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【息ぬき音楽エッセイvol.9】Meitei/冥丁と日本らしさ by 村松社長

みなさまこんにちは。カロワークスの村松社長です。
やや波乱の幕開けとなりましたが、2021年が始まりましたね。本年も引き続き弊社と、弊社noteをどうぞよろしくお願い申し上げます。遅すぎる新年のご挨拶ですみません。

さて年末年始、皆さまはどのように過ごしましたか?例年と違って帰省や旅行もできず、ステイホームで新年を迎えられた方も多かったと思います。
かく言う社長も実家に帰らず自宅でおとなしくしておりましたよ。村松家はちょっとひねくれ者が多くて”大晦日に「紅白歌合戦」を観る”という習慣がなかったのですが、現在の同居人が「紅白観る派」なので、ここ数年観るようになりました。

2020年の最高視聴率が40%だったそうなので、テレビを持っている人口の4割が同じ番組を観て、同じように「ああ今年も終わるな〜」と思っていたわけですよね…。こうして改めて考えると紅白ってすごい。
こんなにたくさんの人々の日常に溶け込んで普通に楽しまれているなんて、やっぱり音楽ってひとつの芸術としてハンパないわ…と思い知らされると同時に、「紅白を観て過ごす大晦日」というのはもはやここ数十年で浸透した日本文化のひとつなんじゃないか?などと考えておりました。

ここでやっと話がつながるのですが、今回のテーマは日本人の私たちが考える「日本っぽさ」「日本らしさ」についてです。

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昨年2020年もたくさん新しい音楽を知りましたが、中でもお気に入りのひとつにこちらの曲があります。(vol.5で紹介したFou Tetパイセンのプレイリストで知りました。パイセンいつもお世話になってます!)

この曲をはじめて聴いたときは、欧米のアーティストが作った「日本っぽい」曲のひとつかと思ったのですが、違いました。
作者のMeitei(冥丁)さんは広島在住の日本人。「Lost Japanese Mood」をテーマにこれまで3枚のアルバムを発表していて、上の「Oiran Ⅱ/花魁 Ⅱ」は2020年のアルバム『古風』に収録されています。

この曲は江戸時代、吉原の遊女だった勝山について、当時の女性たちの壮絶な人生に思いを馳せながら作られた曲だそうです。遊郭にいる間、決して海を見ることができなかった勝山や遊女たちへ、副題として「潮風」という言葉が捧げられています。

はじめて聴いたときにちょっと抵抗を感じた理由を説明しますと、エレクトロニカやアンビエントの曲では定番の「日本っぽい」曲に、社長は少し違和感があるからです。
もちろん和風テイストやジャポニズム、オリエンタルノスタルジーを取り入れた素晴らしいトラックもたくさんあるのですが、必要以上に琴や尺八などの音色が響き渡ると、一体どういう気分で聴いたら良いのかわからなくなってしまうんですよね。

琴や尺八、ニンジャやサムライといった定型化した日本は、日本人である私たちからしてもすでに異国情緒あふれるものになっていて、それを海外から「これ日本ですよね?」と提示されることに戸惑ってしまうと言ったら良いのでしょうか。
前回ご紹介したYAMASUKIは一周まわって面白くて大好きなのですが、もしあれを大真面目に「これ日本ですよね?」と言われたら「いや、違う(真顔)」ってなるよね、たぶん。

そんな中で日本人のミュージシャンやトラックメイカーの方々は、いま自分たちにリアリティのある音(現代の街の雑踏など)を取り入れてきたと思うのですが、それもまた「現在の東京」という時間と場所へ依存せざるを得ないものでした。

そこで、東京以外の日本から、自分たちのルーツを改めて振り返りつつ、現代の音楽に落とし込んだ冥丁さんの試みは、”意外と誰もやってこなかった”新しさを感じます。

このあたりでもうひとつ、「日本らしさ」を考えるための音楽をご紹介しますね。

こちらは韓国のプロデューサーでありDJのNight Tempoさんが、今年1月6日にリリースしたアルバム『Concentration』に収録されている「Yamanote Line(山手線)」という曲です。
Night Tempoさんは日本の昭和歌謡などを”再発見”したり、何と言ってもここ数年の世界的なシティ・ポップリバイバルの中心人物として知られています。

最近はWinkや斉藤由貴の曲をリエディットした「ザ・昭和グルーヴ」というシリーズを手がけていて割とテンション高めだったのですが、最新アルバム『Concentration』はご本人も仰るようにローファイで、かなり心落ち着く1枚となっています。好きです。

この「Yamanote Line」はタイトル通り、まるで本当に山手線に乗っているような気持ちになる曲で、曲中で車内アナウンスが巣鴨から池袋まで流れます(内回りですね)。
まさに先ほどの「現在の東京」に依存している曲とも言えますが、コロナ禍で電車に乗ることにもストレスを感じてしまうようになった今、何気ない車内アナウンスや車窓の景色が懐かしく恋しいものになっていると気付かされました。

普段は意識していなくても、何かを作ったり発表したり、日本から一歩足を踏み出したとき、「日本らしさ」をどのように捉えて・どのような態度を取るかは避けて通れないものです。
社長もまだ自分にとっての「日本らしさ」とは何なのか、なかなか言葉にできないでいますが、もしかしたら遠く離れてしまったり失われてしまった時にはっきり見えるものなのかな、とも思います。

新年初回はふわっと意味深な感じでまとめちゃってすみません。
それではまた次回お会いいたしましょう!



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