【感想】シャーロック・ホームズの凱旋/森見登美彦
※ネタバレを含んだ内容です。
モリミー2年ぶりの新作。ホームズ×京都×モリミーが融合してしまったら、面白いにきまっているわけです。久しぶりに本を予約して購入。
シャーロキアンというほどではないけど、一応シャーロック・ホームズの原作を読んだこともあるし、ホームズのパスティーシュ作品もいくつか見ているので、ホームズ系と言われるとドキドキワクワクしてしまう。
しかし、モリミーはやっぱり阿呆なわけで、あのホームズまでも阿呆にしてしまう。
全く働かないホームズ。推理もしないホームズ。まさに、"こんなホームズは嫌だ"なホームズが登場する。なんならモリアーティ教授も、レストレードも、なかなか動かない。なんじゃこりゃ。
ワトソンがとにかく頑張っているのだけど、ぜんぜん動かないホームズにしばらくはジリジリしながら読み進める。物語の中盤くらいで、ホームズが目覚めてくれるのを期待して読んでいたばっかりに、どうしても不完全燃焼感は否めない・・・。
ただ、モリミーの奇想天外に奇想天外をのっけてくる展開や、ヴィクトリア朝京都をの景色がありありと浮かんでくる表現に、どんどん世界に入り込んでしまう。モリミーマジック。ヴィクトリア朝京都の全体図を公開してほしい。
魔法とか心霊ナントカとかが出てきだした頃には、これ、ノックスの十戒に抵触するのでは?なんて思っていたけど、ちがうちがう、これはミステリー小説ではない。あくまでも、ホームズをパスティーシュしたモリミーの小説なのだと自分の認識を修正。読者の認識を修正させてしまうモリミーの能力と魅力。
モリミーは、ぶっ飛んだ比喩表現をするのが個人的にはすごく好き。今回ついつい、マークをつけてしまった比喩表現は以下のとおり。
雨に濡れた御影石のように、って。降参です。完敗です。なんでこんな表現ができるのか、脳みそのぞいてみたいわ。
これだからモリミーはやめられない。
そうそう、忘れてはいけない。今回、とにかく真っ直ぐで純粋だったのが、ワトソン。ホームズを見捨てられない愛と、妻メアリを大切に想う愛。仕事と家庭で揺らぐ姿は現代の家庭を持つ男さながら。妻をないがしろにするつもりはないのよね、わかるよ〜。
ワトソンが真っ直ぐ芯のあるキャラクターでいてくれたからこそ、このヘンテコなホームズ譚は成立していたわけだ。ありがとうワトソン。
これ多分、もういっかい落ち着いて読まないとあかんなぁ。
おわり
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