【写真について知っているいくつかのこと Vol.10】2021年もミラーレス…?! by KISHI Takeshi
カロワークスのKISHI Takeshiです。写真やカメラに関する技術・歴史や、写真業界の出来事などを月イチで綴るシリーズの第10回です。
今回のテーマはつい先日発表された、例の新型ミラーレスの話題です!よろしければお付き合い下さい~。
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1月末、SONYとFUJIFILMからミラーレス新製品の情報が発表され注目を集めています…!
例年、2月に開催される大規模なカメラ・写真イベント「CP+」の機会に合わせて、この時期に各社の新製品の情報が解禁されることも多いので情報を待ちわびていた!という方も多いかも知れません。
SONY、FUJIともに非常に気になる新機種…。それぞれの特徴を見ていきたいと思います…!
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まずSONYの「α1」はフルサイズセンサのミラーレスカメラですが、これまでの同社のフルサイズ機の「α9」「α7R」「α7S」のそれぞれの長所を取り入れたようなパワフルな仕様になっています。
①有効約5010万画素・約30コマ/秒の両立
メーカー各社のフルサイズ機では2000万画素程度が中庸的な画素数で、4000万画素以上のセンサは多画素としてラインナップされることが多いです。
一般的に「画素数」と「連続撮影コマ数」はトレードオフで、一方を優先すればもう一方は制約が生じる…という関係にありますが、今回の「α1」は両者を高い水準で実現させています。
参考までに最近のαシリーズと比較すると…
・「α1」……… 約5010万画素・約30コマ/秒
(*非圧縮・ロスレス圧縮のRAWは最大約20コマ)
・「α9 II」…… 約2420万画素・約20コマ/秒
・「α7R IV」… 約6100万画素・約10コマ/秒
多画素機の「α7RIV」より画素数は少ないものの、従来の高速連写機である「α9II」を超えた連写性能と多画素を両立させていますね…!
プレス用途などでは撮影画像からクロップして必要部分を切り出す事も多いでしょうから、多画素+連写によって、コマ選択とクロップの自由度が高まり冗長性を確保できそうです。
公式WEBを見ると、これを実現しているのは、新しいA/D変換方式(アナログ/デジタル変換)を採用した積層型CMOSセンサ「ExmorRS」(フルサイズ・裏面照射型)と、高速な処理を行うデュアル仕様の画像処理エンジン「BIONZ XR」の性能のようです。
画像:「α1」公式サイト https://www.sony.jp/ichigan/products/ILCE-1/
現行機では「Exmor RS」は「α9II」、「BIONZ XR」は「α7 SIII」に搭載されており、「α1」はまさに両機の良いとこ取り!といった感じでしょうか。
「積層型CMOSセンサ」とは?
光を捉える画素ユニット部分と、信号処理を行う回路部分を異なる基盤にし、それぞれを積み重ねた層状に配置することで、大型の信号処理回路や信号読み取り用メモリを搭載して高速処理を可能にしたセンサです。
もともと、2012年頃にスマホ向けに発表されたこの積層型センサですが、昨年(2020年)にはこの技術を開発したSONYのエンジニアの方に紫綬褒章が授与されるなど、イメージセンサ分野をリードするSONYの強みが大いに発揮される「推し」ポイントと言えるでしょう…!
②8K/30P・4K/120Pの動画性能
もともとαシリーズは動画用途でも広く使用されており、動画撮影の現場でもαを見かけることが多いですね。
こちらも従来機と比較してみると…
・「α1」……… 最大4:2:0 10bit・8K 30p / 4:2:2 10bit・4K 120p
・「α7S III」… 最大4:2:2 10bit・4K 120p
動画撮影に最適化された「α7S III」と同等の4K 120pの高フレームレートに加えて、αシリーズ初の8Kにも対応しています…!
とはいえα7S IIIは約1220万画素と画素数が少ない=1画素あたりの面積が大きいため、感度やダイナミックレンジ、色再現性、ノイズなどの点ではα7Sに優位性があると想像できますので、単純な上位互換ではない点に注意が必要でしょう。
NikonやCanonのフルサイズ機の動画性能は今のところ4K 60p程度なので、SONYはセンサの高速読み出し・高速処理エンジンの技術を生かし、動画機能でも他社よりも一歩先んじているように見えます。
むしろ同社からも発売されている動画専用カメラとの棲み分けが気になるところです…。
③その他機能の充実
スペックシートを見ていると他にも様々な点で、新たな試みが盛り込まれているようです…。
・電子シャッター
… 高速読み出しで歪み発生を抑制・フラッシュ撮影やフリッカーレス撮影にも対応
・メカニカルシャッター
… 高速フラッシュ同調1/400秒を実現したバネ+電磁アクチュエーターのデュアル駆動
・AF性能
… 人、動物に加えて鳥にも対応したリアルタイムトラッキング瞳AF
・EVF
… 約944万ドット・最高240fpsの高精細・高リフレッシュレート
・データ転送機能
… Wi-Fi、有線LAN、USB 3.2など多種のインターフェイスに対応
…お前はSONYの回し者なのか?と言われても仕方のないほど、色々な要素を書き出してしまいましたが、これらのいずれの点も既存の機種からアップグレードされている事に驚きます。
とくに、ミラーレスの弱点として指摘されてきた電子シャッター由来の問題やEVFの改善は、業務用のフラグシップ機として切望される点なのでこれらの機能の有用性に期待したいですね。
ところで、この「α1」という新たなナンバリングのキャッチフレーズは「THE ONE」だそうですが、このワードをWikipediaで調べてみるとなかなか興味深いです。
Wikipedia:「ザ・ワン (曖昧さ回避)」
【語句】
・絶対者、神。万物の本源、一者
・恒常性、定常性、永遠性
・合一・統一
同社がこれまで発売してきた多様な機種の特徴を取り入れた合一・統一性、ミラーレスカメラのニュースタンダードとなるような恒常性・永遠性、そして現代のカメラ市場において絶対者・一者としての存在感を揺るぎないものにする新機種…そんなSONYの自負が見えてくるようです…!
神?!
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そんな「α1」とほぼ同じタイミングで新型機の情報が発表されたのがFUJI FILMの中判サイズイメージセンサ機の「GFX100S」です。
フルサイズ市場はSONY、Nikon、Canonの三つ巴の熾烈な戦いが繰り広げられていますが、FUJIはあえてそれらと競合しない小型センサのAPS-Cと、フルサイズ機を上回る中判サイズセンサの2ラインを戦略的に展開しているように思えます。(同時にAPS-Cの新機種「X-E4」も発表されました。)
とくに、2019年に発売された「GFX100」は43.8×32.9mm・1億200万画素のセンサを搭載したミラーレスで、同程度のセンサの一眼レフと比べて軽量かつ、比較的安価で海外メーカーの1億画素クラスの一眼レフは4~500万円程度に対して130万円ほど…!なんてリーズナブルなんでしょう!!
業務用途に限らずハイアマチュアにも手の届く中判デジカメとして注目を集めました。(ちなみにセンサはSONY製のようです。)
今回発表された「GFX100S」は、さらに小型軽量化と細かなブラッシュアップを施した改良機といった印象で、センサ自体は「GFX100」と変わらないものの、ボディ本体が約500g軽量化・高さと奥行きがダウンサイズされており、フルサイズ機に迫るサイズ感になっています。
画像:CAMEOTA.com https://cameota.com/fujifilm/34653.html
幅・高さ・奥行・重量(いずれもバッテリー・カード含む)を比較すると…
・「GFX100S」………………………… 約 150×104×87mm /約 900g
・「GFX100」(EVF装着時)…… 約 156×163×103mm /約 1400g
・「SONY α1」 ………………………… 約 129×97×81mm /約 737g
…と、どさくさに紛れてα1とも比較しましたが、GFXの小型軽量化が良く判りますね。
ハード面では、EVFが固定式に変更、ボディ内のブレ補正機構やシャッターユニットの小型&高性能化や、モードダイヤルの位置変更などの最適化、ソフト面では1970~80年代のアメリカのニューカラーの色調を再現(?!)したフィルムシミュレーションの「クラシック・ネガ」の追加などの要素があるようです。
しかし、個人的に最も気になる要素は本機の価格で、なんと市場想定価格約70万円(税別)…!「α1」が約80万円(税別)と報じられていることから、世にも珍しいフルサイズ機と中判サイズ機での価格の逆転現象が発生しそうです!
ただ、旧モデルから2年未満とかなり短いサイクルで本機が発売されるためか、某カメラ情報サイトでは2021年1月付の新製品レビューで旧モデルが紹介されている…という事態も起きています。また、大幅な軽量化とリーズナブル(?)な価格設定から、「GFX100」を所持するユーザーからは「もともと縦グリップはいらなかったんじゃない?」「差額をキャッシュバックしてほしい…」などの声も聞こえてきそうですね…。
フルサイズとは物理的に異なる中判サイズセンサは、ダイナミックレンジやノイズ耐性の優位性、被写界深度のコントロール、精細な画像の撮影、大型のプリント作成の可能性など、様々な利点があるように思えます。カメラ産業全体が厳しい状況にありますが、デジタルプロセスでのユーザーの幅広い選択肢のためにも、ぜひ中判サイズセンサの可能性を拡張して欲しいところです!
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さて、今回は同時期の新製品発表という点から「α1」と「GFX100S」を強引に比較しつつご紹介しました。両者はいずれも業務用途やハイアマチュア向けの高スペック機ではあるものの、ユーザー層や使用目的が異なっているようにも思えます。
しかし、もし手元に100万円があったら、どちらのカメラシステムを買おうか…と考える写真関係者は私だけではないでしょう…。
そんな両者を喩えるならば…
「α1」は行列ができる人気ラーメン店(=SONY)の「トッピング全部のせラーメン」!ただでさえ人気を集める麺とスープに、味玉、チャーシュー、メンマ、コーン、ネギ…etc、これでもか!というくらいに魅力的なトッピングを盛り込んだ豪華でボリューミィな逸品です…!
一方で「GFX100S」は老舗中華飯店(=FUJIFILM)の「高級食材入りラーメン」といった感じでしょうか。決して派手な味付けではないものの、存在感のあるフカヒレに、本格中華の味わい深いスープがたっぷりしみ込んだ特別な一杯…!今ならランチタイムでお手頃価格で召し上がれます…。
どちらも美味しいには違いないけど、単純に比較できない!どちらも食べたい!…そんなジレンマがあります…(100万円のラーメンて…。)
…そんなことを考えていたら、カメラ云々よりも、ラーメンが食べたくなってきました。
まだまだ寒い日が続きます。どうぞ、温かいものを食べて身体を暖めて、体調を崩さないようお過ごしくださいね。
また次回もこのnoteでお会いしましょう!
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