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「むかし試した古典技法の話」Vol.6-ドライコロジオンの作り方4- by K

みなさんこんにちは。カロワークスのKです。早いものでもう10月…時間の早さに慄いています。
例年9月も半ばまで夏の暑さが残っていた感覚がありましたが、今年はぴったり9月には涼しくなり衣替えや寝具の入れ替えなども急いで行う気候となりました。
秋晴れが続く日々でとても過ごしやすく、個人的に一年で一番好きな季節をささやかに謳歌しています。
さて、秋といえばみなさんは何を想像しますか?前回の記事では行楽のお話になりましたが、実はドライコロジオンプロセスにおいて非常に重要なあるモノと関係する季節です…

みなさんお分かりでしょうか。。
正解はワインです!秋はぶどうの収穫時期であり、ボジョレー・ヌーボーの発表や、毎年ワイン祭りなども行われますね。まさにワインが主役の季節です。
今年は例年のようにはいかないかもしれませんが、是非とも美味しいワインが飲みたいなぁと思うこの頃です。
さて、ワインに含まれるタンニン…それこそ、私がドライコロジオンプロセスの実験に採用した「タンニンプロセス」の「タンニン」なのです。
そもそもタンニンとは一体どんなものなのでしょうか。
こちらの記事にて軽く触れさせていただきましたが、もう少し詳しくお話したいと思います。

タンニン(植物タンニン)とは、植物に含まれる”渋み”の成分です。
成長途中の果物にある鋭い酸味や渋みはこのタンニンによるもので、実が熟れて食べてもらえる(種子を運んでもらえる)時期になるまでは、その渋みで実を守っているのです。
また、タンニンは様々な分野で活躍しており、動物の革製品を鞣すために用いられるのもタンニン、お茶に含まれるカテキンもタンニンの一種で、タンニン自体がポリフェノールの一種です。我々の生活にかなり身近な成分ということがわかります。
タンニンプロセスにて作られる像が茶色がかっているのもタンニンの色によるものですが、赤ワインの色の濃さもタンニンの含有量に起因しているので、その繋がりを知ると納得ですね。
個人的には、そういった自然由来のものを使用して作品が作れることも面白いなと思う要因の一つです。

さて、今回もドライコロジオンプロセスの制作について続きを書かせて頂きます。
お料理の手引きのような気持ちで眺めて頂けたら幸いです。


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硝酸銀溶液に浸けた板が乾くとヨウ化銀を分解して板に銀が蝕入するため、板が濡れているうちに露光し現像する必要がありますが、保存できる湿板(すなわち乾板)は湿板に付着した硝酸銀をまず洗い落とし、タンニンのようなヨウ素に化合しやすい化合物の液で板を覆うことで保存が可能となります。
その被膜はヨウ化銀の膜を損傷することなく乾燥することができ、長期間の保存が可能となります。
この記事ではおなじみの著書「THE TANNIN PROCESS」にはニトロセルロースからコロジオンを製作する方法が記載されておりますが、制作実験ではBostick&Sullivan社製5%コロジオン
【ニトロセルロース(パイロキシリン)5%,アルコール25%,エーテル70%】
を使用しました。


●コロジオン液 約240ml
ヨウ化アンモニウム…1.037g
ヨウ化カドミウム…0.518g
臭化カドミウム…1.037g
5%コロジオン…61.51ml
エタノール…99.84ml
エーテル…75.2ml

これらをよく溶かし、コロジオン溶液とします。
溶解の際、ホコリが入らないように十分に注意しましょう。
ここでホコリが多く入ってしまうと、塗布の際非常に苦しむため(前回記事参照)常にラップをかけながら、隙間からガラス棒で攪拌するとベストです。
溶液は混入物を沈殿させるため1日は置きましょう。使用するときもなるべく瓶を大きく動かさず、静かに用意するとうまくいきます。
ビーカーも埃の混入をふせぎつつ、穴あきゴム栓にガラス管を二本通したものを使用して移します。

●塗布の方法
板の端を片手に持ち、静かに注ぎます。混入物を流すためにも少し多めに流し、ゆっくり板を回すように広げ、余剰分をビーカーに戻します。
この時、板を傾けすぎるとコロジオンが余分に流れていってしまうため、角度に気をつけながらビーカーの内側を沿うようにして角を滑らせて流し、頃合いを見て平行に持ちながら、手首を振るようにしてゆっくり揮発させます。
この際万が一気泡やゴミが混入した場合、まだ固まらないうちに先の細いピンセットで取り除きましょう。
それらはスポット(現像した際に丸いムラとなって表出する)となってしまうため、あまりにも多い場合はそのプレートを使用するのは諦めましょう。。筆者も何度も作り直して挑戦しました。
コロジオンが固まり始めた頃に表面をつついてしまうと穴が開き、その部分に銀が乗らなくなってしまうので、無理はせず除去できる範囲であれば行いましょう。
その後板の角端を親指で触り、コロジオンの固まり具合を確認します。
コロジオンが薄い方から固まっていくため、注いだ角(コロジオンが若干厚い)ばかり注視していると対角側が固まりすぎてしまいます。すると銀浴の際に境界線ができてしまうため、これには十分注意しましょう。
かといって、そちらを気にしすぎると手前側のコロジオンが柔らかいままとなり、銀浴の際に崩れたり、剥がれてしまう恐れがあります。コロジオンはとてもデリケートなので注意ポイントが多いですができれば全面に渡って厚みの差が出ないように塗布を心がけましょう。


次回は銀浴、水洗、タンニンコーティングのお話をさせて頂きます!
徐々に板の完成に近づいてきていますね。
次回もどうぞよろしくお願いいたします。


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