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355 津軽弘前ハイカラあるき。


青森県西部の弘前市にやってきました。大学在学時に少し立寄ったことしかなく、ゆっくり回るのはこれが初めてです。

駅の改札を出ると立派なりんごのオブジェ。青森県が日本一の生産量を誇るりんごの多くは弘前を中心とした津軽地方で生産されています。

残念ながら冬期は閉鎖中。

弘前は江戸時代、津軽氏が統治する津軽藩の城下町として発展してきました。春に城一帯に咲く桜が美しく、このため弘前城のイメージが非常に強いのですが、実はそれだけではなく美しい洋風建築が数多く残ります。

洋風建築の多くは弘前の中心部である弘前城の周辺にまとまって残り、訪ねやすいです。こちらは弘前昇天教会聖堂。大正10年に建てられたもので全体がゴシック様式でイギリス様式で積まれたレンガが美しい教会です。今でも朝夕の祈りの時間に鐘の音が町の中に響き渡ります。

教会から2分も歩けば到着するこのレンガ積みの建物は「弘前れんが倉庫美術館」。もともとは吉野酒造がこの地に酒造工場を建設し、その倉庫として使われていました。日本酒をはじめ、弘前名産リンゴを使ったシードルも生産していたといいます。

昭和40年代に酒造会社が移転したあとしばらくは政府の米の保管庫となっていましたが昭和末期ごろに「煉瓦館再生の会」が作られて不定期のイベントを実施するなどして文化活動に使用しようという機運が高まりました。市が吉野酒造から土地を取得する交渉はかなり難航しましたが、最終的に市が取得することで合意、令和2年に美術館としてオープンすることとなったものです。

美術館前の広場は市民憩いの場。

弘前れんが倉庫美術館さんはnoterさんでした。美術館でのイベントなどのチェックはこちらへ。

場所は変わってこちらは旧第五十九銀行本店。青森県初の金融機関として明治12年に設立された同銀行の本店として明治37年に建築されたものです。このころの銀行は当時の流行を取り入れた洋風の建築が多く、今も全国に存在残っています。青森県産のヒバやヒノキを使った木造建築であり地元の産業振興にも貢献をしてきました。現在は青森銀行記念館として活用されており、その希少性から国の重要文化財に指定されています。

こちらは東奥義塾外人教師館。東奥義塾は明治期に弘前市に設立された私塾であり現在も市内に高校、中学があります。プロテスタント系の学校であり、当時は外国人の宣教師が教鞭を執っていました。この建物はその教師の寄宿舎としてつかわれていました。

弘前市は東奥義塾設立後多くの学校が作られ北東北の学都として発展しています。青森県の国立大学である弘前大学も県庁所在地青森市ではなく弘前にあります。

大草原の小さな家とかで出てきそう。
応接間では要人を招いて歓談をしていたのでしょうか。

当時の家具調度品の数々が当時の暮らしを偲ばせます。

フォレット先生、この写真しかなかったのかな…。

外人教師館に隣接するこちらは旧弘前図書館。明治36年に資産家により建てられ市に寄付された建物です。どこかのおとぎ話に出てきそうな洋風建築。八角の塔はどこか中華風な雰囲気も漂わせます。当時の日本は日露戦争中であり、第八師団が置かれた弘前は軍需品の生産で活況に満ちていました。この建物も当時は「日露戦捷記念弘前市立図書館」という名称でした。
図書館としての役割は昭和5年に終え、その後は民間のアパートなどに使われていましたが、現在は図書館として使われていた当時の姿を再現して資料館として使われています。

八角の塔の中をぐるっと巻くように階段を昇ります。

小さな小部屋の中に本棚が置かれています。今の広いスペースを持つ図書館とはちょっと雰囲気が違いますね。

こちらは婦人閲覧室。一般閲覧室もあるのですが、あえて分けているのは婦人はここで読むように限定されていたということでしょうか。

こちらの一般閲覧室はやや広く資料室に使われていました。ただやはり建物内の各部屋は狭く、一般の市民が広く本を読みに来るような現代の図書館とはやや違った印象です。かなり位の高い方が利用していたのではないでしょうか。

今回紹介した洋風建築。旧第五十九銀行本店、旧東奥義塾外人教師館、旧弘前図書館はいずれも地元の大工棟梁、堀江佐吉が建築に携わったものです。函館の洋風建築の美しさに惚れ、洋風建築について研究をし津軽地方で多くの建造物を残しました。今回ご紹介した建物も代表的な作品ですが、もう一つ忘れてはならない建物がここから少し離れた金木町にあります。
次回はその建物をご紹介したいと思います。

菰を編んで作られた自転車と女の子。
次はこの桜が満開のときに来てみたいですね。


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