「No.3」気持ち悪い?かっこいい?無頼の画家、曾我蕭白《群仙図屏風》のコントラスト

こんにちは!かずさです!

急に熱くなりましたね。Tシャツで過ごしているのですが、つい2、3日前までヒートテックを着て過ごしていたので、なんだか不思議な気分です。今日はそんな時期にぴったりな、夏に向けて暑さがもっと増すような日本のアートを紹介します!

今回は、私が日本の画家の中で一番大好きな曾我蕭白(そが しょうはく)の《群仙図屏風》、特に画面の構成に注目してみます!

六曲一双、紙本着色、各172×378㎝、明和元年(1764)、文化庁蔵
曾我蕭白(享保15年頃:1730-天明元年頃:1781)
当時の書籍では、蕭白の作品や言動について常軌を逸していると書かれています。しかし、蕭白は意図的に「個性的」なものを演じた人物だともされています。蕭白が影響を受けたとされる陽明学左派には、「狂」という語があり、狂こそが聖人に到達する最も早道であると説いていました。そのため、蕭白は画風だけでなく、行動においても「狂」を目指した画家であるとされています 。

色鮮やかな部分と墨で描かれた部分が、2双の屏風の中で展開していて圧倒されますよね!大画面から来る気迫はまさに暑苦しさそのものといった感じです。この作品は、蕭白が30代の時の作品で、作品の中で一番と言っていいくらい有名な作品です。

蕭白っぽさといいますと、非常に細かな着物の皺のなどの描写や人物の表情です。左隻(下)の右半分に描かれた唐子(子ども)連れた老人である林和靖(りんなせい)の表情を見てみてください。今の時代、こんな表情の人がいたら通報レベルですよね。笑っているけど、ちょっと気持ち悪いです…。

描かれている人物と物語は、1つ1つ独立していますが、それぞれ意味や注文主の状況を合わせると「子供の誕生を祝い、健やかな成長を祈念する」と考えられています。(登場人物をみていくのも面白いのですが、それはまた次の機会に…)

右隻と左隻のコントラスト

この作品は、右隻と左隻で描かれているものに違いがありコントラストがみられます。

右隻・・・荒れた海と岩場、男性のみ、力強い感じ
左隻・・・花が咲いている樹木、女性と老人と子ども、優美さと賑やかさ

左と右で描くものを分類して、配置しているという感じです。上にも書いたように、この作品は1764年に制作されたものなのですが、この左右のコントラストは、後の40代頃の作品ではよりはっきりしたものとなります。

それが、この《仙人図屏風》という作品です。

(上)右隻、(下)左隻、二曲一双、紙本墨画金泥引、各160.4×174.6㎝、東京藝術大学蔵

この作品に描かれている人物は《群仙図屏風》とほとんど同じですが、右隻は女性のみ、左隻は男性のみで、より分かりやすいと思います。両方を並べた際の構図もシンメトリーのようになっていて、画面に描かれているものが意図的に配置されていることが分かります。

このような蕭白作品の左右のコントラストは《群仙図屏風》より前の《林和靖図屏風》という作品にも見られ、《仙人図屏風》までに段階のようなものが見られます。

通俗さや蕭白の変人エピソードが多く注目されていますが、こうして配置に注目してみると理知的でとても計算されています。「個性的」を演じていたというのは本当だったのかもしれませんね!

今回は日本のアートを紹介してみましたが、いかがでしたでしょうか?蕭白の作品は大好きなので、また取り上げる予定です。その時には、変人エピソードも紹介できたらと思います!

次回は、ヨーロッパのアートを紹介します(o^―^o)

※画像は以下から引用しました。
狩野博幸『新潮日本美術文庫12 曾我蕭白』新潮社
横尾忠則、狩野博幸『水墨画の巨匠第八巻 蕭白』講談社

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今回参考にした本、おすすめの本をまとめてみました。ぜひ、おうち時間に読んでみてください!

辻惟雄『カラー版 日本美術史』美術出版社
狩野博幸『新潮日本美術文庫12 曾我蕭白』新潮社
狩野博幸、横尾忠則『無頼の画家 曾我蕭白』新潮社
矢島新『マンガでわかる「日本絵画」の見かた 美術展がもっと楽しくなる』誠文堂新光社

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