ハイパーインフレは“超指数関数的”

前回のエントリーで、「インフレと指数関数 exp」の話をしたときに、ハイパーインフレを指数関数的な物価上昇と一緒くたにしてしまいましたが、実際にはハイパーインフレは「超指数関数」的で、
  exp ( exp ( 時間 ) )
のようになることが多いそうです(これを2重指数関数と言います)。つまり、通常のインフレは(比較的ゆるやかな)指数関数的な物価上昇だが、ハイパーインフレでは超指数関数的になる、と。

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そもそも、ハイパーインフレとは

国際会計基準の定めでは「3年間で累積100%以上の物価上昇」をハイパーインフレの定義としている。
(Wikipedia 「ハイパーインフレーション」より)

などのように、基準となる率以上の物価上昇が起きることだそうです。

実例として次の本に、ハンガリーで1946年ごろに起きたハイパーインフレの例が載っています:
高安秀樹著『経済物理学(エコノフィジックス)の発見』(光文社、2004年)。

著者らは、そのときの物価の上昇カーブが、ちょうど“超指数関数的”

物価 ∝ exp ( a exp ( b t ) )

であったことを発見したそうです; ただしここで a , b は定数、また t は時間。
(※なお冒頭述べたように、上記本などの一般的な用語としては、これを「二重指数関数(double exponential)」と呼ぶようです。)


さらには、他国の事例でも同様な観察結果が得られたとのこと:

ドイツで起こったインフレや第二次世界大戦のイスラエルのインフレなど、世界の様々な国で起こったインフレのデータ(中略)を網羅的に分析した結果、インフレには3つの関数形があることがわかりました。普通のインフレは指数関数、ハイパーインフレは2重指数関数、(後略)
(同書p.155-156より)

というわけで正確に言うと、ハイパーインフレを指数関数的とは言っていけないようで、もっとずっと激しい物価の上昇みたいです。


ちなみに、ハンガリーのハイパーインフレを収束できた理由。それは一定量のゴールドと交換できる貨幣(単位はフォリント)を発行したからだそうです。つまり、ゴールドという、総量が有限な「何か」に貨幣が紐づけられたことで、貨幣価値が安定したと言えるでしょう。
(ということは、総量有限が保証されていれば、対象は物質でなくてもよさそうですね… ニコリ)


いや~数学って本当に便利ですね!自分の思い違いも明白にわかるから…!!
以上、かのわさびでした。


理数系の教養は国力の礎。サイエンスのへヴィな使い手の立場から、素敵な科学の「かほり」ただよう話題をお届けしたいと思っています。