【読書レポ】すべて真夜中の恋人たち / 川上未映子

川上未映子さんの作品を読んだのは「夏物語」、「乳と卵」に続いて3冊目。ひらがなで開いた文体で、繊細な表現が魅力的。

「乳と卵」に比べると読みやすい部類であると思う。ドロドロ加減では「乳と卵」や「夏物語」の方が読み応えはあるものの、主人公・冬子の孤独と三束さんへ馳せる気持ちが生々しくて引き込まれる。

冬子の、微妙なニュアンスを微妙なままにしか伝えられずに生まれる軋轢にムズムズし、反対に、三束さんを思い浮かべる時のありのままの感情がひしひしと伝わってくる。

冬子と対照的な価値観を持つ聖との関係性がもう一つの軸となっているのが、単に男女の恋愛模様というより、それを通して冬子という1人の女性の生き方を際立たせている。

冬子と違い目的意識を持って生きる、聖や高校時代の恋人(?)の一見たくましい価値観もまた人を遠ざけてしまうのも、冬子のような理解され難い自己と表裏一体ではないのかと思う。

「そんなつもりじゃない」気持ちのお共におすすめの小説。

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