レンズの映り込みを作る方法
●現在のカタログ写真を見ると
各カメラメーカーの製品カタログを見ると、レンズ部分には美しい映り込みがあって、まさに"カタログ写真"という写りである。ボクがカメラのブツ撮り撮影を始めた時、この映り込みを実現させることから臨んだ。いわば、カメラ撮影の基本であり、要(かなめ)でもある。
●昔のカタログ写真を見ると
しかしながら、この映り込みは昔の製品写真には見られなかった。
例として1960年のカタログ写真や広告写真を集めてみたが、レンズの映り込みは今の感覚では考えられないような仕上がりである。
●レンズの映り込みを気にするようになって50年あまり
それ以降のカタログなどを調べたところ、1970年代には美しい映り込みが実現されていることを確認した。ということは、美しいレンズの映り込みの手法が一般的になったのは50年あまり前ということになる。
これはもしかしたらレンズのコーティングの発達と関係があるかも知れない。レンズのコーティングが未発達の時代では、レンズの映り込みは白っぽいのでどうやって写そうが代わり映えしない。
ところがコーティング技術が進むにつれて深みのある色付きの反射光に見えるようになり、カタログ撮影時にも映り込みを気にするようになったのではないかと思うのだ。
●レンズの映り込みを作る方法
さて、レンズの映り込みを実現させるには、どうすれば良いか。
ボクは誰かに教わったわけではなく独自に開発した手法であるから、これが一般的に使われる手法かどうかは分からない。けれども特段高度なテクニックでもないので、誰が考えても同じ結論には辿り着くだろうとは思う。つまり収斂進化(しゅうれんしんか)みたいなもの。
レンズ表面は光沢面であるから、レンズの前にあるものがそのまま写り込むことになる。つまり、照明光を置くとその照明光の形がそのままレンズ表面に写り込む。ということは、形を持たないくらい大きな面発光の照明を置くしかない。
また、カメラを上に向けた撮り方はよくある方法である。これはトップライトが広い面発光を使っている場合である。カメラを横向きのままでレンズに映り込みをさせるのは少々面倒なので、こういう手法が採られる。
それから、真正面からの角度で撮る場合は映り込みはなかなか難しい。なぜならば、面発光体をレンズの前に持ってくると撮影のジャマになる。
仕方ないので画面に写らない範囲で配置することになるが、そうすると反射が弱くなってしまう。このへんの理屈は入射角と反射角が等しいという物理法則の問題であるが、レンズは凸状であるから端は反射光が見えるので、それをいかに強調させるかが腕の見せ所。下手に光を強くするとボディの照明にも影響するので、主に角度を巧みに調整することになる。
そうは言っても印刷で使う写真などでは、レンズ部分をハメコミ合成をしたり、最近ではパソコンで合成するという方法もあるが、ワンカットで撮るのがブツ撮りの基本であり、ハメコミ合成はあくまでも応用である。
なお、面発光の照明光を使うのが面倒な場合、白い紙を敷いて撮ることもある。これはヌキ写真として撮る場合に有効であるが、紙が写り込まないように、カメラの角度や紙の位置を調整したりするとうまく撮れることもある。