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【映画レビュー:ソラニン】「じゃがいもの芽が出てくるくらい」当たり前の日常が、30億払っても、手に入れられない"幸せの価値"に気づけた123分間のお話


 「あちゃぁ…。またやってしまった…」スーパーで、まとめて買ったじゃがいもの存在をすっかり忘れてしまい「じゃがいもの芽」が出てしまうことがたまにある。

 「芽を取れば、まだ食べられるかな」なんて、もったいない精神が頭をよぎるが、「じゃがいもの芽が出ると毒になるから、絶対に食べちゃだめ!」って、テレビで何となく流れていた豆知識をふと思い出し、ため息とともに、諦めがつく。

そんな「じゃがいもの芽」に隠された意味と「若者の日常にあふれる不安や小さな希望」を丁寧に描いた作品が2010年に宮崎あおいさん主演で大ヒットした「ソラニン」である。

当時は、"フリーターでバンド男"と"OLで社会人2年目女性"との日常を描いた恋愛映画として、さらっと名前だけは知っていた筆者だった。
 10年以上がたち、何となく見たこのタイミングは、タイムカプセルを空けたような「現代の若者の心に寄り添う映画」だった。

特に印象的な主人公の1言:
「どうしていいのかわからなくて、体に毒がたまってく」
日常にあふれる不満や不安、ストレスやプレッシャーなど、「心の負の感情=ソラニン(有毒物質)」に例えられていて、グサッと刺さる。

"誰かに嘆くほどの不幸"でもなければ、日常に対する強い不満があるわけではない、ただ食べて生活するには、心配のない日常は送れている。
 しかし、心の中に"ポッカリと空いた孤独感や寂しさ"をただ何となく感じている社会人の自分には、どストライクな処方箋だと感じる。

「すごいよ!いつも頑張ってるね。」と褒めたり慰めてくれる作品でもなければ、「こうしたら、その気持ちはなくなるよ」とアドバイスをくれる訳でもない。
 分からない正体不明の「もやもやした負の感情」を、どう対処したらいいか分からないまま、焦ったり、不安で押し潰されそうになる自分に、この映画は、その気持ちは、「あなただけではないよ。皆感じているものだよ」と隣で寄り添うように、優しく教えてくれた映画。

 主人公達と同世代の社会人には、リアルタイムで心に"ぐさぐさ"と刺さるこの映画の描写は、心が擦り切れて疲れ切った時に見る「心の栄養剤」として、これからも大切に何度も見返したい素敵な映画。

今ニュースで流れている「アマゾン創始者といく約30億円の宇宙旅行」よりも、"今"ある自分の周りの当たり前の日常の価値が、何にも変えられない自分だけの幸せの価値に気づけた有意義な123分間の使い方だった。

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