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【句集紹介】鈴木真砂女 真砂女全句集を読んで

・紹介

瀬戸内寂聴の句集の紹介をしたのであれば、真砂女の紹介をしないわけにはいくまい。鈴木真砂女。明治39年千葉県鴨川市生。夫の失踪、出戻り、駆け落ち、死別、銀座で小料理屋開業等など、主な出来事を上げるだけでも枚挙にいとまがない、恋と俳句に生きた女傑である。

真砂女の句の特徴を一言で表現するのであれば、それは「ノンフィクションドラマ」である。彼女の句は、どれも映画のワンシーンであるかのような、心情の起伏があり、そして、それが妄想ではなく、本当に自分が経験した出来事を詠っているというリアリティにおいて、嫌というほどの、現場の生々しさが読み手に伝わってくる。

瀬戸内寂聴は、真砂女が生前「欲がないからこそ、ここまでこれたのです」と発言したことに対して「なんと、愛しい怪物」と表現をされている。90歳を過ぎても美しく、豊かで、著名な俳句の賞を取ってしまうなど活躍を続けた真砂女は、瀬戸内寂聴にとって、心の同志であり、憧れでもあったのだろう。

今回はそんな真砂女の全句集より、特に人口に膾炙されている句と、小生が大好きな「これぞ真砂女」という句を合わせて10句選んだ。是非楽しんでいただけたらと思う。

また句集の値段が高騰している。これ小生の手元にある句集を全部うっぱらったら相当な利益になるのではないか(絶対にしないが)

・厳選10句

花冷や箪笥の底の男帯

あるときは船より高き卯浪かな

羅や人悲します恋をして

人もわれもその夜さびしきビールかな

死なうかと囁かれしは蛍の夜

うすばかげろふむかしの女は泣いて耐へし

今生のいまが倖せ衣被

秋刀魚焼いて泣きごとなどは吐くまじよ

男憎しされども恋し柳散る

冬の旅香水はシャネル五番を持ち

・作者略歴

鈴木真砂女。明治39年千葉県鴨川市生。本名まさ。老舗旅館の家の生まれ、女将を務めたが、駆け落ち。その後波乱万丈な人生を過ごし、恋と俳句に生きた人生は多くのドラマ、小説等になる。久保田万太郎、安住敦に師事、「春燈」同人。第33回蛇笏賞等多数の受賞歴あり。平成15年永眠。享年96歳。

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