり出てきた瞬間から、直塚美穂さんが綺麗。なんというのか、足の高さも腕の角度も周りと一緒なのに、首から肩にかけてのラインが綺麗で、上半身が1人だけすごく綺麗。2羽の白鳥の客席から見て左側の方が、手足が長くて、足がパカーンと上がっていて、目を惹きました。
米沢さんと速水さんのパドドゥは、綺麗なのですがサポートが時々危うくてヒヤッとしました。ですが、立ってるだけで王子の雰囲気が漂う速水さん、間違いなく新国立が誇るダンスールノーブルです。王子だ・・・。立ってるだけで王子や・・・・。
3幕の民族舞踊、花嫁候補達については全員押しが弱すぎて、誰が負けてもおかしくない感じでした。民族舞踊は音楽がバンバンなっている割に、全員歩いているのかというくらい迫力が無く、せせら笑いをしている人もおり台無しでした。衣装もテイストが意味不明で、ハンガリー舞踊団は男は中国の歴史映画の殿様、女はなんでロシアテイスト?の衣装なのか本当に謎でした。姫達も統一感を出すためか、同じ色合いの衣装だったのですが、全員押しが弱すぎて、なんだかうーんという感じで残念でした。
ただし、ナポリの踊りの福田圭吾さんは元気いっぱいで、とても良かった。客席からも割れんばかりの拍手でした。横に控えてるときもオディールを見ながら「アレはダメだろ」とばかりにお芝居を続けており、細かいところまできちんと演技されてると感じました。
黒鳥のパドドゥは速水王子も米沢オディールも素晴らしかったのですが、中家ラスプーチンの存在感が凄かったです。米沢オディールは何度も中家ロットバルトに目配せしながら2人で王子を騙し、中家ロットバルトは立っているだけでも存在感があるのに、舞台を縦横無尽に動き、オーラと凄みがすごかったです。
米沢さんの悪女っぷりがパドドゥのときから凄く、速水王子は完全に騙されてました。速水さん緊張しているからなのか、いつもより控えめな感じがしましたが、ラインの美しさと品の良さは健在。米沢さんは、教科書みたく正確で鋭いバリエーションでした。ピルエットもバランスも安定しており、迫力が凄かったです。
コーダはこれでどうだ!?と言わんばかりの米沢オディールと、恋して喜びいっぱいの速水王子の火花の飛び散り合いが凄かったです。
最後に退場する時はお決まりの大砲と発光にビックリ。各国の民族舞踊団が大慌てで逃げ出していく様子や、衛兵が倒されちゃう部分など、細かいところまで凝ってました。
4幕はなんといっても中家正博さんがすごかった。最後に王子と戦い、負け、苦しみに悶えるのですが、物凄い迫力でゾクゾクしました。
4幕の最初は相変わらず幻想的なセットと分厚い煙幕の中から白鳥の娘達が出てくる美しすぎる演出が目を惹きました。50センチ以上はありそうな煙幕が、オーケストラピットに流れず、ステージ上だけに留まっているのはどういう技術を使っているのか、すごいです。
どの版も4幕はすぐに終わってしまい、ライト版でもそんなに長くないのですが、悲しみに打ちひしがれたオデットと、懺悔と後悔の念に駆られた王子のパドドゥは美しく、オデットの死後にロットバルトと王子が戦う際の迫力もすごかったです。
速水渉悟さん、柴山紗帆さんプリンシパル昇格おめでとう!
さて、これだけ素晴らしい新国立劇場の白鳥の湖を堪能し、シーズンも終了ということで何かあるのではないか?と思ってましたが、カーテンコールでなんと吉田都監督が登場!
マイクを持って歩いてきた時点で観客からは期待のどよめきが上がりました。予想通り、本日主演を務めた速水渉悟さんのプリンシパル昇格が告げられると、観客からは割れんばかりの拍手と大歓声が上がりました。トップへの昇格を舞台上で観客の前で行うなんて、オペラ座みたいで大興奮でした。目の前で昇格を、喜びの瞬間に立ち会えるなんて本当に幸せでした。
そしてもう1人、柴山紗帆さんも来シーズンからのプリンシパル昇格を告げられました。この日は出番がないので、ワンピースで登場した柴山さん、可愛い。観客もステージも大興奮で、主演の米沢唯さんも端っこに立って2人を祝福しており、木下さんらが慌てて唯さんを真ん中に連れ戻したのが印象的でした。
吉田都監督のコメントにバレエ界の競争の激しさを感じた
個人的に面白いなと思ったのが吉田都監督が「2人は今シーズン全ての作品に主演し、結果を残したことを評価しての昇格です」とコメントしたこと。芸術監督が舞台で昇格を告げるのはオペラ座を初め、行っているバレエ団は多いけれど、こんなビジネスライクなコメント初めて聞きましたw 舞台上では「栄光を讃える」としか言われなくても、実際に裏では「結果を残す」などのコメントがされるのが普通なのかな、と想像してしまいました。
ダンサーの本業は踊ることですが、華やかの舞台の裏側でやはりビジネスとして成り立たせていかなければいけないバレエ団の厳しさ、競争の激しさを垣間見た気がしました。
新国立劇場の舞台は人気なので、どの公演もほぼ満席です。チケットノルマもなく、学生団体を入れることもでき、チケットを売るのに苦戦することは少ないように思います。しかし前回のコッペリアと今回の白鳥の湖のチケットの売れ行きを見ていると、小野絢子さんの回と速水渉悟さんの回は早々に良い席が売れ、完売の席種もありました。ビジネスという側面で考えると、これだけの観客を動員できる速水渉悟プリンシパルへの期待はものすごく大きいと思います。踊りが上手いだけでなく、観客の動員も凄い速水渉悟さんがこれからどのような進化を見せ、どのように新国立劇場バレエが変わっていくのか、非常に楽しみです。
速水渉悟さん、柴山紗帆さん、プリンシパル昇格、本当におめでとうございます!来シーズンからのお二人の舞台も楽しみにしています。
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