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【句集紹介】花詞 鍵和田秞子句集を読んで

・紹介

令和2年6月。小生は一つの訃報を目にする。

鍵和田秞子。

今回は、平成期を代表する女流俳人であった彼女の句を、哀悼の意を込めて紹介したい。

彼女の句の特徴についてであるが、彼女の句にはいつも少女がいる。真っ白な衣服を纏い、長く透き通るような黒髪を持っている、どこか物憂い感じの少女だ(小生のイメージです)。そして17音の中で描き出される美しい光景の中に、諸行無常が匂っている。彼女の句の根底には「命」に対する尊厳がいつも見え隠れしているように思われる。「人間探求派」といわれた師、中村草田男の教え受け継いでいるからだろう。

コロナ禍の時代。当たり前だったものが瓦解して、何が本当で、何が偽物なのか、皆が再考を始めた時代において、彼女の句は小生らに命や人間の在り方や振る舞い方のヒントを示してくれているように思う。

彼女は死んでしまった。しかし、どれだけ時間が経とうとも、彼女の句には少女が生き続けているのである。花をモチーフに詠まれた本句集、厳選10句から感じてもらえたら幸いである。

ご冥福をお祈りいたします。

・厳選10句

いぬふぐりふるさとの友みな子持つ

花ほつほつ独り言いふつれがゐて

新生児桜あふるる窓を持つ

シクラメン何処に置いても人恋ふる

長城や薊の揺れが少女めき

桐咲くや透明すぎてゆがむ水

乙女らに古歌おぼつかな紅の花

崖の百合殉教のごと一列に

朝顔や風にさらはれそうな母

ポインセチアひたひたと夜が胸みたす

・作者略歴

鍵和田秞子。昭和7年生まれ。昭和38年中村草田男の「萬緑」に入会し、萬緑新人賞、萬緑賞を受賞。52年第1句集「未来図」で俳人協会新人賞。59年「未来図」を創刊して主宰。平成14年より大磯町鴫立庵(しぎたつあん)の第22代庵主。27年「濤無限(なみむげん)」で毎日芸術賞。俳人協会副会長。東京俳壇選者。神奈川県出身。お茶の水女子大卒。令和2年6月死去。享年88。(デジタル版 日本人名大辞典+Plus参照)

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