見出し画像

拝啓、父へ2枚目

天国にも行ってない父。
私は、元気と言えば嘘になるよ。

あなたがいつも呑んでいたワンカップは自販機で早々に買えなくなったんだよ。

小さい頃、まだあなたが印刷所で働いて機能性不全になる前のことを私は覚えている。

中卒で5人姉弟で、戦後育ちだから二人病気で亡くしたこと。そして、あなたの母は後家で籍も入れず今の苗字のままきたこと。初体験が14歳の屋上のこと。

あなたはいつも正直だった。
そして、誰よりも優しすぎた。
誰よりも弱かった。

私はあなたと母が堕胎した4人目の最後の子だという事。
誰も産む事を賛成しなくて、母が「この子だけは産ませて」と懇願したこと。
聖なる夜過ぎ2時ごろ産まれたこと。
新聞配達で稼いだお金を母と出会う前に騙されて女性に貢いだこと。
母を口説くために何にも喋らずバーカウンターの隅にずっといたこと。

私は、その重さがとても嫌いだった。

5歳の時に印刷所で、人の罪を学歴のせいでなすりつけられあなたは変わってしまった。

私はいつもどうしていいか分からず
兄が色んな大人たちの攻撃から守ってくれてんだよ。

わたしが結婚したい人が二人いると連れて行った時も二人ともと仲良くしてくれてありがとう。

沢山のダメな愛すべき大人たちは、
今でも私の参考書。

あなたの全てに巻き込まれたとしても、
あなたの初恋の人の名前を私に授けてくれたことも、ぜんぶぜんぶ、わたしにとっては愛だと思っている。

よく高島屋の上のビアガーデンに二人で行ってグループサウンズのコピーバンドを枝豆を食べながら見たね。

あなたは、母が親戚から多額のお金を貸す時も心よく承諾した。

わたしは今、その壊れた家庭で唯一あなたの生きた証の娘をソファから布団に移して、これを書いている。

わたしがお酒を飲む事をしないのは、反面教師であり、あなたがきっと羨むから。

中学生で、母たちとあなたを捨て
わたし一人後悔してお寿司を持っていたこと覚えてる?
広いマンションで、お酒の袋とインスタントの味噌汁のゴミ袋の中で静かに母の化粧台で髪を切るあなたを見た。
涙と共にお寿司を床に落として、母に助けを求めたこと。

あれが間違いだったわたしは思わない。
酔えば別人のように狂い出すあなたはあなたではなく、昼間タバコを吸いながら母の愚痴を聴く静かなあなたがわたしは好きだった。

あなたが沢山の人傷つけ救ったように
また私も同じ道を歩んでいる。

でもね、この歳になって思うのは
人は何か依存しなきゃ生きていけない事ようやくわかった気がする。

ごめんね、あの時。
私がまた救いに行けば
あなたの命が道端で終わる事なく済んだかもしれない。たった一つ、後悔があるとしたら支配される事になれてしまっていた私の弱さだった。

明け方、わたしの理解者だったあなたのことを思い出す。

ごめんね、あなたは素敵で困った顔ばかりでいいんだよ。

決して人に憎まれる人ではなく、愛される人だったこと。

一人じゃ寂しいよね。きっと。

わたしは、早くそっちに行きたい。囲碁とか将棋とか麻雀をしながら、あなたと話したい。

最後の最後まで兄の心配をしていたこと。
父親の愛を知らないあなたは兄に対して過剰な期待をしたこと、認めてあげることはできなかったね。

母はね、きっとまだあなたの事をわたしのように愛してると思う。何度も再婚の話を断り続けたのは、そう言う事だよ。

もう少しだけ待っててね、わたしそっちへ行くから思い出話をしよう。

ごめんね、家をなんとかできなくて本当にごめんなね。強くなくてごめんね。

私ね、もう誰かを憎みたくないの。
みんな幸せでいて欲しいの。

私がもっと強くて誰かの役に立てたなら良かったと思う。  

ごめんね、わたしね。そんなに強くないみたい。
今週末大切なこと終わったらね。

待っててね。

なんでも嬉しいお年頃です!よろしくお願いいたします🙇