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時間は薬

失って初めて、その存在の大きさに気づかされるということは、誰しも経験することかも知れない。

先日、久しぶりに長めの残業をすることに…残っていた二人のうち一人が退社し、私は最後の一人になった。

割と一人の時間は好きなのだが、なぜかこの日は無性に寂しく感じた。

春だからか…それとも桜が少し散り始めたからか…

孤独には強いはずなのに…自分でも『変だな』と思いながら、仕事を少し早めに切り上げ、施錠をし終えて外に出る。

空気はだいぶ暖かくなったのに、この寂寥感は何だろう?

いつもの通勤経路を歩いていると、途中にあるラーメン屋さんが目に入る。

二人で残業した時は、時々このお店に寄った。

けれど一人では入らないお店。

電車に乗り、慣れた街に到着したら、やっと少しホッとした。

ここまで来れば寂しくない。

深い縁のあるこの街は、孤独な私をそっと包んでくれる。

春は情緒不安定になる季節。

無意識に恋をしていたのかも知れない。

悔しいけれど、やっぱり寂しい。

『一度なくしてわかる 胸のときめきよ』
楽曲『人生いろいろ』の歌詞が深く突き刺さる。

こんな時、最高の薬は時間。

今まで何回、恋をしただろう?

その度に、時間がすべてを押し流し、過去の話にしてくれた。



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