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【句集紹介】身体髪膚 伊丹三樹彦句集を読んで

・紹介

小生の先生に贈っていただいた、2冊の伊丹三樹彦句集の2冊目のアウトプットになる。1冊目については小生の俳句マガジン「句集紹介№8」の記事をご参照いただきたい。

この句集は1992年刊行の伊丹三樹彦全句集以降の句をまとめたものであり、この句集がおそらく、伊丹三樹彦が生前に編んだ最後の句集になる。身体髪膚とは人間の身体全体を表す四字熟語。出典は孝経。仙人らしい伊丹三樹彦にぴったりの言葉である。

厳選10句内の1句にだけ特に言及をしたい。それは「げんげ田に自転車半没 あそび呆ける」という句である。この句を見て思い出したのは兜太の有名な句、「酒やめようかどの本能と遊ぼうか」である。現代俳句の旗手として、常に先頭を走ってきた二人の気負いのなく、なんと長閑な心持か。必死になって句ができないと苦しんでいる小生はまるで阿呆である。ちょこっとでもいいから、先人の心の余裕というものを考えながら、句作にをしたいものである。

この句集は販売をしている。中古ならばお手頃である。ご興味のある方は是非一読いただきたい。

・厳選10句

冬ぐもりガード下悪はびこれり

青田風 同じ家紋で喪服集う

げんげ田に自転車半没 あそび呆ける

イエスかノーか だが 猫の髭いじっている

その墓碑 その冠雪 なべて死は同形

コーランの湧く村に一燈 一番星

ストロボの一閃 ぼくの白髯変

さらばの夏 水族館を蟹歩き

ルソーの森にあそぶ 蝶となり 鳥となり

火が活きていた捨て煙草 夕木犀

・作者略歴

伊丹三樹彦。1920年兵庫県伊丹町(現伊丹市)生。13歳から句作開始。1949年、日野草城主宰の「青玄」創刊に参加し、編集、発行を行う。草城没後は「青玄」を継承し主幹となる。以後、第二次「青玄」においてリアリズム・リリシズム・リゴリズムの「三リ主義」を標榜し、超季、分かち書き俳句を推進。1970年、写真と俳句の相乗による「写俳」運動を創始。2003年、現代俳句大賞受賞。現代俳句協会顧問歴任。2019年永眠。享年99。

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