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HIIT vs ロング

こんにちは。
今回紹介する論文はこちら。

Papandreou A, Philippou A, Zacharogiannis E, Maridaki M. Physiological Adaptations to High-Intensity Interval and Continuous Training in Kayak Athletes. J Strength Cond Res. 2020 Aug;34(8):2258-2266

カヤック選手における高強度インターバルトレーニングと定常トレーニングの生理学適応

これは最近(というには少し古いかも)のトレンドの高強度インターバルトレーニング(以下HIIT:High Intensity Interval Training)vs定常トレーニング(一定負荷で動き続けるトレーニング、ロングなど)の比較をした研究(ギリシャ)です。

簡単に言うとただ長時間漕ぎ続けるだけのトレーニングよりもHIITの方が良くね?という内容です。
それでは本題に入っていきましょう。

☆研究の目的


HIITとCT(定常トレーニング)を比較する。
短時間で終わるHIITの方がより長時間のCTに比べて生理学的・パフォーマンス的な変化を時間効率よく大きく引き出せるだろうというのが仮説です。

☆方法


□被験者

男女24名(男性18名、女性6名、平均年齢18.2歳、身長171.83cm、体重68.14kg)
全員がナショナル選手権の参加経験があり、4年間のトレーニング経験がありました。
HIIT群、CT群、C(コントロール、特にトレーニングなどを行わない、統制群・対照群ともいう)群に各8名を振り分けました。

□手順
6週間のディトレーニング(トレーニングの中断)期間

事前測定(4日かけて4種目の測定の実施)

1週間のFamiliarization Period(エルゴでのトレーニングなどに慣れるための期間)

8週間のトレーニング介入(群によって内容が異なる部分)

事後測定(事前と同じ内容)

□トレーニング介入
CTプロトコル

70%VO2maxで60分が1セッション
頻度は3セッション/週です。

HIITプロトコル
120%VO2maxで30秒×8本(各60秒のパッシブリカバリー)が1セッション
こちらは12分で1セッションが終了します(実質的なトレーニングは4分)。
こちらも頻度はCTと同じです。

Cプロトコル
60分のウォーキング(130歩/分)、その他の日はオフ

全てのトレーニング介入は月曜日と水曜日、金曜日に行いました。
CT群とHIIT群の違いはトレーニング量(15 vs 1)、強度(70%VO2max vs 120%VO2max)の2つです。

□生理学的測定、パフォーマンス測定
最大有酸素性漸増負荷測定

負荷を徐々に上げて疲労困憊に至るまでエルゴを漕ぎ続ける測定。
男性は8km/h、女性は6km/hから始め2分ごとに1km/hずつ速度を上げていきました。
動けなくなるor指定の速度がこなせなくなるまで続けます。

最大無酸素性ウィンゲートテスト(通常はパワーマックスという特殊なエアロバイクで行いますが今回はカヤックエルゴを使用)
被験者が10km/h(10秒以内に)に達してから30秒間の全力パドリングを行いました。

1000m、200mエルゴテスト
エルゴで1000mと200mのタイム測定を行いました。

4種目の測定は全て別日で時間帯や室温、湿度が似た環境で行いました。

☆結果


・体脂肪率の介入前後での変化はCT群で-1.48%、HIIT群で-0.17%、C群は+0.3%
・VO2max、最大乳酸蓄積、最大心拍数、最大速度減少(ウィンゲートテストでのピーク速度からの減少)はトレーニング介入で有意な変化は無かった。
・換気閾値(無酸素性代謝に切り替わる点)での速度はHIIT群でのみトレーニング前後で有意に改善した。
・VO2maxでの速度、パドリングエコノミー(75%VO2maxでの速度)、最大速度(ウィンゲートテストでの)はCT、HIIT群のどちらでもトレーニング前後で有意な改善があった。
・VO2maxはトレーニング介入で異なった変化がみられたが有意な差はなかった。
・パドリングエコノミーはトレーニング介入間(CT vs HIIT)で有意な変化があった(HIIT群の方がより大きい改善)。

・200mのタイムはHIIT群でのみトレーニング前後で有意な向上(タイムの減少)があった。
・1000mのタイムはCT群とHIIT群でトレーニング前後で有意に向上した(タイムの減少)。
・タイムの差については群の間の変化はみられなかった。

☆結論


HIITの方がCTより時間効率性があるだろう。
HIITもCTも生理学的、パフォーマンス的な適応をもたらすがパドリングエコノミーなどについてはHIITの方がより大きい改善をもたらした。

○感想


HIITはCTよりも良いよとの結果でしたが、じゃあ実際にCTみたいに長時間漕ぐのは控えてHIITやダッシュだけやればいいのかという疑問が出てきます。
私個人(多分他の指導者も)の回答は恐らくNOでしょう。
普通はCTもHIITも組み合わせて行います。
なぜそうかというとそもそも120%VO2maxで漕ぐというのはカヌー初心者にとっては不可能です。
また初心者でなくてもHIITだけ行うのことはないでしょう。
なぜなら低強度トレーニング(CT含む)で起こる身体の変化と高強度トレーニングで起こる身体の変化(適応)というのは完全には一致しないということが分かっているからです(ここで詳細には触れませんが)。
持久力を最大化するには低強度トレーニングも高強度トレーニングもどちらも必要です。
またその組み合わせの仕方も無数にあり深い議題です。

今回の研究を現場に落とし込むとしたらオフシーズンだからといってロングしかやらないは良くないだろうとということかと思います。
オフシーズンでもHIIT的なものも行うことでパドリングエコノミーを改善し続ける(もしくは維持)することでCTのようなトレーニングもより高い質(より速い速度)で行える可能性が高いと考えられます。
何かに偏ってやるだけではなく複数の要素が両立するようトレーニングする というのはどの競技においても重要です。
もちろんどの要素をメインの目標とするかは時期によって変わるわけですが(ピリオダイゼーション、期分け)。

感想のパートも長くなってしまいましたね。
ここで何を紹介するか(自分がどの論文を読むか)を悩んでいます。
色々読みたいものはあるのですが時間も有限なので何を読むかも選ばなければなりません。
もし何か読んで欲しい・知りたいトピックなどあればぜひコメントなど下さい。

もっと書きたいことが色々ありますが今回はこの辺りにしておきましょう。
最後まで(途中で挫折してしまった方も)読んで頂きありがとうございました。


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