MuseScore4を触ってみた (7)

【第7章】交響曲を打ち込んでみる

有名なシューベルトの未完成交響曲。一般には「交響曲第8番」として知られている、と思ったらナンバーリングが変わって「交響曲第7番」なのだそうです。
一か月ほど前。まだMuseScore4を触り始めて間もないころ、一度取り掛かったのですが、知識も技術も足りなくて、どうにも形になりませんでした。
最近になって、少しだけ進歩したように思えたので再チャレンジしてみました。
しかし。
交響曲ともなると、単純に譜面を打ち込んで再生するだけではまったく音楽になりません。
ほとんど二小節ごとに確認する事項が出てきます。
「未完成」は古典的な二管編成のオケなのでスコアの段数は比較的少なくて済みます。それでも26段でしたが・・・

<それは60年前の話>
「未完成」を打ち込んでみたいという気持ちは、僕の少年時代の想い出に直結しているからなのです。
17歳の少年は生まれ初めてオーケストラの演奏会を聴きに行ったのです。チケットを持っていた友人が急用で行けなくなり、「お前にやるよ」といって貰ったものです。上野の文化会館大ホールで小澤征爾指揮の日フィルのコンサートでした。
二階席の中ほどで、ずっと遠くにオーケストラが見えました。指揮者の顔なんて良く見えないのです。
若くして才能を発揮した人気のある指揮者でしたが、組織や人との折り合いが悪く、このコンサートが日本で最後になる、とかの触れ込みでした。
彼が登壇し、指揮棒を持って構えます。オーケストラのメンバーに緊張が走ります。満員の客席は静まり返ります。第一楽章の第一主題がチェロとコントラバスで奏でられ、ついでヴァイオリンのピアニッシモの経過句が続きます。その音はささやき声よりも小さいのです。なのに耳元ではっきりと聞こえるのです。微動する大気のような揺らめき・・・その瞬間に少年の心は宙を飛んでいました。
詩的に表現すれば美しい思い出ですが、有体に言えば、それが誤った人生を送る羽目になったきっかけでもありました。

若人よ!思い入れだけではどうにもならない世界というのはあるんだよ。とくに才能が必要とされる世界では、ね。まあ、若者の特権といえば特権だろうけど、突っ走る前に一度冷静になって、立ち止まれれば良いのかもしれない。けど、そう簡単にはいかないのが人生ってもの。

とまれ、その「未完成」の冒頭のピアニッシモを再現できるだろうか。あの音は今でも明確に頭の中に刻まれている。時間がたっても消えることはない。

<ダイナミックレンジの問題>
生のオーケストラのダイナミックレンジはとてつもなく広いです。
手元にあるスコア(全音楽譜出版)をみてもピアニッシモ(pp)からフォルテッシモ(ff)まで、もれなく網羅されています。またフォルツァンド(fz)なんかもじゃかじゃか出てきます。
それらを指定通りに打ち込むと、余程のオーディオセットで聴かない限り、酷いことになってしまうでしょう。
Youtube等に上がっているクラッシック楽曲を聴いてみると、かなりダイナミックレンジは平板化されているように思えます。多くの人はそれらをスマホやiPhoneやパソコンで聴いているのではないでしょうか。ヘッドフォンで聴けばいくらかましにはなりますが、普通に再生された時のことを考えると目いっぱいのダイナミックレンジを実装するのは難しいと思います。
MuseScore4の再機能でのVelocityとExpressionの扱いをいまいち理解できていないため、譜面にあるとおりに強弱をつけるとバランスが全く取れません。なので今回の実装にあたっては、自分の耳を頼りにppとあるところをmpにしたり、ffはfまでとし状況によってはmfと指定することでバランスを取りました。強引な力業ですね。
現在の知識と技量で解決できない問題もありました。(公開した動画の説明文に書きました。)

<「交響曲」が持つ奥深さ>
打ち込みを通じて多くのことを学びました。
実に綿密な仕掛けが「あらゆる」音に込められているように感じます。
卓越した才能に支えられた細心の配慮・・・
だからこそ長い時を経てもなお多くの人に親しまれているのでしょうね。
今更ではあるのですが、この作業を通じて自分自身が少しづつ進歩して行ければいいな、と思っています。

『シューベルト交響曲第8番(未完成)デモ版』
MuseScore 4 による習作7c

https://youtu.be/EeDmOsKS7nQ

その他の投稿も併せて聴いていただけると嬉しいです。

<とうしゅうチャンネル>
https://www.youtube.com/channel/UCb6nH80QrgrbsqRZP24KC1Q


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