MuseScore4を触ってみた (5)

【第5章】アルフォンシーナと海

<ラテン音楽>

ショスタコービッチのラテン風味を公開したのですが、やはり本格的なラテンを書いてみたくなりました。

しかしMuseScore 4の制約を考えると、サンバやサルサ(=ソン)みたいにパーカッションゴリゴリは、今の私には無理だろうと思うのです。でもメヒコとかベネズエラとかパラグアイとかの歌物で名曲は山ほどある。基本的にギターメインだし、和音も搔き鳴らし系だし、なんとかなるんじゃねえの・・・

なんとかなりませんでした・・・Orz

ギターはその種類も奏法も実に多様で、ソフト音源化が最も難しいのだそうです。

パラグアイのグァラニア(Guarania(*1))の名曲で「イパカライの想い出(Recuerdo de Ypakaraii)」にかかったのですが、どうにも形になりませんでした。

アルパはまだ良いのですが、ギターのカッティングがうまく打ち込めません。グァラーニアのザラっとした2拍子+3拍子の感じが再現できませんでした。

で、これはしばらくペンディング。

そこで諦める訳には行かない。
アルゼンチンものはどうだ?

<フォルクローレ>

アルゼンチンにもサンバがあるのです。といってもこちらは定番の6/8型で、比較的ゆっくりしたリズムです。その他にもミロンガやチャカレーラ、クェッカ、ホローポ、などなどたくさんのリズムと形式があります。

またフォルクローレではないですが、タンゴも有名ですね。

(タンゴも打ち込みは相当厳しそうですが・・・)

フォルクローレといえば、アタワルパ・ユパンキ(*2)などが挙げられますが、もうひとりメルセデス・ソーサという女性歌手がいます。そして彼女の代表曲のひとつが名曲「アルフォンシーナと海」です。

私事ですが、ソーサとはかなり昔ですが共演の機会を頂きました。来日した時の日仏会館でのコンサートでした。

その圧倒的な声量、歌いまわし、そして存在感。

アルゼンチンのパンパ大草原がそのままそこにあるかのようでした。


<アルフォンシーナと海>

そのソーサの面影を脳裏に浮かべながら書きました。

原曲は歌詞も素晴らしい(*3)のですが、打ち込みではできないので、そこに込められたイメージを僕なりに表現しようと思いました。


https://youtu.be/nlJkLMn3-es


<用語注釈>

(*1)1900年代始めにできたパラグアイの音楽。

他のラテン系の明るい音楽と違い、哀愁を帯びたものが多い。その演奏ではハープ(アルパ)が主要な役割を占める。

(*2)代表曲

・インディオの小径(Caminito del indio)

・トゥクマンの月(Luna tucumana)

・牛車にゆられて(Los ejes de mi carreta)

(*3)※日本語訳

波に洗われる柔らかな砂に彼女の足跡はもう戻らない
苦悩と沈黙だけの狭き道は深い水底へと行き着いたのだ
言葉にならない悲嘆ばかりの狭き道は海の泡へと消えたのだ
神は知っている
どれだけの苦しみがお前につきまとったのか
思い出の果てからつづく痛みが
どれだけお前の声を奪ったのか
どうして海の巻き貝の優しい歌に身をゆだねていくのか
暗い海の底で、巻き貝が歌う歌に

お前は行く
アルフォンシーナ
孤独とともにどんな新しい詩をさがしに行ったのだろう
風と潮の奏でる太古の声が
お前の魂を呼び
運び去っていく
そしてお前は彼方へ行くのだ
まどろむかのようにアルフォンシーナよ
海をまとって眠るがいい

五人のセイレーンがお前を連れ去ったのだ
海藻と珊瑚の道を抜けて青く光る海馬たちは
お前のそばをめぐるのだろう
水に棲まうものたちはもうお前のそばで戯れはじめる
灯りをもう少しだけ暗くして
乳母よ
安らかに眠らせていて
もし彼が呼んでも私がいるとは言わないで
アルフォンシーナは戻らないと言って
もし彼が呼んでも私がいるとは決して言わないで
私は行ってしまったと言って

お前は行く
アルフォンシーナ
孤独とともにどんな新しい詩をさがしに行ったのだろう
風と潮の奏でる太古の声がお前の魂を呼び
運び去っていく
そしてお前は彼方へ行くのだ
まどろむかのようにアルフォンシーナよ
海をまとって眠るがいい

※マル・デル・プラタの堤防から身を投げて入水した詩人アルフォンシーナ・ストルニ(Alfonsina Storni)へのオマージュとして作られました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?