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幸せへの変化

ヘッダー画像の花、サンカヨウの花言葉の1つは『幸せ』。

長い時間、雨に濡れると、花びらが白から透明になる、ガラス細工のような美しさが特徴の可憐な花。

………

「業績悪化に伴う人員削減のため、契約更新は見送らせて頂きます。」
予期していたことではあったが、こう言われてホッとした。

今年の春、転職した。

これまで何度か、仕事をしていてフワフワした感じを持ったことがある。大量の書類を前に、本当に正しくチェック出来ているのか、自信が持てない不安感。

周りに聞き、ノートに記しておいても、どこかしっくりせず、書類の多さに埋もれ、モヤモヤを抱えたまま、時間だけが過ぎていく。苦手だった数学の授業を受けた時の、胸がつかえた感じに似ている。

見落としがないか、周りから指摘を受けてしまうのではないかと、気持ちが落ち着かない。

運転免許を取り立ての頃、一緒に乗車した人から「フラフラしていて安心して乗っていられない。」と言われたことがある。

ハンドルを無意識にガシッと強く握り、緊張でいっぱいで気持ちに余裕がないと、その不安が、一緒に乗っている人にも伝わってしまうようだ。

このフワフワとした不安感を消すには、仕事でも運転でも、何度も繰り返す以外に方法はない。地に足をつけて、落ち着いて、自信を持って出来るようになるまで。

時間の経過とともに慣れることで、ある程度は消えていくその不安感。

だが、3年近く経ってもその感覚が消えないようなら、それは自分に合わないとみなすべきかも知れない。

人並になれず、無意識に繰り返してしまう同じミス。

仕事後、両肩にずっしりと重りがのっているような疲れを毎日抱え『これからどうしよう…』と悩み、毎朝『会社に行きたくない。』とどんよりしてしまう、抜けられない沼にはまったような息苦しさ。

他の人に迷惑をかけてしまうこと以上に、無意識に何をやるか分からない自分自身が怖かった。書類をチェックしていて『ここはおかしい。』と気づかなければいけない箇所に、気づかない、気づけない自分が恐ろしかった。

けれど、職場で何もしない訳にもいかず、黙々と書類をチェックし続ける。『どうか何も起きませんように。』と一心に祈りながら。

そんな不安を抱えた私を、逐一チェックしている人がいるのだから、職場というのは油断がならない。一瞬たりとも気が抜けない。

そこは、決して隙を見せてはならない『戦場』。

まるで針の筵に座っているように感じた日々。

だから、会社都合で退職を余儀なくされた時は『これはチャンス!』と内心嬉しかった。

それから1ヶ月近くして、気持ちを新たに、私は新しい職場に行くことになった。

・とにかく言われたことはきちんとメモして覚えること。
・ゆっくりで良いから、間違えないように、丁寧に仕事をすすめること。
・分からないことは、些細なことでも質問すること。

上記3点を、今まで以上に自分に課した。

そして辿り着いた現在の職場。

今まで同様、細かい作業が多いが、前職との大きな違いは、私の苦手な計算がないこと。理解より暗記と慣れ。

いつしか、以前感じていた、勤務中のフワフワ・モヤモヤとした不安感と、帰り道でのズシっとした肩の重さ、そして毎朝感じていたどんよりした気持ちが、消えていることに気づいた。

1ヶ月近くの休暇を経て、職場と業務内容が変わったことで生まれた変化。

今回は、やむを得ず変化を余儀なくされた転職だったが、これは『変わりなさい。』ということだったのかも知れない。

導かれるように繋がった道。

与えられたこの環境で、大輪の花を咲かせられるように、経験を積み重ねている毎日。

『災い転じて福となす』の諺の意味を噛みしめる日々。

………

雨に濡れ、透明に変化するサンカヨウの花びらのように、中身を透明にするかのように見直した自分自身。

自分の能力を最大限発揮するのに相応しい土壌を探し求め、風に乗って飛ばされる種子のように舞い降りた今の職場。

ここが安住の地かは分からない。

ただ、ほんの一時、羽を休めるように息をつき、自分が変わったと感じている今。


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