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どうしても読めない本がある/「落日」読了しました

私には、どうしても読めない本がある。

出会ったのは高校生の時。名作だと知っていても、あらすじで惹きつけられても、どんなに好きな著名人が推薦していても、約10年経った今も読むことができずにいる。


その本は、「アルジャーノンに花束を」。

世代を超えて読み継がれてきた感動作
32歳になっても幼児なみの知能しかないチャーリイ・ゴードン。そんな彼に夢のような話が舞いこんだ。大学の先生が頭をよくしてくれるというのだ。これにとびついた彼は、白ネズミのアルジャーノンを競争相手に検査を受ける。やがて手術によりチャーリイの知能は向上していく…天才に変貌した青年が愛や憎しみ、喜びや孤独を通して知る人の心の真実とは? 全世界が涙した不朽の名作。著者追悼の訳者あとがきを付した新版。

Hayakawa Online より

読めない理由はただ一つ。高校一年生の頃、苦手だった担任教師の紹介した本だから。

高校に入学して初めての担任だった彼は、担当科目が英語の体育会系。運動部顧問で熱心に部員を指導していた。申し訳ないが、教師がしたかったのか、部活指導したかったのか、掴むことができなかった。

それだけならまだいい。私が決定的に彼を受け入れられなくなった出来事が起きた。
校則で禁止されていたにも関わらず、親からのメールで携帯電話の使用がバレてしまった私は職員室にいる彼に呼びだされた。静かな叱責とともに、こう言われた。

「お前はクラスのお手本なんだから、もっとしっかりしろ」

思わず目を見開いてしまった。そして、目を細め、彼を睨みつけた。
当時の私はクラスの中で成績トップで、二年生以降は優秀な生徒ばかり集まる理系クラスに進むことが決まっていた。
そんな私は、クラスの勉強姿勢を鼓舞するための存在だったのだろうか。進路希望を提出したら、「もっとレベルの高いところを目指せ」的なことを言われたこともある。
私はあなたのために勉強しているんじゃない。

そう思いつつ、担任の顔色を伺った高校一年時だった。進級してからは、理系クラスにも関わらず文転した。本当は一年生のうちに相談すべきだったのだろうけど、彼となるべく会話をしたくなかったのだ。

嫌いな先生が好きな本。そんな子供っぽい理由で、私はまだ読めていない。
最近ブームが再来したこともあり、読んでみようかと思った。
「読みたい本は購入したい派」の私だが、まだモヤモヤを払拭できず、とりあえず図書館で借りることにした。

が、仕事が休日の今日、たまたま図書館は休館日たった。今なら読めそう、というタイミングだったのに。別日に来館すればいいのだが、その気も失せてしまった。

本は決して悪くない。こんなに多くの人に長く愛される作品もなかなかない。
ただ、私が読めるようになるのは、心がもう少し大人になってからかもしれない。


今月は10冊くらい本を読了しました(できたらあと2冊読破したい…)。
その中の一冊の感想です。ネタバレ回避に努めます。

「落日」湊かなえ

わたしがまだ時折、自殺願望に取り付かれていた頃、サラちゃんは殺された──新人脚本家の甲斐千尋は、新進気鋭の映画監督長谷部香から、新作の相談を受けた。十五年前、引きこもりの男性が高校生の妹を自宅で刺殺後、放火して両親も死に至らしめた『笹塚町一家殺害事件』。笹塚町は千尋の生まれ故郷でもあった。香はこの事件を何故撮りたいのか。千尋はどう向き合うのか。そこには隠された驚愕の「真実」があった……令和最高の衝撃&感動の長篇ミステリー。(解説・瀧井朝世)

「落日」公式サイトより

去年から積読していたけど、ドラマが始まる前に一気読みしました。

湊かなえさんは「告白」と「サファイア」しか読んだことがないが、ネットの評判で「イヤミス」という印象が強かった。

しかし、読了後、イヤミスどころか、あたたかさや希望を感じた。

忘れられない少女を死に至らせた事件の真相に迫る新人映画監督の香。
遠い国で夢のために頑張る姉にメールを頻繁に送る新人脚本家の千尋。

本文では対照的な二人だけど、過去の美しい思い出を塗り替えることに恐れている、という印象を持った。二人がそれに向き合う姿は、苦しくて、それでも最後は「よく乗り越えたね」と声をかけたくなる。

小説のキーになる言葉、「事実」と「真実」。
取り調べや裁判で事実が明らかになっても、感情が伴う「真実」に辿り着くことは非常に難しい。むしろ真実を知らない方が傷つかずにいられるケースも少なくはないだろう。

真実に触れるために、想像力をはたらかせる。
その先の世界が、少しでも良くなりますように。

wowowでドラマ化されるのですが、サラ役が何と久保史緒里ちゃん!まさかの配役でした。

実力のある俳優さんたちが勢揃い。これは観なければ…!

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