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【息ぬき音楽エッセイvol.0】 写真と音楽 by 村松社長

あっという間にnote初投稿から1ヶ月、社長の当番となりました。
みなさまこんにちは。カロワークス代表の村松と申します。
このアカウントではメンバー4人がそれぞれ連載シリーズを投稿しているわけですが、わたくし村松は「息ぬき音楽エッセイ」と題して、音楽にまつわる諸々を読み切りのエッセイとして書いていきたいと思います。

初回のご挨拶でもお話しした通り、私たちカロワークスは「デジタルアーカイブ」という分野で、主に写真というメディアを使ってお仕事しています。
そんな会社の社長が、なぜ「音楽」エッセイなのか?
もちろん、音楽が好きだから!というのが主な理由ですが、ちょっと言い訳をさせてください。

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写真と音楽。まったく違うもののように見えて、実はたくさんの共通点があるような気がしています。
まずは「記憶」にとても関わりが深いこと。自分が昔撮った写真を見て、その時の記憶がよみがえってくることは誰しも経験していると思いますが、見ず知らずの人が撮った全く知らない場所の写真を見て・または初めての音楽を聴いていて、関係ない過去の記憶が思い出される…なんて経験はありませんか?
写真でも音楽でも、自分にとって素晴らしい作品は、その写真や音楽以外のことを思い出させてくれる/想起させてくれるものだと思っています。

もうひとつの共通点は、技術の進化とともに需要のされ方が大きく変わること。
写真はスマホとSNSの普及でこれまでとは全く違った使われ方をするようになったし、音楽もネットワーク技術の発達によって、レコードやCDからサブスクリプションの時代になりました。
特に音楽はさまざまなビジネスの先行指標と言われていて、サブスクは今やファッション、車、フードなどにも広がっています。けれども先行指標であるがゆえに、新しい技術による問題(違法ダウンロードによる著作権侵害など)にもいち早く晒されてきました。

音楽の違法コピー、違法ダウンロードなどを見るたび、興味深く思っていたことがあります。(もちろん絶対にやってはいけないことだけど、)法を犯してまで音楽を聴こうとする、その強さは何だろう?と。
写真や映像の技術革新が「見る」ことへの欲望に支えられているとしたら、人間は「聴く」ことに対する欲望も同じくらい持っているのでしょうか?

自分を振り返ると、聴く欲望は自我の芽生えとともに持ち合わせていたような。音楽関係の仕事に就いている叔父の影響もあると思いますが、小学校3年生でエルビス・プレスリーのファンクラブに入ったという音楽好きの父から受けた影響は、自分で思っているより大きい気がします。
ちなみに私は東京生まれ、アラフォーのO型です。
…遅すぎる自己紹介失礼しました。

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幼少期から父セレクトの音楽を聴かされ続けた私は、中学生になって「お年玉を貯めてCDを買いまくる」ことを覚えます。サブスクなんてもちろん存在せず、まだCDのレンタルが一般的ではなかった時代。少ないお年玉で買えるのは輸入盤の中古CDがメインでしたが、たまに奮発して買った国内版CDのライナーノーツを熟読し、出てくる名前を全部メモ。音楽雑誌からの情報も合わせて劇的に音楽世界が広がったわけですが、これはもう欲望としか言いようがありません。

皆さんの"聴く欲望"は、どこに発露がありますか?
好きなアーティストの曲をひたすら聴く?ライブやクラブやフェスにたくさん行く?自分で作る/演奏する?
私のようにいろいろな音楽を聴くのが発露であるとすれば、今やその人を取り囲む音楽世界は、縦にも横にも広がっていると言えます。

2009年にブライアン・イーノがこんな興味深いことを言っていました。

私の考えでは、もはや音楽に歴史というものはないと思う。つまり、すべてが現在に属している。これはデジタル化がもたらした結果のひとつで、すべての人がすべてを所有できるようになった。レコードのコレクションを蓄えたり、大事に保管しなくてもよくなった。私の娘たちはそれぞれ50,000枚のアルバムを持っている。ドゥーワップから始まった全てのポップミュージック期のアルバムだ。それでも、彼女たちは何が現在のもので何が昔のものなのかよく知らないんだ。例えば、数日前の夜、彼女たちがプログレッシブ・ロックか何かを聞いていて、私が「おや、これが出たときは皆すごくつまらないといっていたことを思い出したよ」と言うと、彼女は「え?じゃあこれって古いの?」と言ったんだ(笑)。彼女やあの世代の多くの人にとっては、すべてが現在に属していて、“リバイバル”というのは同じ意味ではないんだ。

インタビュー:ブライアン・イーノ|TimeOut Tokyo(2009.8.28

2009年、まだCDの売り上げの方が多かったとはいえ、ダウンロード販売モデルが急成長している頃でした。
この時から11年経って、今の時代を象徴するような長谷川白紙のインタビューがあります。高校生の頃、RADWIMPSから突然クセナキスを知った経緯について。

長谷川:YouTubeの「あなたへのおすすめ」に出てきて。
──ありますね、「あなたへのおすすめ」。
長谷川:それを全部見るんですよ、わたしは。1日朝と夜に全部巡回する。Twitterの自分のタイムラインで見つけた曲も全部聴くんです。そうするとまたサジェストが変わるじゃないですか。そうでもしないと自分の中でランダムなアーカイヴを得られないというか。ディグを自分だけでするんじゃなくて、他の人が持ってきたものを見境なく取り入れる。それはけっこう自分のメインのディグの手段ではありますね。無差別にやる。

「今は一番いいディグができる時代」長谷川白紙interview|i-D(2020.3.26


これから、この「息ぬき音楽エッセイ」シリーズでは、私が気になった・おすすめの音楽を紹介していきますが、音楽は個人の欲望や記憶と結びついている分、「趣味の問題」であるところも大きい話題です。
なので、単純におすすめするだけでなく毎回”音楽ではない何か”と結びつけてお話をしたいと思いますので、なにとぞお気軽にお付き合いいただければ!
それでは、カロワークスnote2周目ともどもよろしくお願いいたします。

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…と、初回はこれで終わろうと思っていましたが、いま現在の世界で起きていることを無視するわけにもいかず、おまけとして続けさせていただきます。

今回のCOVID-19を取り巻く状況は、音楽の世界にも甚大な影響を与えています。イベントのライブ配信や#SaveOurSpaceをはじめとした署名・募金プロジェクトなど、以前には不可能だったアーティスト・音楽関係者支援の方法があることは不幸中の幸いと言えるでしょうか。

そんな中、COVID-19(と、それに伴う状況)をテーマとした曲も続々と発表されています。星野源の「おうちで踊ろう」やRolling Stonesの「Living In A Ghost Town」が話題になりましたが、ここでは私が気になったものを2つご紹介します。

・Iceage「Lockdown Blues」

Iceageはデンマークのポストパンク/ハードコアバンド。この曲のBandcampでの収益は、国境なき医師団に寄付されるそうです。
COVID-19 ロックダウンブル〜ス ♪と繰り返されるサビ、不謹慎ながらたまに一人で口ずさんでます。


・チプルソ&mabanua「Pink Blue」

Kan Sano、mabanua、関口シンゴなどが所属するorigami PRODUCTIONが立ち上げたアーティスト支援のための「origami Home Sessions」。所属アーティストが提供したインストトラックやアカペラのデータを使ってコラボソングを作り、自由にネットへアップしたりリリースできるプロジェクトです。

この曲はmabanuaのインストトラックにラッパーのチプルソが歌詞とアレンジを加えたもので、春の気だるさと静かな怒りが今の自分の気持ちにしっくりきました。曲の最後にあの”殿様”の声が入っているのも泣ける…。

他にもこんな曲あるよ!など、ご存知でしたらコメントで教えてくださいね。

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