組織に不満を持ってはいけない

組織ではなく人に不満がある


児童養護施設は、園長(施設長)がトップ、その下に副園長や主任などの管理職が存在します。


施設の会議は複数あることは通常で、組織の規模に応じた会議を執り行われます。


例えば、私の所属している施設の最高位の会議は全員が参加する職員会議ですが、その会議が承認を伴うからであって、実際に施設全体の決め事を話し合う場は運営会議です。


運営会議のメンバーは前述した管理職の他に、副主任や会計職員が参加します。会計職員が参加するのは、予算上の問題に対応するためです。


そして、職員が組織に対して不満を持つ場合、標的となるのが運営会議のメンバーになります。


児童養護施設は、多くても100人を超える従業員を抱える組織ではありません。多くの児童養護施設が、中小企業の規模と同じです。


そんな中で、大事な決定や人事を決めなくてはならないのです。誰が決めているかなんてすぐわかります。


そうなると、「あの人が悪い」「あの人は間違っている」となるのです。

見える景色で判断は変わる


私も、まだ若い頃、運営会議の決定が不満だった時期がありました。


「俺が運営会議にいって全部解決するから」と仲間に吹聴しました。


そして、ようやく運営会議に参加する時が来ました。


私には、強い意志と応援してくれる仲間と、実績もありました。


結果は惨敗です。当時30名程度の職員集団ですら、まとめることはできませんでした。


人の気持ちを一つにすることは、思いの外難しいのです。


私は、自分の足りなさを実感しました。


自信はありました。応援する仲間もいました。ビジョンも意思も、知恵や工夫もありました。あると思っていました。


運営会議で獅子奮闘すればするほど、自分の熱に反比例するかのように、周囲が冷えていくのを実感しました。


驚くほど、組織運営は難しかったのです。


それから、私は組織に不満を持たなくなりました。むしろ、運営という責任を任されているという意味で、尊敬と哀愁を感じるようになりました。


その後は、組織に不満を言う職員に対して、「じゃ、それを変えられる立場になって、変えてくれ。」と言う様にしています。


同時に、自分が決定権すらない物事に対して、イライラしたり不満を言ったり、指示に従わなかったりしなくなりました。「あ、今のベストはコレなんだな。」と思うようになりました。


そこから転職して別の施設に行きましたが、そこでも基本的なスタンスは同じです。


「今のこの施設のベストがコレなんだな」と思ってますし、そう言います。


自分の仕事に自信があって自分に任されたことをしっかりこなしている人間は、組織に不満があれば別の組織に行くか、組織を変えるための知恵と工夫を使います。


だから、ダメな組織からは有能な人が流出し、ダメな組織に残るのはダメなことに気付かない人や、外に出る勇気のない人たちばかりになるのです。

同じ人間だということを忘れてはいけない


私は以前、主任に文句ばかり言う人に「あなたが主任になっても大きく変わらないですよ」と伝えたことがあります。


人間なので、いろんな面があるのです。現在の主任が適当にやっているとしても、悪いのは適当にやる人を主任にしている組織の責任です。


そして、多くの人たちが、精一杯勤務しているのです。


その人が、良かれと思ってやっていることが、たまたまあなたにとっては良くなかっただけのことなのです。


あなたが良いと思うことは、同じように良くないと思う人もいるのです。


組織の決定は、特定の誰かのために行われてはいけません。組織全体が良くなるようにしていかなければなりません。


その絵を描けるのは、全ての情報が入ってくる人だけなのです。それが運営会議です。


もし、運営会議の決定が不満な人がいたら、おそらく運営会議のメンバーではないから知らない情報があるのです。


誰がやっても、大きく良い方向になることはありません。皆精一杯やっているのです。


まず、そのことにリスペクトを持って下さい。


本当に間違っている運営陣なら、あなたが運営陣になって組織を改革すればいいのです。そのためには、不平不満を言っている時間はないはずです。


一生懸命認められ、昇進し、発言力を得て下さい。


大切なことなのでもう一度言いますが、人間に大差はありません。


あまり多くの期待を寄せてはいけません。期待は自分自身にしてあげて下さい。

児童養護施設職員の陥るワナ


一般企業だったら、ブラックだったら辞めればいいです。別の会社で働けばいいのです。


しかし、児童養護施設職員の転職は容易ではありません。


転職を決めた時、私が一番困ったのは、担当していた子どもたちのことでした。


自分のキャリアアップのため転職を決意しましたが、目の前で見ている子どもたちのことは大好きでした。


中高生を担当していましたが、人生を大きく変える場面に何度も立ち会ってきた子たちです。


手前味噌ですが、職員集団の中で、私を一番信頼しているという子も何人かいました。


これが美容師や歯科衛生士なら、信頼関係の出来ている顧客を次の組織まで抱えることもできるでしょう。


しかし、児童養護施設の子どもたちは、自分の入所する施設を選ぶことが出来ません。


自分がまがいなりにも苦楽を共にし、将来のことや人生のことをたくさん話し合ってきた愛する子どもたちから離れるのは、辛かったです。


私はそれでも転職を決意するほどに自分の将来を優先しましたが、組織に不満を持ちながら、自分の愛する子どもたちと離れることを選ばない職員はたくさんいると思います。


私は、それを罠と表現しています。


愛することは間違っていない。でも、その子を愛する職員はあなただけではないはずです。


あなたと良好な関係が築けたなら、他の大人とも良好な関係が築けるはずです。


私はそう子どもたちに伝えました。私も辛かったので、一緒に泣きました。


もし、子どもたちを離れられないから辞められないと思っている職員がいたら、その人は絶対に組織の不満を言ってはいけません。


「組織は不満だけど子どもがいるから辞めない。」と絶対に言ってはいけません。


その瞬間、あなたは子どものせいにして、自分の人生を決めてしまっています。


あくまであなたがそれを選んでいるのです。誰のせいにもしないで下さい。


そして、その組織でしか生活出来ない子どもたちのために、精一杯環境を整えてあげればいいんです。

児童養護施設業界


組織の不平不満を言うことはまったく意味のないことだと思っています。


せめて、信頼できる同僚とたまにこぼす程度にしておきたいものです。


児童養護施設業界は、非常に狭い世界です。


東京都の児童養護施設であれば、施設長同士は全員顔見知りだと思った方がいいでしょう。


主任や副主任、栄養士なども、独自のネットワークを持っています。他施設の職員のことはよく知っているのです。


私も、元同僚や研修で出会った職員と、独自のネットワークを持っています。


そういうネットワークは、転職の時にフル稼働します。


私も転職した時、探られました。


前の施設でどういう働きをしていたのか、組織の命令に従っていたか、子どもを抱え込んでチームの輪を乱していなかったかなど、施設長や運営層の職員が独自のネットワークを使って確認します。


その時、不平不満ばかり言っていた職員は、採用しにくくなります。


管理職は、管理しにくい職員は採用したくないのです。


あなたも考えて見て下さい。中小企業で、組織の言うことは聞かないけど有能な人と、組織の言うことを聞くけどまぁまぁな人、どちらがより組織に貢献できるのか。


答えは、組織の言うことを聞く人です。


自分のためにも、不平不満は言わないに越したことはないのです。


児童養護施設職員は、評判で飯を食うのです。


実際に有能かどうかは、自分に誠実に取り組んだ結果で得る自己満足です。あとは、子どもと信頼関係を築けたかどうかです。信頼関係だって、きちんと測定する尺度などありません。


あとは、一緒に働いた人、所属していた組織の管理職が、あなたが有能かどうか決めるのです。


あなたが良い人間関係を築いて勤務することを願っています。


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