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294 古きを遺し今に歴史を伝える町・小樽

この夏は北海道を旅行しました。

北海道に住んでいたころは何度か来ていたんですが、卒業後はすっかりご無沙汰になってしまったのが小樽。四半世紀ぶりの訪問となりました。

夜と昼 趣の異なる小樽運河を訪ねる

小樽といえば、やはり小樽運河。夜に駅に着いたわたしはホテルのチェックインも後回しにして駅からまっすぐ小樽運河に歩いていきます。歩いて10分ほどの道のりです。

時間はまだ午後8時前。運河はきれいにガス燈でライトアップされていました。やはり小樽を代表する観光地。この夜景を見に大勢の観光客が歩いています。

この景色を船から眺めるツアーもあり、満員の船が運河を優雅にわたっていました。(ナイトクルーズは19:00、19:30、20:00に運航。小樽市民以外は大人一人1800円。)

小樽運河は大正12年に完成した運河です。小樽港での荷物の取扱量が増加したためさばき切れなくなり、倉庫まで艀(はしけ)が運んで接岸できるように建設されました。掘り込み式ではなく海の沖を埋め立てて造った日本で唯一の運河であり、そのため海岸線のような緩やかに湾曲した形になっています。
モータリゼーションによって荷揚げの量が減り、運河も必要がなくなったころ埋め立ての話も出ましたが、有志らが立ち上がり運河の保存を求めた結果、運河の一部を残す今の形に落ち着いたそうです。努力の甲斐あって小樽運河は小樽観光の目玉となっており、大勢の観光客がここを訪ねるに至っています。

小樽名物ともいうべきガス燈でライトアップ。

倉庫群は今もリノベーションされて活用されており、小樽ビールを楽しめる店やびっくりドンキー、結婚式場なんかも入店しています。後述しますが古い建物が多く残る小樽はそれらを壊すことなく転用してうまく活用しているケースが多いです。

この日の夜は小樽に宿泊しましたので、昼の小樽運河の姿も撮りに出かけました。

晴れ渡る空の下に広がる小樽運河はまた夜とは違った印象ですね。

左手は奥は小樽ビールのお店。運河を足元に見るぐらいの場所でオープンテラスでビールが楽しめるんですよね。ビール好きにはたまらないでしょう。

北海道の玄関口として発展した歴史を知る

さて、小樽は北海道の中では古くから拓かれ、北海道の本府が札幌に置かれると近接する小樽に人や物が集まるようになりました。北海道の玄関口として栄えた名残が今もそこかしこに残っていますのでそれらをご案内しましょう。

北海道初の鉄道「手宮線」

JR小樽駅から小樽運河に行くまでの間に今は使われていない線路跡を通ります。これは手宮(てみや)線といって、明治13年11月28日に札幌駅と手宮駅(小樽港の近くにある地区)の間で営業を開始しました。日本最初の鉄道が新橋駅ー横浜駅間で開業したのが明治5年ですので、その8年後には北海道に鉄道があったことになります。北海道には炭鉱があったため石炭輸送のためにかなり早い段階で鉄道が敷設されたのです。

長く旅客輸送もしていましたが、昭和37年に貨物船に転換、昭和60年に南小樽駅ー手宮駅間が廃止されて今はこのように市が整備を行って遺構として保存しています。開拓時代の北海道、石炭で日本の産業を支えた北海道の歴史を静かに伝えてくれています。

手宮線廃止と同時に役割を終えた色内(いろない)駅跡。

北のウォール街 銀行群跡

小樽駅前の中央通りのやや東、色内地区にはかつて数多くの金融機関や商社が集中して存在し、「北のウォール街」とまで言われました。

こちらは明治45年竣工の日本銀行旧小樽支店。設計したのは日本の近代建築学の父、辰野金吾とその弟子の長野宇平治で、平成14年に営業終了したのちは金融資料館として活用しています。4つのドームが特徴的ですね。

このシマフクロウのレリーフは旧小樽支店のシンボルで、建物の内外に多く飾られています。シマフクロウはアイヌの守り神なのだそうで、レリーフにも北海道へのこだわりが表れていました。

こちらは旧三菱銀行小樽支店。ギリシャの神殿のような柱が特徴的です。小樽市の指定建造物になっていて今は北海道中央バスが所有してバス乗り場兼商業施設に転用しています。

お、値段以上ニトリさんが開設する似鳥美術館は大正末期に建てられた旧拓殖銀行小樽支店を活用しています。ステンドグラスの展示がとても美しいそうです。

そのほかにも旧安田銀行などの金融機関、三井物産などの商社や海運会社も多く集まっていた小樽でしたが、札幌への一極集中化や海運からモータリゼーションへの転換、戦後樺太への航路の途絶などにより小樽の地位は低下してしまいこれらの支店は相次いで廃止されることとなりました。それでも施設を壊すことなく転用に努め、町の景観を守ろうとする小樽の人たちの努力には頭が下がります。
30年以上前に住んでいた札幌はだいぶ変わってしまいましたが、小樽はあまり変わらず、どこか懐かしささえ感じました。

今後新幹線ができ、新たな街づくりをすることになる小樽ですが、古いものも大事に守り続け魅力ある街づくりに努めてもらいたいと感じました。

おまけ

小樽駅4番線は「裕次郎ホーム」と呼ばれています。かつて「北紀行」という番組で石原裕次郎さんがこのホームに降り立ったことからその名がつけられています。

4番線の「4」は石原裕次郎さんが愛したヨットの形。裕次郎ファンの方は、ぜひ。











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