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俳句マガジン 「ランタン」

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小生の処女句「ランタンはゆつくり灯る秋の雨」より。これから俳句を始める人や、句作に悩んでしまった人たちの、道を少しでも照らせたらと思う。
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#夏

「第1回アポロ杯」夏の俳句5句

アポロさんが俳句の大会をnote上で開催されている。小生も参加のお誘い頂いたので、夏の俳句5句をここに提出する。楽しい句が多く投句されているようなので、小生もそれにならって楽し気な(?)句を作ってみた。 説教を受くため帰省してをりぬ裸子のぶらぶら歩く実家かなローンあと三十年や胡瓜揉む荷物番押し付けられて海の家カップルの痴話喧嘩聞くかき氷 8月9日 (月曜日) まで募集しているとのことなので、興味のある人は是非投句してみてほしい。 私信 アポロさん。俳句関連でお手伝いでき

俳句 雑詠2句

 昔から妙に楽天的だった。これまでの人生を振り返って、心の中で呟いてきた言葉大賞をやったら、間違いなく一番は「まあ、なんとかなるだろう」だ。故に、運動にしても勉強にしても仕事にしても恋愛にしても、切羽詰まってことに臨んだことがなかった。そして、幸いと言うべきか不幸と言うかべきか、そんな屑みたい態度でありながらも、何故かそこそこな結果はついてきたわけで、まあ、これからもそんな生活を送っていくのだろうなんて考えていた。  しかし、今小生の目の前には、生まれて初めて心から欲するも

俳句 雑詠3句

 小生、人生好調な時は俳句なんてしません。嫌な事があったり、気分が落ち込んだ時に俳句を嗜んでおります。ここ最近は仕事も家庭も絶好調だったので、俳句から離れておりました。このまま俳句を忘れて生きていけるのではないかと、本気で思っておりました。はい、見事に砂上の楼閣でした。また十七音に戻って参りました。そしてまた、こんな鬱々とした句を妄想し、公開しようとしている訳であります。 夏の墓新約の書を置いて去る 蝉時雨曼荼羅のどの辺に母 浮輪置く海を知らない子の墓に 亀山こうき

俳句 雑詠4句

 公園のいつものベンチに座ると、懐かしい音楽が聞こえてきた。振り向くとそこには女子高生がいた。彼女は踊っていた。とても美しい踊りだと思った。そして、小生はこの音楽の名を思い出せずにいた。彼女の耳元で何かがきらりと光る。イアリングだった。初夏の陽を反射するその光彩は、小生を無性に悲しくさせた。その輝きは小生がとうの昔に捨てたものだった。彼女の幸せを祈って、小生はベンチを離れた。忘れた音楽口ずさみながら。 葉桜の踊れば光るイアリング ゆったりとお通しもってくるアロハ ちょっ

俳句 雑詠4句

進路票が好きだった。そこに何かを書けば、何かになれるような気がしたから。だから、進路票が嫌いでもあった。何も書けなかったし、書きたくなかった。こんな年になって、ずいぶんと遠くまで来たが、小生の進路票はいまだ白紙である(いいのか?) 揚羽蝶白紙の進路調査票 夏の雲君に秘密の手紙焼く 白日傘お別れを言うために来た 夏山の墓石に俺の名があった 亀山こうき

俳句 雑詠3句

久しぶりにレイモンド・チャンドラーの「長いお別れ」を読む。やはり男はハードボイルドであらねばならぬと思う。妻の前で、寡黙な男を演じると、病気かと心配される。妻より「うっかり八兵衛」と揶揄される小生。せめて俳句だけは、ハードボイルドであらんと欲す。 夏館自画像の人戦死せり 菜殻火や呪いの如き遺書を捨つ 夏立ちぬメールを一つ消去して 亀山こうき

俳句 雑詠5句

子供の服がすぐ小さくなる。冗談でなく昨日買った服が、今朝は小さく感じる。金がいくらあっても足りない。勘弁してほしい。だから小生は親戚宅を回る。夜討の如く押しかけては、恩着せがましく、小さくなった子供服の処分を請け負うのだ。今年の夏はこれで乗り切る。 夏服に甥っ子の名が残ってる白すぎる白服を着たZOOMかな風光るアルデンテぐらいが好きで駆け抜けた竜馬のブーツ夏落葉若葉風クラーク像の指先を亀山こうき

俳句 滝壺(20-0508)

滝壺に結婚指輪捨てて帰る こうき別に本当に捨てたわけではないですし、夫婦仲は至って順風です。 大学時代、婚約指輪をダム湖に捨てに行く短編小説を書いたことがある。その世界観を俳句で表現できないかと模索した結果がこれ。 この句を妻に見せたら「捨てたのは女。男はうじうじして過去の女を忘れられないから」と、意味ありげなことを言われドキドキしています。 季語は滝壺で夏です。