児童養護施設職員が天職の人はどんな人か

児童養護施設職員が天職の人はどんな人か


端的に結論から言えば、児童養護施設職員が天職の人は、誠実な人です。


これさえあれば、他のことは経験と学習で乗り越えることができます。


これでこの記事の内容は終了なのですが、もう少し説明していきたいと思います。

そもそも、天職という考え方はない


どの仕事も同じことが言えますが、働き始めてすぐ結果が出る仕事はありません。


どんな仕事も楽しいことと同様に、辛いことはあります。


ストレスがまったくない職場はあるにはあるでしょうが、苦しいことがないのであれば、やりがいも同様に少ないのではないでしょうか。やりがいや幸福感は、やはり苦しいことを乗り越えて生まれる感情であることは間違いありません。


天職とは、そういった苦しさを乗り越え、知識、技術、経験を身につけた先に後天的に感じる職業のことを指します。なので、生まれながらに天職ということは、まずあり得ません。


私も、今でこそ児童養護施設の仕事を天職だと感じていますが、今の自分の知識と技術と経験を最も高く評価してくれる組織が児童養護施設だと思っているだけで、ここに至るまでは目も当てられない失敗を何度も起こしています。


それでも誠実に子どもたちと、職員と、組織と向き合ってきたことで、子どもたちに対する愛情、職員との信頼関係、組織への帰属意識が醸成されてきたのです。


まずそのことを理解していただきたいと思います。

それでも、誠実さだけは譲れない


天職に感じるには時間がかかります。どんな仕事も同じです。


ただ、児童養護施設職員になる人に、絶対的に譲れない能力があります。


それが冒頭でお伝えした、誠実さです。


児童養護施設の仕事は、ひとり仕事が圧倒的に多いです。職員との引継はもちろんありますし、入職したばかりの頃は先輩職員と一緒に勤務することもあるでしょう。


しかし、1ヶ月も経てばルーティンは覚えると想定され、ひとりで子どもたちの養育をすることになります。


その時に、ようやく子どもたちは本当の意味で新人職員へのチャレンジを始めます。


どこまでやったら怒る人なのか試してきたり、施設に先にいるのは自分だというマウンティングを取って情報操作をしてこようとしたり、単純に無視をしたり、反応は様々ですがいろんなことをしてきます。私もされました。


その時に、こちらも人間ですし、なぜ子どもたちがこのようなことをするのか理解も出来ませんし、それは単純に怒ったり悲しんだりします。


その時、どうしても良くない行動をしてしまうことがあるんです。これはもう人間だから仕方ありません。その後の行動が、とても大切なのです。自分が間違った行いをしてしまったと正直に報告し、振り返り、対策を考える、そういったことが必要です。その過程で、子どものことを理解していったり、先輩職員からのアドバイスを聞くことができ、成長するきっかけになるのです。最初から万能な職員なんておりません。


しかし、子どもが悪いように報告したり、自分がやり返したことは隠したり、ひどい場合は暴力を振るってしまったことを報告しなかったりしてしまう人がいます。


こういう人は、残念ながらいます。私も何人も見てきました。自分の行いを正されることを極端に嫌い、自信がないので他者からのアドバイスに耳を傾けることも出来ず、成長機会を著しく損なってしまう人です。


新人であれば一喝するところですが、経験年数を積んだベテラン職員でも、そういう人はいます。むしろ自分の行動を振り返ることなくベテランになってしまった可哀想な職員なのですが、もう戻ることもできません。


そうした職員が、誰にも助けを求めることもできず、相談できず、助言を受け取ることもできず施設内虐待を引き起こしてしまった例が、数えきれないほど存在します。


できないことをできないと言う。わからないことをわからないと言う。良くないことをしてしまったら謝罪をする。そういう、人としての基盤になる大切なことを身に付けていない人は、仕事をする前にまず自分の人生を振り返ってみましょう。


児童養護施設職員は、対人援助職として誇り高い仕事だと思っています。しかし、社会的な身分が低いために、いまだに高待遇な職業だとは言えません。


そうした中、どうしても前述したような、自分のことを棚上げする人が流れ込んでしまう実態があるように感じます。

それでも素晴らしい仕事


まぁ、それでもこの仕事、常に人は足りないのが現状ではあるのです。


なので、児童養護施設の仕事に興味を持ってくださった方は、本当にありがたい存在です。


そして、子どもたちは、やはりしっかりを向き合えば、成長を以て私たちに幸せを運んできてくれる存在なのです。


子どもたちが成長していく姿は、私たち職員の誇りであり、喜びであり、やりがいです。


どんなにひどい境遇にいた子どもたちでも、私は、機会さえあれば大きな可能性を開花させると思っています。その機会が、私たちの関わりで得られる可能性もあるのです。


子どもたちは多くが、スーパースターにはなりません。有名なスポーツ選手になったり会社の経営者になったり、タレントになったりしません。


しかし、生きることすら前向きに考えていなかった子どもたちが、それでも生きていくと決める瞬間に立ち会った時、私は鳥肌が立ちます。


私の肌感では、3割近い子どもたちが施設退所後に生活保護を受けます。自分の力で生計を立てていくことは、思いのほか難しいのです。


それでも、自分が関わった子が、「ちゃんと生きてるよ。」と報告をくれるだけで、私は職員で良かったと思います。


児童養護施設職員には、生きてることを奇跡に感じるアンテナがあるのです。

そのアンテナが、私の思う天職の、一番の宝かもしれません。


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