見出し画像

【名盤伝説】 “The President / By Appointment of (邦題: ホット・ブラッド・サマー)” 海老ジャケで一世風靡したポップなAORはいかがですか

MASTER PIECE オランダのロック・ユニット、プレジデント1982年のデビュー作です。70年代、オランダのプログレ・バンドのKAYAKやDieselのメンバーでドラマーとして活躍したPim Koopmanと、同じくオランダのミュージックシーンで活動していたOkkie Huysdensが組んだユニット。時代のややチープなシンセを多用しているものの、メロディアスでポップに歌い上げるサウンドは、日本のAORファンの注目を集めました。

著名なミュージシャンを起用して話題にするLAモノとは違って、楽曲の良さで勝負する潔さは好感がもてます。彼らのソング・ライティングの良さがAORファン心を掴んだといえます。ギタリストでPimも在籍していたDiselのメンバーだったBas Krumpermanが準メンバーとしてVice-Presidentとクレジットされているあたりも洒落が効いていてGoodです。

収録曲
M1 Hot-Blooded Lady
M2 Workin' Girl
M3 Makin' Millionaires
M4 Don't Put Me On Hold
M5 Turn Me On
M6 That's The Way That It Is
M7 Only Once Is Enough
M8 You're Gonna Like It
M9 Outland
M10 Goin' Places

M1は邦題にもなったアルバム全体のテイストを象徴するような曲。テンポの良いポップスで、途中のソロワークで転調するなどソング・ライティングのツボをしっかり押さえていますね。私が好きな1曲です。

M2はミディアムテンポのナンバー。サビのコーラス・ワークは見事です。そして続くスローバラードM4も美しく感動的な展開に心を揺さぶられます。

M5はThe Bliss BandのPaul Blissのカバー。確かに曲調はPaul Blissに似ているかも。彼の作品については別に記事にしたいと思っています。

M8は「Hot…」に続く2枚目のシングルとなった作品(/w M4)。サビのアレンジは秀逸。

その後2作目のアルバム『Muscles』(1985)をリリースします。よりエレクトリックなサウンドでAORテイストは薄まります。未CD化で長らく入手困難でしたが、待望のCD化がなされてdisk unionでは新品CDは購入可能です。アルバムの内容からするとファンはともかくもAOR追っかけの方には・・・。
それよりも、この1stが2001年にCD化されて以来、今や入手困難(注文不可)となっていることの方が問題ですね。

プレジデントの活動を終えたPimは、再結成されたKAYAKに復帰しますが、2009年に亡くなってしまいます。56歳、早すぎます。

プレジデントの思い出
バブル全盛の頃、幕張メッセや東京ビッグサイトを主戦場として展示会イベントの業務に駆けずり回っていた私。一つの展示会で複数のブースを受け持ち、開催日の開場前の準備で、それぞれのブースで同時進行で準備を整えるのが常でした。当時の音響さんのサウンドチェック用の音源が、何故か『Donald Fagen / The Nitefly』ばかりでした。お客様が入場する前の、シーンとしている会場のあちこちから「I.G.Y.」が流れることに、めちゃくちゃな違和感を覚えました。

聞けば音質が良いだけではなく、エレキ楽器と生楽器、バックと歌とのバランスが良く、整えるべき周波数帯が分かりやすいので、このアルバムを選ぶエンジニアが多いのではとのことでした。次いで人気だったのが、何ともマイナーなMichael Sembelloの2nd『Without Walls』!。AORファンならCDお持ちなのではとよく聞かれましたが、このCDは当時からレアアイテムで、逆に持っている人がいたら教えてくれと頼んだくらいでした。

そしてバランスの良さなら、このアルバムはどうかと、このプレジデントを聞かせたら、悪くないですよと。私の担当するブースからはこの「Hot-Blooded Lady」でステージの音響調整をしてもらっていました。完全に公私混同ですw。

人気の少ない薄暗い、広大な展示会場内に流れるプレジデント・・・何ともシュールな思い出です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?