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【写真について知っているいくつかのこと Vol.7】 カメラの仕組み ~一眼レフカメラ《後編》~ by KISHI Takeshi

カロワークスのKISHI Takeshiです!写真・カメラに関わる技術や歴史、写真業界の最近の出来事、個人的な思い出話などなどを月イチでつぶやくシリーズの第7回です。

今回は「一眼レフカメラ」(後編)です。

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前回、一眼レフカメラの機構をご紹介したところで、中断となってしまいました。ふたたび、一眼レフカメラを図解しながら各部の働きをみてみましょう~。

一眼レフ

【ペンタプリズム】
フォーカシングスクリーンの上部には五角柱形のプリズムがあり、これを「ペンタプリズム」「ペンタゴナルダハプリズム」と呼びます。(「ペンタ」は「数字の5」、「ダハ」は「屋根」の意味)撮影レンズから入った光はミラーとペンタプリズム内部で反射されることで、上下左右逆の像が正立正像になってファインダーで見ることができます。

高精度のプリズムは、ガラス製で高コストかつ重量が増加するので、エントリー機ではプリズムの代わりに鏡を複数枚用いた「ペンタミラー」を搭載する機種もあります。


【ファインダー】
近年では、一眼レフのファインダーをOVF(Optical View Finder:光学式ファインダー)と呼ぶ場合もありますが、これはミラーレスカメラなどで小型のディスプレイに表示された画像をファインダー越しに見るEVF(Electronic View Finder:電子式ファインダー)の対比として使われるようになった比較的新しい言葉と言えるでしょう。

一眼レフのファインダーでは接眼レンズ越しに撮影範囲を確認できますが、実際にイメージセンサやフィルムで撮影される範囲と、ファインダーで観察できる視野の範囲には若干の差があり、その一致の比を「視野率」と言います。理想的には視野率100%が望ましいのですが、廉価な一眼レフでは、ファインダーの構造などにより95~98%程の機種もあります。

また、ファインダー内にはフォーカシングの情報や露出の情報、カメラの残り撮影可能枚数など、撮影に必要な多くの情報が表示されます。


【シャッター】
多くの一眼レフはセンサやフィルムの直前に、機械式の「フォーカルプレーンシャッター」を設けています。ちなみに「フォーカル」は「焦点の」、「プレーン」は「平面」という意味です。

遮光板で画面を覆い、シャッターを開くときにはこの遮光板が動いて、一定の時間だけセンサやフィルムに光が届くようにコントロールしています。遮光板は「先幕」「後幕」で構成され、先幕が動いてシャッターが開いた瞬間からセンサやフィルムに光が照射され、後幕がそれを追いかけてシャッターを閉じて光を遮る仕組みです。両幕のスリットの間隔を変化させることでセンサやフィルムに照射される光量を調節しています。

コンパクトカメラや大判用のレンズでは、レンズ内にシャッターを設けた「レンズシャッター」が用いられますが、レンズ交換を前提とした一眼レフなどでは、カメラ本体にシャッターを設けた方が機構やコストの面で利点があり、また高速のシャッタースピードが得られることから、フォーカルプレーンシャッターが多く用いられています。


【イメージセンサ・フィルム】
「撮像素子」は集光された光を電気信号に変換する電子部品で、半導体化・集積回路化された固体撮像素子は「イメージセンサ」とも呼ばれ、フィルムに代わり、デジタルカメラで画像を得るための重要な部品です。入射した光の強さに応じて電荷を発生させる「フォトダイオード」、色再現に影響を及ぼす赤外線をカットする「IRカットフィルタ」、偽色やモアレといったパターンを発生させる高周波数の成分をカットする「光学ローパスフィルタ」、集光の効率を高める「オンチップマイクロレンズ」、色情報を取得するための「カラーフィルタ」などの光学部品や、電荷を伝送する「転送回路」などがセットされています。

電荷の転送方式の異なる「CCD(Charge Coupled Devices:電荷結合素子)」「CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor:相補性金属酸化膜半導体)」のセンサが使用されており、かつてはCCDが画質面で優位性がありましたが、CMOSは低消費電力、低コストなどの利点もあり、近年は画質の改良も進み、現行の一眼レフカメラの製品ではCMOSセンサが主流です。

デジタルカメラのセンサはボディと一体で取り外すことは出来ませんが、アナログカメラでは、カラー・モノクロや感度、粒状性、階調特性などの異なるフィルムを使い分けることができました。アナログカメラにはフィルムの巻き上げ・保持機構が搭載されており、35mm(135規格)や中判ブローニー(120,220規格)などのロールフィルムを使用します。これらのロールフィルムは若干カーリングするため、焦点の位置にフィルムをセットする際の平面性が重要です。中にはフィルムを押さえる圧板にフィルムを吸引させて平面性を高める「バキュームシステム」を備えたユニークなカメラも存在しました。


【その他の機構】
この他にも、自動露出のための測光センサや、自動フォーカスのための測距センサ、フォーカシングを制御するモーター機構、レンズやボディのブレ補正機構、センサからの電気信号を画像に変換する画像処理エンジンなどの半導体部品、撮影画像やカメラの設定情報を表示するディスプレイ、それらを作動させるための電力を供給するバッテリーなど様々な機構がカメラ・レンズ内に搭載されています。一度にご紹介し切れないので、また、いずれ各部の働きについても取り上げさせて頂きたいと思います。

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前々回の記事でご紹介した「ビューカメラ」が、写真の原理を学ぶのに最適な、シンプルな構造のカメラであるとするならば、こちらの「一眼レフカメラ」は、作品制作や撮影業務で使用するうえで、高機能かつ実用的なカメラであると言えるでしょう。

記録方式がアナログからデジタルに変化しても、一眼レフカメラは写真家や職業的なカメラマン、もしくはハイアマチュアのユーザーが使用する機材として幅広く使用されてきました。2020年現在では「ミラーレスカメラ」の台頭が著しいですが、動きの早い被写体に素早くフォーカシングする撮影や、長時間にわたる撮影(バッテリーの持続性が重要)など一眼レフカメラの活躍するシーンは多いです。

個人的には一眼レフカメラの「リアルタイムに光を捉えてファインダーで像を確認できる」「比較的小型で持ち歩いて撮影できる」という点は、撮影者の体験に関わる重要な要素ではないかと感じます。ビューカメラに比べて小さいながらも、精密な機構を持つ一眼レフは光学機器が像を作り出す不思議さ・驚きを感じながら撮影できるカメラシステムではないでしょうか。

カメラに設けられた小さな窓を覗き込んで、眼の前の光景から被写体を見つけ出そうとする…という一眼レフの撮影時の感覚は、積極的に何かを発見しようとする「発見者(finder)」という言葉としっくり合うように感じられます。

それに比べると、EVFやディスプレイ上に変換された情報を見る感覚は、テレビやPCの画面を見るような、やや受け身で冷静な態度で、あえて差別化するならば「鑑賞者(viewer)」とでも言う言葉のイメージに近いかな…と個人的には思うのですが…。皆さんはいかがでしょう?

また、一眼レフカメラでは、撮影の瞬間はファインダーがブラックアウトしてしまい、本当に重要な瞬間は画像が出来上がるまで見ることができない…という点も、旧来の写真システムの原理と相通ずるところがあり、面白いですね。

最近はすっかりミラーレス派…という方も、たまには一眼レフを使ってみると何か発見があるかも知れません。

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ちなみに私の一番好きな一眼レフカメラは「CONTAX RTS II」です。
一番使う一眼レフカメラは「Nikon D850」です。
(なぜ同じでないのか…。)
よろしければ、皆さんが好きなカメラ・よく使うカメラも教えて下さい。

さて、次回は「ミラーレスカメラ」について考えてみたいと思います。次回またnoteでお会いしましょう…!

*私の担当シリーズ【写真について知っているいくつかのこと】のマガジンもよろしければご覧ください~。


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