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『自分の中に毒を持て』を読み終えて

まえがき

先日、仕事を依頼しているデザイナーの友人に、仕事に限らずやりたいと感じたことはすぐにやった方がいいと教わった。

どこかで聞いたような、何度も聞いたようなこの言葉が、今の私には深く突き刺さった。

振り返ればこの一年、娯楽に関しては仕事の二の次にしてしまっていたように思う。

仕事は人生の一部であって、仕事の為に生きないと決めていたはずなのに、娯楽は余力や時間が“余ればやるもの”に変わってしまっていた。

これではいかんと、翌日、ずっと見たいと思っていた映画を見に行った。
帰り道、ずっと読みたいと思っていた本を買いに本屋に寄った。

そこで、目当てとは異なる、この本に出会った。

『自分の中に毒を持て』
大阪万博を記念し造られた『太陽の塔』で知られる芸術家、岡本太郎氏の著書だ。

1993年に出版され、私が手にしたものは第43版と、永らく人々に愛されている著書であることが伺えた。

今から30年以上も前に書かれたはずなのに、太郎氏の感覚があまりに新鮮であることに驚いた。
そして彼の紡ぐ言葉の一つ一つに、強く揺さぶられた。

やりたいと感じたことを早々に行ったことが功を奏したのか、久しぶりにこのようなパッションを揺さぶられる作品に出会ったので、是非とも共有したいと思い、筆を取る。

心揺さぶられた言葉達

相対的なプライドではなくて、絶対感を持つこと、それが、ほんとうのプライドだ。このことを貫けなかったら、人間として純粋に生きてはいけない。

『自分の中に毒を持て』 岡本太郎著

有名になればなるほどほんとうに気の毒だ。自分の地位や世間の評価ばかり気にして、逆に意味のないマイナス面を背負っている。

『自分の中に毒を持て』 岡本太郎著

ほんとうに生きるということは、いつも自分は未熟なんだという前提のもとに平気で生きることだ。それを忘れちゃいけないと思う。

『自分の中に毒を持て』 岡本太郎著

行きづまりをきりひらくには、ぼくのように、行きづまりに追われたら逃げないで、むしろ自分自身を行きづまりに突っ込んでいく。
強烈に行きづまった自分に闘いを挑んでいくことだ。

『自分の中に毒を持て』 岡本太郎著

自分がマメツブならそれでいい。小さな存在こそ世界をおおうのだ。

『自分の中に毒を持て』 岡本太郎著

才能なんてないほうがいい。才能なんて勝手にしやがれだ。才能のある者だけがこの世で偉いんじゃない。
才能のあるなしにかかわらず、自分として純粋に生きることが、人間のほんとうの生き方だ。

『自分の中に毒を持て』 岡本太郎著

人間は、必ずしも成功することがよろこびであり大事なのではない。闘って、後にくずれる。その絶望と憤りの中に、強烈な人生が彩られることもある。

『自分の中に毒を持て』 岡本太郎著

若い人たちに言いたい。ただのなまぬるいサラリーマンになることは容易だ。
しかし、そこではほんとうの自分をごまかして、画一化するより他はないのだ。それよりも、自分の目、手でふれる、だからこそ危険な道をきりひらいて行くべきだ。

『自分の中に毒を持て』 岡本太郎著

ぼくは絶対に、変わらない社会と妥協しない、これが、ぼくの姿勢だ。

『自分の中に毒を持て』 岡本太郎著

芸術はきれいであってはいけない。うまくあってはいけない。心地よくあってはいけない。
〜中略〜
「美しい」ということと「きれい」というのはまったく違うものである

『自分の中に毒を持て』 岡本太郎著

今、この瞬間、まったく無目的で、無償で、生命力と情熱のありったけ、全存在で爆発する。それがすべてだ。

『自分の中に毒を持て』 岡本太郎著

何でもいい、見物人ではなく、とにかく自分でやってみよう。動いてみよう。
日常のなかで、これはイヤだな、ちょっと変だなと思ったら、そうではない方向に、パッと身をひらいて、一歩でも、半歩でも前に自分を投げ出してみる。出発は今、この瞬間からだ。

『自分の中に毒を持て』 岡本太郎著

強烈に生きることは常に死を前提にしている。死という最もきびしい運命と直面して、はじめていのちが奮い立つのだ。死はただ生理的な終焉ではなく、日常生活の中に瞬間瞬間にたちあらわれるものだ。この世の中で自分を純粋に貫こうとしたら、生きがいに賭けようとすれば、必ず絶望的な危険をともなう。
人間本来の生き方は無目的、無条件であるべきだ。それが誇りだ。
死ぬのもよし、生きるもよし。ただし、その瞬間にベストをつくすことだ。現在に、強烈にひらくべきだ。未練がましくある必要はないのだ。

『自分の中に毒を持て』 岡本太郎著

平然と人類がこの世から去るとしたら、それがぼくには栄光だと思える。

『自分の中に毒を持て』 岡本太郎著

言葉達に触れて

一部、スキャンが上手くいっていないものもあり、当初書き留めていたものからかなり抜粋したが、それでも何十冊も哲学書を読んだような満足感のある言葉達。

中でも私は、彼の死生観のようなものに大変共感している。

死ぬことを目前に置いた生き様。
今この瞬間をめいいっぱい生き、平然とこの世から去る。

跡形もなかったかのように死んでいきたいと願う私にとって、太郎氏の今この瞬間を爆発的に生きよという教えは、他者に植え付けられかけていた、未来のための今の我慢の価値観を払拭してくれるものであった。

良書というのは、己の中にあるなんとなくを的確に言語化してくれるものである。

私にとって、本書はまさしく“良書”であった。

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